表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タカテラスの帰らぬ旅  作者: 彩霞


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/27

第17話 その名を再び呼ぶとき

「え?」


 振り向くとそこには、左手にランプ、右手に布に覆われた物を持った、十六歳くらいの少年が立っていた。肩まで伸びた金髪に整った顔立ち。よく見ると瞳の色は青系の色に見える。

 まるでヒナタのようだなと思ったが、彼だったら三十歳は過ぎているはずだ。

 タカテラスは自分の考えを追いやるように首を横に振ると、ここにいる理由について弁明した。


「あ、あの、すみません。実は森の中で迷ってしまって……。もしこの森に詳しかったら、街道までの道案内をしてもらえると助かるのですが……」


 すると少年は警戒することも戸惑うこともなく、まっすぐにタカテラスを見ながら驚くことを言った。


「――タカテラス」


「え?」


 彼は一瞬、何を言われているのかよく分からなかった。


「あなたはタカテラスでしょう? そうだよね?」


 少年に問われ、タカテラスは目を見開いた。まさか、そんなことがあるのだろうか――。


「そう、だけど……。君は、ヒナタ……なの?」


 その名を呼んでみる。確信はない。本当なら、彼はこんなに若いはずがない。それなのに、心の奥で彼の名を呼びたい自分がいた。


 戸惑いつつ呼んだ名。すると少年はおもむろに、手に持っていたランプと物を足元に置くと、再び顔を上げる。暗がりではあったが、彼が涙を堪えるような幼い顔になっているのが、不思議とはっきり感じられた。


「そうだよ」


 そしてゆっくりとこちらに向かって歩き出したと思うと、急に駆け出し、タカテラスの胸の中に飛び込んだ。


「うわっ!……え? あの、大丈夫か?」


 戸惑いながらも、少年の背を優しく撫でる。すると彼は絞り出すような声で言った。


「良かった……本当に良かった……! 無事だったんだ……。良かった……」


「ど、どういうこと?」


 すると少年は、さらに強く彼を抱きしめた。


「え、えっと……あの……」


 どうしたらいいのだろうと思っていると、少年はくぐもった声で話始めた。


「僕は如雨露の居場所が分かるから、心配していたんだ。君のいる村から如雨露の気配が消えてしまったから、盗賊にあったんじゃないかとか、僕のせいで酷い目にあったんじゃないかって……!」


「ごめん、如雨露は――」


「いいんだ!」


 ヒナタはさえぎるように叫んだ。


「え?」


「如雨露が盗まれたり、壊されたりするのは何てことないんだ。そんなことより、君が何かの事件に巻き込まれてはいないだろうかと……ただそれだけが気がかりで……」


「ヒナタ……」


「君は今までに、僕があげた如雨露を村から持ち出すなんてことがなかったから……すごく心配で……。僕はここから出られないから、何かあっても助けてあげられないし……。だからこの二週間気が気じゃなかった」


「そっか、そうだったんだね……」


 タカテラスは思いがけず、ヒナタに心配をかけていたことを申し訳なく思い謝った。


「心配かけてごめん。でも、俺はこの通り大丈夫だよ」


 タカテラスはそう言うと、ヒナタを優しく抱きしめる。すると腕の中の少年の力が抜けたようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ