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「…聞いてた?」
「えぇ。夏生ちゃんは本当に貴方のような人には勿体無いですね…。嘆かわしい…」
「聞いてたのそこからかよ!! そこはいいだろ、別に!」
「え? あぁ、脱獄を企ててたことですか? 別に出ていいですよ。既に開いてますし」
秀吉さんは、固く閉ざされていたと私達が思っていた牢の扉をいとも簡単に開いていく。
どうやら鍵など最初からかかってはいなかったらしい。いや、恐らくこの人がいつの間にか外していたのだろう。
その開かれた扉を見ていた私達の顔はとても滑稽に見えたに違いない。
「…どうして、開けてくれるの?」
だがしかし、私達を捕らえておけと言ったのは紛れもなくこの人だ。であればこの行動に疑問を呈さざるを得ない。
「言ったでしょう? 待っていた、と」
私の質問にニッコリと笑って答える。確かにこの人は牢に来て私達も話した時に、待っていたと言っていた。
それは当然陽の事を待っていたのだろう。あの日惨劇を起こした張本人の、陽が帰ってくるのを。
「お前…俺を使って何をするつもりだ…?」
「使うだなんてとんでもありませんよ。ただ…あの日の清算をしてもらおうと思いましてね」
その言葉を聞いた陽は、驚愕と猜疑が入り混じったような顔をして秀吉さんを見る。その秀吉さんの発言は、陽にとって全くの予想外であったらしい。
「あの日の、清算って…?」
「夏生ちゃんが分からないのも無理はありません。あの日に殺された…あの男についてよく知らなければね」
あの日に殺されたあの男…陽の話に出てきた光秀、という人だろうか。確か、陽だけではなく秀吉さんとも繋がりがあったらしいけど…。
私の質問に答えた秀吉さんの発言を聞いて、陽の表情は驚愕の色が強くなる。それはまるで、聞いてはいけない何かを聞いてしまったかのような。
「おま、お前、まさか…!?」
「どうせ貴方もその為に来たのでしょう? なら手間が省けて良かったじゃないですか」
「…正気か、お前…?」
「貴方の所為ですよ。私は彼の意志を継いでるだけのこと…」
陽は相変わらず信じられないという顔をしているが、秀吉さんはその逆で飄々と口元に笑みを浮かべて、さぞ楽しげに話している。
どうやら陽がここに来た目的も全てお見通しのようだ。それを重々承知した上で、秀吉さんも同じことを考えている。
「…?? 陽の味方なの…?」
「味方…というよりは、仲介人ですかね。少なくとも敵では無いですよ」
「そう…。なら、安心…」
彼の敵ではないなら、必然的にも私の敵ではない。それに…もし敵だった場合、この人が陽に殺されるのはあまり好ましくない。
敵でないなら警戒する必要はない。私も敵対心は無いということを示すために笑顔を見せて応対する。
「…信蔵様、やはりこの娘…出来ますね」
「だからもう信蔵じゃないっての…。至極同意だ」
「???」
今のところ私は何も出来てはいないと思うのだが…。何か出来ているというならそれに越したことはない。
「まぁ、それはいいとして…。本当にいいんだな、藤吉郎?」
「今は秀吉ですよ。当然です。その為に十年待ったのですから」
陽はその発言を聞き、どこか諦めたように嘆息する。しかし、顔は少しだけ嬉しそうだった。
「で、どうして欲しいんだ?」
陽は既に分かっているはずであろう質問を秀吉さんにする。
そして秀吉さんはまた先程と同じ様な笑顔を浮かべ、とんでもないことを口にした。
「私の主君を殺してください」




