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殺人の救世主  作者: おじさん
とある殺人鬼が生まれた理由と少女の話
95/102

3-21

「あー…、全部話したらやるべきこともはっきりしてきたな。取り敢えずここから出るか」


先程とはうってかわって憑き物が落ちたような顔をしている陽は、やるべきことがあると言った。話を聞いていただけの私にはまだ何をやるのかは分からないが、何をするにしても彼に着いていく事に変わりはないのだから特に気にしていない。


しかし、ここを出るにしてもまだ解決していない問題がある。陽と私の腕は未だに縄で縛られたままだ。


「これ、どうするの?」


「ん? あぁ、今外してやるぞ」


そう言って彼は、既に自由になっている両腕で私の腕を縛っている縄を解いていく。


あれ?どうして陽のは既に外れてるんだろう…?さっきまでは確かに私と同じような状態だったのに…


「腕を縛ってる縄をほどくくらいなら余裕だな。殺人鬼にとっては必須の技能だ」


私が困惑している様子を見て、陽は自分の腕が自由になっている理由を話す。確かに殺人鬼であれば、いつこういう風に捕まったとしても何らおかしくはない。


「なる、ほど…。やっぱり陽はすごい…」


「まず日常では使わないものだけどな。何にせよ見張りがいなくなってくれて助かったわ」


なるほど、見張りがいない今のこの状況であれば腕を自由にしたところで何もお咎めはない。


「…さて、ここからどうするかね…」


ここは、私がずっと過ごしていたあの場所に少しだけ似ている気がした。多少の灯りはあるものの、薄暗くて少し湿っていて、音が響く。


しかし恐怖は感じない。そして何よりも寂しくない。彼が一緒にいるだけで、ここは狭くて暗い地下室とは感じなくなる。


「…ここ壊すしか、ない?」


どうやら、この牢屋は檻を破壊するしか逃げ道はないようだ。檻以外の周りの壁は地下であるため破壊することは不可能。掘ることは出来るが現実的ではないだろう。


「だとしても、流石に人の手で壊れるようなものではないわな…。せめて刀さえあれば…」


陽の持っていた刀と私の持っていた短刀は当然のことながらここに入れられる前に没収されている。捕らえておく人間に武器を持たしておくほど、ここの人間は愚かではない。


かといってここでじっとしていられる訳もない。このままここにいたら殺される可能性もあるのだから。


「…一か八か、素手で破壊してみるか…?」


「やるだけ、無駄な気がする…」


人の手で破壊出来るものならばそれこそ牢屋の意味がない。ここが陽の言っていた天下統一を果たした家ならそんな失態はしでかさないだろう。


「…全部聞こえてますよ…」


そうして檻越しにかけられた声は、少しばかりの呆れを含んでいる聞き覚えのある声。


「「あ」」


どうやら、話すのに夢中になっていて、私達が脱出の計画を企てているのを全部聞かれていたのに気付かなかったようだ。


…これ、もしかしたら詰んだんじゃないかな…。

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