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殺人の救世主  作者: おじさん
とある殺人鬼が生まれた理由と少女の話
93/102

3-19

※夏生視点


「…その後は襲ってきた人間やら色々な人間を片っ端から斬り殺してた。それでも殺人衝動は治まらず、やっと落ち着いた頃には一年以上は経っていたな…。ちょうどその時期に『人斬りシンゾウ』って名前で呼ばれ始めて…。…大体そんな感じだ」


…想像以上に、自分の思い描いていた彼の過去の壮絶さを越えていた。


彼が本物の殺人鬼であり、幾多の人間を殺してきたことは予想の範疇ではあったが。


そこまでに至る過程が、あまりにも衝撃的で。そうしてあまりにも悲劇的で。


「…んで、夏生に会うまではずっとそんな感じで暮らしてきた。もう何人の人間をこの手で斬ってきたかもう覚えていないくらいに、俺は人を殺しすぎた」


「…………………」


彼の言葉に、私はなんと声をかけていいか分からない。私の過去など、取るに足らないと感じでしまう程の彼の話を、私はただ黙って聞いていた。


「…俺は、もう織田信蔵じゃないんだ。あの時俺は一度死んだ。…ここにいるのは織田家の四男じゃなくて、ただの狂ってしまった人殺しなんだ…」


彼は、自分のことを狂ってしまった人殺し、と言った。それは今の話を聞く限り何も間違ってはいないのだと思う。


人を、自らの手で殺してしまった。そして、彼は殺人の味を覚え…快楽へと自分の身体を投じた。


親同然の人物を殺し、挙げ句に部下であった人を何人も手にかけた。それも、さぞ楽しげに。


狂っている、としか表現出来ない彼の凶行。いくら不満が募っていたとしても決して許される所業ではないのだろう。


「…だから、本当は俺はお前と…。…夏生と…一緒にいる資格なんて無いんだ。…すまん、こんなことずっと…黙っていて…」


絞り出すように言葉を途切れ途切れに口から発する彼は、ひどく悲しげだった。


彼は、前に言っていた。『話したくない過去なんて誰でもある』と。『それが嫌なものなら尚更…』とも。


本当にその通りだと私は思う。彼の過去を聞いた私だからこそ分かる。あれは彼の心からの、過去への強い拒絶だったのだと。


だから、私がかける言葉は決まっていた。これ以外には、きっと私は見つけることが出来ない。


「…これからも、人を、殺す…?」


「…それは、どういう…」


「正直に、答えて」


私の言葉に彼は言葉を詰まらせる。だが、彼の本心でなければ何も意味はない。


「………これは、譲れない。俺はこの先も、人を殺し続けるはずだ…」


少しだけ間が空いて、彼が言ったのは私の質問への肯定だった。


これからも人を殺すと。それを止める気はないと、彼ははっきりと私に告げた。


では、私は。本心をぶつけた彼に対して本心をぶつけなければいけないだろう。


「…そう。…それでも、いいの。私は」


「え…」


「私は、貴方が狂っていても、ただの人殺しであっても…。…それでも、貴方に着いていくの。…陽の隣にいるの」


多分、この答えは間違っている。私以外の誰もが陽のことを拒絶することだろう。


きっと私は狂っている。彼がどうであっても、それでも尚…陽の傍にいたいと思ってしまうのだから。

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