表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺人の救世主  作者: おじさん
とある殺人鬼が生まれた理由と少女の話
91/102

3-17

彼が、壊れてからどれくらいの時が経ったのだろうか。


恐らくそう長い時間は経っていない。多く見積もっても一時間は経っていないはずだ。


しかし、その場にいた者にとっては永遠だ。特に、当の本人にとってはこの時間は永遠にも感じられたかもしれない。


「………………………」


壊れてしまった彼は、自分の周りを無言で見つめる。彼の周りには夥しい程の人の血と無数に存在する死体。


無論全てが全て彼の物だ。全ては彼の手にかかったものだ。


刀についた、既に誰のものかも分からない血は地面へと音を立て滴り落ちる。


誰もが生きていた。少し前までは動いて、喋って、血が通っていた人間だった。


「…あ、あ…」


血の滴る音以外の音が彼の耳を捉えた。どうやら全てを自分の物にしたと思っていたが、一人取り逃していたらしい。


とはいえ、声のか細さからして既に虫の息。放っておいても少し後には息絶えるであろう人間。


「…ごめん、中途半端で」


そうであることは彼も重々承知ではあるはずなのだが、勿論そんなことは彼に何の関係もなく。


「今、殺すから」


息も絶え絶えとなっている、そんな人間に無慈悲にも刀を突き立てる。


そこには一切の迷いもなく。むしろ喜びさえ感じて。


生きていたはずの人間から吹き出る血が、また彼の顔を醜く歪ませていく。それが彼が壊れてしまっていることを良く表していた。


そうしてその場にいた全員を殺し終えたと分かったその瞬間。


「…!!!!!! …何、だ、これ…?」


醜く歪んでいた彼の顔は、瞬く間に恐怖と疑問の表情へと豹変する。


この光景を誰かが見ていたら、誰もが首を傾げ、誰もが戸惑いを生じさせるだろう。


当然も当然。彼が恐怖を抱き、疑問を浮かべている物は全てが彼の所業であるのだから。


「…俺が、俺がやったのか…!? 」


自らの血に染まった両手を見て、彼は自分のやった事の全てに気付く。


人を殺したことによって自我が崩壊し、そして殺せる人がいなくなり自我が復活した彼は。


「…俺が、俺が殺して…!! こいつらを…! 光秀まで…!!」


腹心の従者を、自分の家臣を全て自分の手で殺して。今までにない程の惨劇を引き起こして。


「…なのに、どうして…」


そうであってもなお、一度自我が崩壊し、快楽に身を預けた彼の胸中は。


「…こんなに、俺は満たされてる…!?」


彼が自分で光秀や家臣に言った通り、彼は既に『信蔵』ではなく。


もう元には戻れなくなっていることも、彼は理解する瞬間だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ