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先程までとはうってかわって質素な服装をした二人は城下町へと降り立っていた。
大きな城の城下町ということもあり、やはり非常に栄えている。商人が商売に勤しみ、民衆は皆楽しそうに暮らしている。
「…危なかったな。まさか藤吉郎に見つかるなんて…」
「あの猿は厄介ですからね。なんとか誤魔化せたとは思いますが…」
「藤吉郎は何考えてるか分からないんだよな。俺達の味方だったり、敵だったりで…」
「猿の考えることなど私には理解出来ませんよ。取り敢えずは城下町へ赴けたのですから、それで良しとしましょう」
「そうだな…」
真っ黒な着物に身を包んでいる青年は、口調こそ冷静に振る舞っているが顔ぶりはとても楽しそうだ。
その傍らで、こちらは緑の着物を着た男はそれを見て嬉しそうに微笑む。
なんだかんだでこの二人は仲が良いらしい。
「なぁ、俺団子食いたいんだけど」
「では、あそこの店に入りましょうか。ちょうどお昼時ですし」
男が指差したのは、城下町の一角にある団子屋。普通の一般庶民が利用するような、これまた普通の店だ。
この二人は曲がりなしにも偉い人間であるのに、こういう庶民染みたものが好きらしい。
店に入り、席を探していると何やら視線を感じる。気のせいかと思うが明らかに誰かに見られているのは間違いない。
そして中の雰囲気も何やらおかしい。店の中のある一点だけ、何故か周りに人がいないのだ。
どうやら視線の主はあそこにいるらしい。彼は店に入ってきた二人をじっと見ている。
「…こんにちは。その格好、よくお似合いですよ」
「…何でお前がここにいるんだよ…」
「何故も何も、さっきお会いしたじゃありませんか。どうです?一緒にお茶でも」
その視線の主は、見慣れた顔であった。服装こそいつもとは違っているが。
「私が何故貴様と茶などせねばならんのだ、さ…」
「おっと、今その名前で呼ぶのは止してください。一応私も御忍びで来ているので」
「…相変わらず、喰えない奴だな」
青年の隣に立っている男は苦虫を噛み潰したような顔になる。その隣では青年も同じような顔をしていた。
普通の店で起きている、少しだけ異常な事態。周囲の人間もその異常に少しずつ気付き始めている。
「…周りに勘づかれては厄介でしょう? ここは仲良くするのが得策では?」
「…かもな。後でゆっくり話聞くからな」
「それはどうも。では、注文しましょうか」
店に備え付けられている椅子に座り、それぞれが好みのものを注文する。
しかし雰囲気は未だに普通ではなく、店で浮いているのは明らかであった。




