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城下町の一角にある、ごくごく普通の団子屋には似つかわしくない雰囲気がそこにはあった。
周りの客も薄々それには気づいているものの、巻き込まれたくないのか気づかぬふりをしている者が多い。
当然も当然。変装をしているとはいえ、この三人は有名人。悟られないはずがない。
しかもこの城の最高峰の人間が三人ここに揃って何やら一触即発の雰囲気であるのだから。近付きたくないのも十分に理解出来る。
「んで? 何でお前はここにいるんだよ。俺達を連れ戻しに来たのか?」
青年が目の前にいる男を睨み付けながら質問をする。青年のその隣では同じように睨む男がもう一人。
しかし、睨み付けられた男は動じる様子はなく、むしろこの状況を楽しんでいるかのような笑みを浮かべている。
「いえ、ただの暇潰しですよ」
「暇潰し? お前、やることないのか」
「やることは沢山ありますが、適度な休憩は大事ですからね。その時ちょうど若様を見つけまして」
「…ちょうどいい暇潰し相手がいた、と」
「えぇ。ここにはいつも来るらしいですからね。出待ちしておりました」
青年は頭が痛くなってくる。言うまでもなく、目の前の男の言動にだ。
相も変わらずニコニコと楽しそうに笑っている男に、逆に威圧されている気分になる。思考が読めない。
「私達に構ってると、お前も痛い目を見るのでないか? 腐ってもお前は側近だろう」
「別にそういうの私は気にしませんから。あなたこそ、私の心配とは珍しいですね」
「上の席が空けば私にも都合がいいからな。いつまでもここに甘んじてるのも飽きてきた」
「あなたには無理でしょうね…。何せ、野心が強すぎる」
「構いはしないさ。それが私のやり方だからな」
この二人は仲が良いのか悪いのか分からない。笑顔での応酬だが内に秘められているのは悪意のようにも感じられる。
「もう面倒だから、名前で呼んでもいいか? 不便だ」
「…どうせ周りも感づいてるでしょうからね。構いませんよ」
「んじゃ、藤吉郎。お前はもう帰れ、邪魔だ」
藤吉郎、と呼ばれた男は一瞬だけ目元がピクッとなる。そしてすぐに笑顔に戻り応対する。
「…嫌ですよ。まだ少ししかお話していないじゃないですか」
「俺の命令が聞けないのか、藤吉郎。帰れ、と言ったんだ」
「…はぁ。そこでそう言いますか。少し狡いのでは? 信蔵様」
「権力は使ってこそだろ。俺の方が上だということを忘れるな」
信蔵の目は本気だった。藤吉郎と呼ばれた男はそれを見て残念そうな顔をする。
一度頭を垂れて、もう一度顔を上げた時には既に先程までの笑顔が顔に刻まれている。
「御意に、信蔵様。末とはいえ、あの方の息子ですからね。命令であるならば」
先程までの笑顔とは見た目が同じように感じられるが、少しだけ哀れみが込められているような。そんな笑顔。
信蔵の隣の男もそれに気付いているのか、気難しそうな顔をしている。
「…若様、少し言い過ぎでは? いくら猿であるといっても…」
「…厠に行ってくる。戻ってくる時には帰ってろよ、藤吉郎」
そう言って信蔵は席を立ち、二人から離れていく。残された二人は顔を見合わせると、小声で話を始めた。




