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「それで? 藤吉郎。俺達をここに閉じ込めた理由は?」
先程の問答で知り合いだということが判明している。
しかし私達はこの人によって今牢屋に閉じ込められている。
何か理由があるのか、それともただの気紛れだったのか。
「私は信蔵様が来るのを待っていたのですよ。あの日からずっと…」
「あの日…? 陽が、ここを出ていった日、のこと…?」
「えぇ。そして信蔵様が初めて人を殺し、最凶の殺人鬼が生まれた日でもあります」
陽が人を殺して殺人鬼になってしまった日。その日からずっと秀吉さんは陽のことを待っていた。
確か10年は経っていると聞いた。相当長い期間待っていたことになる。
「…昔話はいい。理由を言え」
「いい機会じゃないですか。まだこのお嬢さんに信蔵様の過去を聞かせていないのでしょう?」
確かに私は陽のことは全然知らない。会ってまだたったの1ヶ月しか経っていないのだから。
しかし、それが悔しいとも思わない。
「別に、いい…。陽が、話したい時で、いいの」
私だって、自分のこと何も話していない。
それを第三者から聞かされるのは、ちょっと嫌だった。
「…ほう。本当によく出来たお嬢さんですね。信蔵様には勿体無い」
「ほっとけ。…だが、確かにいい機会だ。夏生に俺の全てを話そう」
陽の顔は決意をした顔だった。人に過去を話すのはとても勇気がいることだ。
話したくない過去というのは、思い出したくない過去だ。
辛いし、苦しいし、悲しくなる。だから人には話せない。
「…うん。私も、陽の全てを、知りたい…」
だから私は、自分の正直な気持ちを言葉にした。
彼が意を決して話す、と言ったのだ。それを蔑ろにする訳にはいかない。
それに…やっぱり彼のことは何でも知っておきたかった、というのもある。
「…天然ですね」
「あぁ、天然だ。怖いよな」
…言ってることはよく分からないけど、私のことを言ってるのは分かる。
「取り敢えず、藤吉郎。お前は席外してくれ」
「…承知致しました。見張りも無くさせましょう」
私以外には聞かせない。そのやり取りはそれだけのことだった。
秀吉さんも素直に応じる。陽の意図を理解してのことだ。
「さて、どこから話そうかな…。面倒だから全部話すか」
「…全部、聞く」
そして彼は、ゆっくりと話始めた。




