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殺人の救世主  作者: おじさん
とある殺人鬼と少女の話
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1-32

「…頃合いだな」


微かに前方から多数の人間の気配と火薬の匂いがする。


後ろにも一つ人の気配があるが、それは放っておいてもいいだろう。


今は目の前に集中。全神経を研ぎ澄ませろ。


「私は、どこにいればいい…?」


「ここで待っててくれ。一人じゃ不安かもしれないが…」


「ん。待ってるよ」


何の迷いも無い眼を見て、これ以上は言わなくても問題無いと感じた。


本当に物分かりのいい娘だ。俺には勿体無い。


…まぁ、後に一人じゃなくなるかもしれないけど。


「…じゃ、行ってくる」


「行ってらっしゃい、陽…」


夏生に背を向け、気配のする方向へと足を進めていく。


思えば一昨日から不自然だった。


夏生の村が襲われた時点で、この近辺は警戒をするべきだ。


そして昨日の夜も俺達は襲われた。


何故気付かない。


『この辺りに大規模な山賊集団がある』と。


少し考えれば分かることだ。


この近辺は、草原と森に囲まれている。


立地としては最高だ。森の中には川もあるし、木の実も沢山取れる。


だが、この条件は『あちらにも』好都合なことを忘れてはいけない。


森の中に隠れていれば滅多なことがない限り見つかりはしない。


山賊が狙うには最高の立地だ。逃げるのも襲うのも容易い。


「そして、俺にも更に好都合なんだよなぁ…」


今まさに、村を襲おうとする集団を目の前にして俺は呟く。


こんな時間、こんな時代に一人で出歩く人間がいることに集団は面を食らっている。


当然だ。奴らはこの村について完璧に調べあげている。


見張りがいないことも、この時間に外出する愚か者も勿論いないことも。


驚くのも当然だ。俺がここにいるのはほんの『偶然』なのだから。


「運が悪かったなぁ、お前ら。でも、ちゃんと満月が出てる日に決行するのは評価出来るぞ、うん」


俺がもし山賊でもこの日を決行する。絶対にだ。


月明かりで夜でも行動出来るし、何より…


「…何者だ、てめぇ…!?」


「通りすがりの殺人鬼です」


殺人鬼の血が殺しをしろと叫ぶもんで。

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