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殺人の救世主  作者: おじさん
とある殺人鬼と少女の話
32/102

1-31

「見張りの一人もいないって、どうなってんだよこの村…」


張り切ったのが台無しじゃないか。どんだけ平和なんだよ、この村は。


村長の家から村の出口まで誰にも見つからないで出る、これが最低条件だったのだが。


あろうことか皆寝てるし、見張りの一人もいやしない。


普通こんな時代なら見張り台の一つくらい作るだろ…。


「張り切ったのに、なんか拍子抜け、だった…ね」


本当は全力で隠密していこうと思ったのに、その必要すら全くない。


普通に歩いて村の出口へと向かってる。


村は驚くほど静かで、一つの音すら響いてしまう。


罠なんじゃないかと思うくらい余裕でちょっと焦ったのは秘密だ。


今日は月が綺麗だ。月明かりがいい具合に視界を確保してくれる。


やりたいことやるには最適の状況といってもいい。


「出口、着いちゃった…。まだ、早い?」


「あぁ、予想より相当早い。ある意味好都合ではあるが」


遅い、よりは全然いい。手遅れになるといけないからな。


とはいえ近づいてくる気配はまだまだ感じ取れないし、少し時間を使う必要がありそうだ。


おぶっていた夏生を下ろして、少し雑談することにする。


「星、綺麗だね。月もとても綺麗」


「…そうだな。」


お前の方が数倍綺麗だろ、と危うく言ってしまうところだった。


月明かりに照らされた夏生は、形容し難い美しさがあった。


黒の着物も相まって思わず見惚れてしまうほどだった。


「…陽。…陽は、死なないよね…?」


夏生は心配そうに言ってくる。こちらを向かないのが夏生らしい。


俺の着物の裾を握りしめる手が、俺を本気で心配してくれてるということを物語っていた。


返す言葉は決まってる。


「心配するな。俺を誰だと思ってる?」


夏生の頭を撫でる。撫で慣れていないので多少雑になってしまったかもしれない。


それでも夏生の不満を解消するには十分だったようで。


「…聞くまでも、なかったみたい…」


嬉しそうに撫でられている夏生は本当に天使のようでした。

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