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…月が綺麗だな。
村人が全員寝静まった頃、俺はそんな事を考えながら着替えを始めていた。
さっきまで着ていた綺麗な、憎らしい程綺麗な服を脱ぎいつもの服に着替える。
見違えるほどボロボロで、真っ黒な着物。
眼帯も外し、いつもの格好へと戻る。
…やっぱりこっちの方が落ち着く。10年以上着ているのだから当然か。
「…夏生、起きろ。そろそろ行くぞ」
「…ん…。…いつものに着替えたんだね、陽…」
「あぁ、俺といったらやっぱりこれだろ。それに…もう隠す必要も無いしな」
「…うん。陽、っていったらそれだよね…」
まだ眠いのか眼を擦りながら会話をする夏生。
因みに俺は寝ていない。寝過ごしたら大変だしな。
「…ほら、夏生掴まれ」
隠密に村を抜け出すためには、夏生をおぶった方が都合がいい。
足音を立てずに、気配を極限まで薄くする。
これも殺人鬼には必須の技能だね。基本的には隠れて生きてるから。
「…陽の、背中…大きい…。落ち着く」
「夏生は軽いな。楽だわ」
まるで羽が生えてるみたいに…やはり天使だったか。
隠密なのに会話してていいのか、って言いたくなると思うが。
別に、今はいいんだ。家の中は。
「さて、ここからが本番だ。…覚悟はいいな? 夏生」
「陽と一緒なら、絶対に大丈夫…だよ」
村長の家から出てからが本番。ここからは一つの失敗は許されない。
まぁ、今までやってきたことに比べりゃ余裕なんだけどな。
村人及び村長さん。美味い飯と着物、ありがとよ。
幼女連れた旅人の時間はもう終わりだ。
ここからは…
「さぁて、行きますか」
最凶最悪の殺人鬼、陽の時間だ。




