第7話 ステータス改造!
魔物を探して森の奥へと入っていった。
「そういえば、プニ」
「はい! 魔王様!」
相変わらず元気だな。
「お前って、何かできることはないのか?」
「できることですか?」
「そうだ。捕食して吸収するとか、ドラゴンを丸ごと腹の中に放り込んじまうとか」
「うーん……」
プニは顎に手を当て、真剣に考え込んだ。
「抱きしめられます!」
言い終わるや否や、俺の体をよじ登ってきた。
「だから離れろって!!」
俺はプニを引き剥がした。
「それ以外には?」
「うーん……柔らかいです」
「ほかには?」
「ベタベタしてます」
「……」
プニは何も分かっていない様子で首を傾げた。
そのとき、茂みが揺れた。
「おっ! 魔物だ!」
茂みから姿を現したのは、小さなウサギだった。
「プニ! あいつを捕まえろ!」
「はい! 魔王様!」
俺たちが大声で騒いでいるというのに、ウサギは逃げようともしなかった。
いや、前に見たときなんて、むしろ近寄ってきて腹を見せていたくらいだ。
プニは体を伸ばし、ウサギの横まで近づいていった。
そうだ! それだ!
「こんにちは、ウサギさん! お元気でしたか?」
……え?
「ちょ、ちょっと待て、プニ! 何をしてるんだ!」
「お話ししています!」
「それは分かってる! そうじゃなくて、なんで会話を……」
……え?
会話してるって?
「お前、動物と話せるのか?」
「たぶん、スライムだからです!」
「うーん、そうなのか……って、そうじゃない! あいつを捕まえろって言ってるんだ!」
しかし、ウサギは俺たちに丁寧に頭を下げると、そのまま茂みの中へと入っていった。
「行くなー!」
何もかもうまくいかない。
このままじゃ動物や魔物を捕まえるどころか、眺めて帰るだけになりそうだ。
雑草や果物みたいな無生物を改造しても、レベルは上げられるはずだ。
それなら……。
「プニ! 動物や魔物の好きなものって何だ?」
「うーん……キノコや果物でしょうか?」
「今からそれを探すぞ」
「はい! 魔王様!」
俺はプニと一緒に森を歩き回り始めた。
木の下に生えているキノコを一つずつ調べ、低い枝になっている木の実を採り、茂みの間に落ちていた果物まで拾い集めた。
食べられるかどうかさえ分からない奇妙な実もあったが、そういうものはひとまず除外した。
そうしてしばらく歩き回っているうちに、いつの間にか両手いっぱいに餌が集まっていた。
「こんなにたくさん集めるなんて……よほどお腹が空いていたんですね」
「俺が食べるんじゃないぞ」
「え?」
俺は答えず、集めてきた果物やキノコに手を伸ばした。
雑草や無生物でレベルを上げようとしたら、相当な時間がかかるだろう。
さっき雑草を改造してみて、それはよく分かった。
だが、俺が狙っているのはそこじゃない。
果物を一つ手に取り、『改造』を発動した。
指先から淡い光が広がり、果物の表面を包み込んだ。
香りを生み出す成分を調整し、味に影響する部分を重点的に改造する。
見た目も栄養もそのまま。
ただし、香りと味だけは限界まで引き上げる。
「できた!」
「うわああ……」
顔を上げると、プニがよだれを垂らしていた。
「お前、このままだとスライムじゃなくて粘土になっちまうぞ」
「ありがとうございます、魔王様!」
プニが果物に飛びついた。
「おい、おい! 待て! これは罠だぞ、罠!」
「罠ですか?」
「この果物の香りを最大限に引き出してみたんだ。栄養はそのままだけど、味は何倍にもなっているはずだ」
「うわあ……」
「それで、プニ。これからお前にはやってもらいたいことがある」
「やってもらいたいことですか?」
「そうだ。あの果物の下に行って……」
「いただきます!」
「話を聞け!!」
「はぁい……?」
「食べろって言ってるんじゃない! あの果物の下に潜り込んで、動物や魔物が来たら捕まえるんだ」
「私にできるでしょうか?」
「自信を持て! お前はこの俺の魔王軍第一号の部下なんだからな!」
プニの目がキラキラと輝いた。
やがて覚悟を決めたように体を膨らませた。
「任せてください!」
プニが果物の下に潜り込むのを確認し、俺は茂みに身を隠した。
よし。
これだけ香りを強くしたんだ。周囲の動物たちが集まってくるはずだ。
まずは比較的安全な草食動物が来るだろう。
ウサギやシカのような連中なら、プニでも十分に相手できるはずだ。
……たぶん。
しばらく待っていると、最初に小さなウサギが一匹姿を現した。
くんくん。
果物の周りをうろついていたウサギが、恐る恐る一口かじった。
すると、続けて別のウサギたちも姿を現した。
今度は数匹のリスが木の上から降りてきて、茂みからは一頭のシカが顔を覗かせた。
さらには、普段なら人間を警戒するはずの小さな魔物まで、次々と集まり始めた。
「……」
思った以上に効果がある。
いや、効果がありすぎるんじゃないか?
いつの間にか果物の周りは動物や魔物でいっぱいになっていた。
互いに押し合ったり争ったりするどころか、仲良く果物を分け合って食べていた。
「プニ! 今だ!」
俺の合図に合わせて、果物の下に隠れていたプニが体を膨らませた。
ぽん!
プニの体が一瞬で広がり、周囲にいた動物を何匹か包み込んだ。
「捕まえた!」
全員を捕まえたわけではないが、これなら十分だろう。
しかし、俺が茂みから飛び出したというのに、動物たちは逃げようともしなかった。
「……なんだ、逃げないのか?」
そいつらはしばらく俺を見つめた後、おいしい食事をごちそうしてくれてありがとうとでも言うように頭を下げた。
そして、そのまま悠々と森の中へ散っていった。
……。
「まあ、何匹かは捕まえたしな」
俺はプニの体の中に閉じ込められ、もぞもぞと動いている小さな魔物たちを眺めた。
そうだ。全員逃がしたわけじゃないし、これだけ捕まえられれば十分だ。
「さて、それじゃあ改造を始めるか」
俺はプニが捕まえた魔物たちを一匹ずつ観察した。
ウサギのような姿をしたものもいれば、体に短い毛がびっしりと生えているものもいた。大きさも見た目もバラバラだったが、全員俺よりレベルが低い魔物だった。
改造できる条件は満たしている。
「お前たちを大きく変えるつもりはない」
まずはウサギに似た魔物の耳に手を触れた。
「『改造』」
長さを少し伸ばし、先端をほんの少し丸く整えた。
次は毛の生えた魔物だ。
毛を少し長くし、全体的に柔らかくした。
最後に、別の魔物の尻尾と爪を少しずつ手直しした。
戦闘能力を大幅に高めたり、生態を変えたりするわけではない。
もともと持っていた特徴を少しずつ強化する程度だ。
こうした小さな変化でも、熟練度の足しにはなるだろう。
その瞬間。
ピロン!
聞き慣れた効果音とともに、新しいメッセージが浮かび上がった。
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【固有スキル『改造』】
対象に対する改造熟練度が一定値に達しました。
スキルレベルが上昇します!
『改造』Lv.2 → Lv.3
[新規項目解放!]
・ステータス補正(体力、攻撃力、移動速度)
── 『改造』Lv.3以上必要 [可能]
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「おおおおお!!」
ついに。
ついにステータス補正が解放された!
「魔王軍に一歩近づいたな」
「さすが魔王様!」
プニは残った果物を体の中に取り込みながら言った。
「……」
まあ、いいか。
「まずは俺たちのステータスから補正してみるか」




