ようこそ、“こどく”のダンジョンへ
「ふざけるな!!」
自然と、口から言葉が出ていた。
「娯楽?死ぬ可能性がある?いきなり攫っておいて何言ってんだ!?冗談も大概に」
そこまで言って、気付く。
まさか、あの人もこんな状況に...?──
『勿忘 銘記、ですか?珍妙な字と意味の名前ですね?』
「今は関係ないだろ...!」
俺も確かにそう思ってはいるが!
『そうですね。ですが貴方と話すことなどありませんよ。拒否権はありませんし。』
集団でデスゲームに強制参加からの逃亡不可...こいつら、俺たちを同じ人と思ってない...!
ここで幸が口を開いた。
「ねえ、スキルって何?」
「おい、幸!黙って受け入れるつもりか!?」
「...拒否権はないんだよ?なら少しでも情報は得ておかないと。」
『スキルとは異界から召喚された人達が持っている特別な力です。どんなものかは人それぞれですのでこの後、確かめてください。それでは。』
日本語を喋る、姿の見えないナニカは、そう言い残すと喋ることはなくなり、代わりに目の前には半透明のボードが現れた。
...いつも能天気な幼馴染がここまで冷静だと俺が怒ってるのがバカらしくなってくるな...
で、目の前に出てきたこれは、あれだな?
「ステータス、ボード...」
まんま異世界召喚系のテンプレだなこれ...
─────────────────────────────────────
勿忘 銘記 (なぼうなつき 15歳 男)
ステータス
レベル 1 {職業:無(剣士/弓士/治癒師/記録師から選択可能)}
生命値 100/100
魔力 無(魔法職に適正無のため)
筋力 7(+3)
速力 5(+5)
反応 2(+8)
運 貴方次第
スキル 絶対記憶、瞬間記憶、真相記憶(封)、詳細鑑定 (アクティブ)、瞬間計算(封)
─────────────────────────────────────
「はあ?」
何だこれ。
反応のステータスが低いのは意味がわからない。
が、他のステータスはまあ、ある程度鍛えてはいたし理解できる。
...スキルどうした?
剣道と弓道を何年かやってたのに剣術とか弓術とかなにもない上に、多分五枠上限の内の三枠を◯◯記憶とかいうので埋められてる。
さらに二つ封印されてて実質無いのと同じ...
これでどうしろと?
そして読み終えて数秒の所で、またあの声が響いた。
『では、良き娯楽を提供してくださることを期待しています。』
──そして、足元が開き、暗闇に飲まれた。
◆//\\=//\\=//\\◆
──ヒューッ!
暗闇に飲まれた後、一瞬浮遊感を感じ、すぐまた落下し始めた。
「なっ、転移とかじゃないのかよ!?」
現在地面まで4m以上の高さから落下中だ。
「このまま落ちたら死ぬ!」
バランスを崩しかけている今、このままだと最悪頭から落ちて強打してお陀仏なのは目に見えている。
何とか姿勢を真っ直ぐに戻して受け身を取って着地する。
「ふう、助かった...」
(剣道とかやってた頃に軽く習っただけでも咄嗟にできるものなんだな。)
上手く着地できたことに安堵しながら息を漏らすと、周りから音が聞こえる。
──フシューッ...
──ゲギャギャギャッ
音の出所へ目を向けると、そこには子供のような背のヒトがいた。
「──ゲギャ?」
肌は緑で、腰に獣の皮を巻いているという姿だが。
「──ゴブリンッ!?」
側には、体長が俺に近く、赤く血走った目をした狼もいた。
「ゴブリンライダーじゃねえか...!そういうのはもうちょい後だろ!?」
思わずツッコんだが、その間に狼が噛み付いてくる。
咄嗟に左腕でガードする。
「ぐぅっ!」
動けない俺にゴブリンが石搥を振り下ろそうとしてくる。
「喰らってたまるかぁ!!」
自由な右腕で二の腕を掴んで捻り上げ、武器を落とさせる。
「あ、ああぁ!!」
そしてそれをゴブリンに奪い返される前に右手で拾って狼の口に突っ込む。
すると左腕のホールドが外れた。
その機を逃さず左腕を引き抜き、前髪を留めていたピンで狼の目玉を突き刺し、傷口を抉った後で引き抜く。
そして狼が逃げ出した隙にゴブリンにタックルして押し倒し、全体重をかけてピンを首筋に押し込んだ。
「ゲギャギャギャギャァ!!!ギギェッ」
ゴブリンも抵抗したが、ピンが奥深くまで差し込まれ、何か血管のようなものを切ったような感触がした後にピンを引き抜くと、ゴブリンは息絶えていた。
「はぁっ!はぁっ!...勝った、のか?」
蛍光色のオレンジ色のような血に濡れた自分の手を見て、半ば呆然となりながら勝利を実感する。
「は、ははっ!今も見てるのか知らんが、簡単に死んでやるとは思うなよ!」
そして今も見ているだろう召喚した奴らへ吐き捨てる。
その後いくらか時間が経ち、急に冷静になった頭で考える。
(流石にゴブリンがこれ一体ということはあり得ない。さらに犬を逃がしてしまった。その上、ここへ落とされた時、武器も食糧も何も渡されなかったということは、文字通りあのほぼ無意味なスキル群のみでこのダンジョンを攻略しないといけないということになる。)
「つまり狼を逃がした=食糧を逃がした+増援を呼ばれる可能性がある。っていうこと...不味くないか、これ?」
ならすぐにここを離れないといけない。
このダンジョンが、ファンタジー物と似通っているのなら、ゴブリンライダーは偵察か狩りの役割のはず。
せっかく深手を負わせたとはいえ、あのゴブリンがたくさん来るなら流石に勝ち目がない。
ゴブリンが来た方角はあちらだ。
なぜか確信をもって言える。
...よし。絶対に向こうには行かない。
「それはいいとして...」
なるほど、あのスキル群全て使えないと思っていたが、瞬間記憶は結構便利だな...
パニックで方向感覚が狂って自分から敵の巣窟に突っ込む不安がないのはいいかもしれない。
...いや騙されるな!
流石に三つは多い!
「そういえば、職業ってまだ選んでなくないか?」
ふとそんなことを思い出す。
確か俺の適正職は剣士/弓士/治癒師/記録師だったはず。
記録師はよく分からんから剣士が安牌...いや剣のない剣士は意味がないか?
「ステータスボード、また見れればいいんだが...」
んー、まさかここもファンタジーテンプレか?
「...ステータスオープン」
──パッ!
半透明のボードが目の前に現れる。
「ここまでテンプレ通りだとまじでなんかの作品の中なんじゃないかと思えてくるな...」
まあ本当になんかの作品の中だったら確実にあのファンタジーオタク連中が
『ここ◯◯の世界だ!』
とか言い出しそうな物だが。
...今は職業が先だな。
とりあえず職業欄の記録師をタッチしてみれば詳細を見れるはず...
─────────────────────────────────────
勿忘 銘記の職業選択を確認しました。
─────────────────────────────────────
「は?」
─────────────────────────────────────
変更を表示します。
─────────────────────────────────────
「はぁ??」
─────────────────────────────────────
勿忘 銘記 (なぼうなつき 15歳 男)
ステータス
レベル 1 {職業:記録師}
生命値 100/96 (-4)
魔力 無 (魔法職に適正無のため)
筋力 7 (記録師選択後のため補正消失)
速力 5 (同上)
反応 2 (+20)(記録師を選択したため上昇)
運 貴方次第
スキル 絶対記憶、瞬間記憶、真相記憶、詳細鑑定 (アクティブ)、瞬間計算
─────────────────────────────────────
『全召喚者に告げます。勿忘 銘記が職業を{記録師}に設定しました』
「はぁ???...おい、嘘だろ...?確認画面無しで決定された!?」
詳細画面にも確認画面にも移らずそのまま選択されるか普通...?
「詳細も、恩恵も、何もかも分からん職と戦闘に向かないスキルでこれからどうすればいいんだよ...!?」
── ̄ 〜  ̄──
最後まで読んでいただきありがとうございます。
面白い、先が気になると思っていただけましたら⭐︎や♡をお願いします。
追記
主人公のステータス変更
─────────────────────────────────────
勿忘 銘記 (なぼうなつき 15歳 男)
ステータス
レベル 1 {職業:無}
生命値 100/100
魔力 無
筋力 10
速力 10
反応 10
運 貴方次第
スキル 絶対記憶、瞬間記憶、詳細鑑定 (アクティブ)
─────────────────────────────────────
l
↓
─────────────────────────────────────
勿忘 銘記 (なぼうなつき 15歳 男)
ステータス
レベル 1 {職業:記録師}
生命値 100/96
魔力 無
筋力 7
速力 5
反応 22
運 貴方次第
スキル 絶対記憶、瞬間記憶、真相記憶、詳細鑑定 (アクティブ)、瞬間計算
─────────────────────────────────────




