第十五話:レベル上げ(みんなの)
「みんなの鑑定してもいいですか?」
僕がそう言うとイザベラとミアは期待する目で、カミラさんとナタリーさんは訝し気な顔をする。
「特に確認しなくても鑑定されたかどうかなんて私たちには分からないよ?」
ナタリーさんがそう言うけど、知らない人を鑑定するのとはわけが違う。
個人情報には違いないので知り合いを勝手に鑑定するわけにはいかないと言うとナタリーさんとカミラさんが笑いながら頷いてくれた。
アイザックさんを待たせているので手早く鑑定してしまう。
名前:イザベラ
レベル:8(12/90)
職業:冒険者見習い
HP(体力)63
MP(魔力)72
STR(攻撃力)18
DEF(防御力)45
INT(知能)45
DEX(器用さ)45
AGI(素早さ)72
LUK(運)45
ギフトスキル:防御結界(15)
獲得スキル:体力回復スキル、魔力回復スキル、収納(10)
獲得魔法:ファイア(2)、ウォータ(2)、ウィンド(2)、ロック(2)、クリーンアップ(5)、アースクエイク(500)
防御結界と魔法の数字はおそらく使用魔力、MPじゃないかと思う。
最上級魔法であるアースクエイクの使用魔力が半端じゃない。
名前:ミア
レベル:5(0/60)
職業:錬金術師見習い
HP(体力)30
MP(魔力)48
STR(攻撃力)12
DEF(防御力)12
INT(知能)60
DEX(器用さ)48
AGI(素早さ)42
LUK(運)30
ギフトスキル:錬金術
獲得スキル:体力回復スキル、魔力回復スキル、収納(10)
獲得魔法:ファイア(2)、ウォータ(2)、ウィンド(2)、ロック(2)、クリーンアップ(5)、カタラクト(500)
名前:カミラ・アッシュベリー
レベル:10(0/110)
職業:錬金術師
HP(体力)55
MP(魔力)99
STR(攻撃力)11
DEF(防御力)11
INT(知能)110
DEX(器用さ)99
AGI(素早さ)99
LUK(運)44
ギフトスキル:錬金術
獲得スキル:体力回復スキル、魔力回復スキル、収納(10)
獲得魔法:エクスプロージョン(500)
名前:ナタリー・マクマナス
レベル:8(0/90)
職業:鑑定士
HP(体力)54
MP(魔力)72
STR(攻撃力)9
DEF(防御力)9
INT(知能)72
DEX(器用さ)81
AGI(素早さ)81
LUK(運)72
ギフトスキル:鑑定(10)
獲得スキル:体力回復スキル、魔力回復スキル、収納(10)
獲得魔法:テンペスト(500)
うん、みんなレベルが低い。
たぶん体力回復スキルを使っても体力の底上げができるわけではないし、もともとの素早さが低いので僕と一緒に走るのは無理だろう。
それ以上に不思議に思ったのが僕のステータスとの明らかな差、経験値とステータスポイントの欄がないことだった。
「経験値はレベルアップに繋がるし、ステータスポイントって言うのは聞いたことないなぁ」
同じ鑑定スキルを持つナタリーさんに確認したけど差については分からなかったので僕だけの仕様なのかもしれない。
「僕の溜まっている経験値をみんなに渡せればいいんだけど」
そう呟きながら僕のステータスボードも表示すると経験値の数字が点滅していた。
初めてのことで経験値の項目を人差し指で触れると別のウィンドウが立ち上がる。
《イザベラ 譲渡経験値?》
《ミア 譲渡経験値?》
《カミラ・アッシュベリー 譲渡経験値?》
《ナタリー・マクマナス 譲渡経験値?》
《実行しますか?》
譲渡経験値ってことは経験値をこのボードで分けることができるのだろうか?
アイザックさんの名前がないということは魔物を倒した時と同じようにパーティーメンバーだけということなのだろうか?
試しに全員に経験値を10だけ分けるようにして実行すると、僕の経験値から40引かれて4人のステータスボードの経験値が10ずつ増えた。
うん、早めに依頼を達成して4人に説明しよう。
「はい。薬草の採取と迷宮でのゴブリン、コボルトの討伐の証を確認いたしました」
リリーさんに依頼達成の報告をして報酬を貰う。
「あと偶然遭遇したワイルドボアの牙6個なんですが」
僕がそう言って牙を出すとリリーさんがジト目で僕を見たあとに、視線を移して苦笑いをするアイザックさんを確認すると溜息を洩らした。
「はい、はい、偶然なんですね?それなら仕方ないですが虚偽の申請は」
「すみません。偶然ということでなんとか」
僕が頭を下げるともう一度リリーさんが溜息をついて追加の報酬を用意してくれた。
リリーさんはワイルドボアの肉は好きだろうか?
報酬の確認をみんなに任せて、僕は物陰に行ってワイルドボアの両手で抱えるくらいの肉を出す。
「リリーさん、アイザックさん、もしよければ」
「賄賂ですか?」
リリーさんは笑っているけど目は笑っていなかった。
怖い。
アイザックさんは喜んでいるように見える。
「いえ、いつもお世話になっているので純粋にお裾分けをと思って。もし嫌いなら」
そう言って、僕が俯くとアイザックさんがポンと僕の肩に手を置いた。
「ワイルドボアの討伐はDランク、その肉も貴重なんだ。嫌いなヤツなんかそうそういないぞ」
見るとリリーさんも目元を和らげていた。
「ありがたくいただきます。ただソウ君は実力がどうあれ、冒険者見習いです。あまり危険なことはしないようにお願いします」
僕は頷いてお礼を言った。
「本来の目的だったレベル上げもできたから一旦解散とするか」
カミラさんがそう言って冒険者組合の建物を出ようとするのでアイザックさんに挨拶して僕たちも続いた。
イザベラとミア、ナタリーさんにも店に来てもらうよう伝える。
カミラさんの店でお茶の用意をする。
「ソウ、本当に貰っていいの?」
ワイルドボアの肉が5頭分と少しあるので均等に分けようとしたら1頭ずつでいいと言われてしまった。
庭に出したワイルドボアの肉をそれぞれがスキルで収納していく。
「学園で焼いてもらおう」
久しぶりに食べられると喜んでいるイザベラとミアを促してテーブルを囲み、お茶のカップをみんなの前に配る。
カミラさんとナタリーさんもテーブルについてカップを口に運ぶのを見て、集まってもらった理由を話す。
「えっと、今回パーティーを初めて組んで分かったんですが、僕の持っている経験値をみんなに渡すことができるみたいなんです」
僕がそう言うと4人とも眉を寄せた。
「ん?渡せるってどういうこと?経験値は魔物を倒したら自動でレベルを上げるのに使われるよね?」
鑑定を持つナタリーさんが言うので通常は経験値を溜めるということはできないのだろうと考える。
鑑定スキルではなく、僕固有のものなのだろうか?
「僕の個人情報なのでできれば誰にも話さないでもらいたいんですが」
そう言って僕は経験値を溜めることができること、結構溜まっていること、使い道が現状あまりないこと、それをパーティーメンバーに渡すことができることを話す。
「それならレベルを上げればいいのではないか?」
カミラさんがそう言うけど既に398だし、みんなのレベルを上げて能力値を上げたほうがいいと思う。
「ソウ君、鑑定してもいい?」
ナタリーさんがそう言うので内緒にしてもらうことを約束して鑑定してもらう。
「ん、うん?はぁぁぁぁぁ?う~ん」
「ナタリーさんっ!」
ナタリーさんが声を上げたあと、硬直して後ろに倒れこんでしまうので慌てて抱きとめる。
カミラさんが立ち上がって容器に入った何かの液体を嗅がせるとナタリーさんが意識を取り戻し、急いで僕から距離を取り身体を小さくさせた。
「ひゃ、ひゃう、さ、さんひゃ」
少し震えながらそう言うナタリーさんを不思議そうにイザベラとミア、カミラさんが見てから全員が僕を見た。
「えっと、僕のレベルですけど398で間違いないと思います」
「「「は?」」」
そう聞いたイザベラとミア、カミラさんの目が丸くなる。
「初級魔法と獲得スキルはいいけど全属性耐性と毒、麻痺、催眠なんかの状態異常耐性があるんだけど?」
うん、耐性はコンプしました。
確かに他の冒険者のレベルを見ると上げ過ぎたかと思うけど、僕は僕なので怖がらないでもらいたい。
すこし傷ついてしまう。
「ご、ごめんね?見たことがない数字だったから吃驚しちゃって」
僕が俯いていると、落ち着いたのかナタリーさんが声をかけて傍に来てくれた。
僕は笑ってみんなにテーブルについてもらうよう促す。
「今回みんなとパーティーを組んで分かったんですが能力値が開いてしまって一緒に行動するのが難しくなってしまったんです」
僕がそう言うとイザベラが思い当たったように頷く。
「で、経験値を渡せることが分かったので、みんなのレベルを上げたいと思うんですが」
僕がそう言うと4人が顔を見合わせる。
「そ、それってどのくらいまで上げられるの?」
イザベラがおずおずと手を上げて聞いてくる。
「最上級魔法が使える魔力と素早さが必要かと思うので、できれば200くらいまで」
「「「「200?」」」」
再度確認したけどみんなのステータスボードにはステータスポイントの項目はなかった。
自分でステータスを調整することはできずに法則に従わざるを得ないようなので、ある程度の魔力、素早さを得るためにはレベルもある程度上げなければならない。
僕がそう考えていると4人がテーブルから離れて車座になって話し出す。
「ソウのレベル398もそうだけど、レベル200って」
「私、前にA級冒険者の鑑定したことあるけどレベル62だった」
「ソウのレベルを基準にしているからおかしなことになっているんだろう」
「でもレベル上がるなら魔力も増えていろんな実験ができるようになる」
「でもレベル200ってS級冒険者でもいないよね?聞いたことない」
「だが上げておいて損になるものでもない」
「危険な時に最上級魔法を使えるメリットもあるわけだし、危険もないと思う」
僕が言葉を挟まず見ていると4人が一斉に頷いて振り向いた。
ちょっと怖い。
「「「「よろしく」」」」
はい。




