第十二話:レベル上げ
冒険者組合でスカイラーさんとベンジャミンさんと面会した日の夜、僕は自室のベッドの上で横になり、冒険者証を眺めていた。
冒険者見習いになったことは感慨も一入なのだが、やるべきことがあった。
鑑定を行い、ステータスボードを開く。
名前:ソウ
レベル:18(0/190)
経験値:798,600
ステータスポイント:0
職業:冒険者見習い
HP(体力)73
MP(魔力)55
STR(攻撃力)19
DEF(防御力)19
INT(知能)38
DEX(器用さ)19
AGI(素早さ)92
LUK(運)237
冒険者組合の鑑定でレベル18だったことに驚かれた。
スキルが鑑定のみで18まで上げていることは確かに不自然かもしれなかったが、ヘルの迷宮を踏破するためには仕方がなかった。
E級に該当するレベル20より下だったのが幸運だったと思う。
「よし、上げられるだけ上げよう」
今後よっぽど変なことでもなければ再鑑定されることはないだろうから実利を得るべきだった。
レベルを上げるため経験値をどんどん使っていく。
最終的に、
名前:ソウ
レベル:398(0/3990)
経験値:2,310
ステータスポイント:380
職業:冒険者見習い
HP(体力)1,593
MP(魔力)1,195
STR(攻撃力)399
DEF(防御力)399
INT(知能)798
DEX(器用さ)399
AGI(素早さ)1,992
LUK(運)5,177
・・・398。
「ま、まぁ、まだ経験値にはまだ変換していない魔物の分があるから足りなければ」
他の冒険者のレベルを見ると足りないということはないのかもしれないけど念には念を入れよう。
運が5,000を超えているのでアースドラゴンを見るけど、ドロップアイテムであろう物はまだ????だった。
まだ足りないということか。
ならばステータスポイントを振るまでだが、数値の上昇を見ていると1ポイントは初期値に加えたうえでレベルによる補正がかかるみたいだ。
つまりレベル398での1ポイントは398ポイントに該当する。
運に1ポイント、398ポイントずつ追加していき????が表示されるまで続けるしかない。
地道な努力で追加していくこと238ポイント目でLUK(運)99,901となり、アースドラゴンの変換表示は変化した。
・アースドラゴン
経験値:1,006,850
回復MP:2,600
獲得アイテム:黄竜石 アースクエイクの魔法書 土属性竜族攻撃補正 土属性耐性 アースドラゴンの甲殻
「え、めちゃくちゃ微妙~」
黄竜石って魔物の魔石みたいなものかな?
アースクエイクの魔法書って魔法使いでもないから使わないよね?
土属性竜族攻撃補正も変換だったら必要ないし・・・。
「使えるのは土属性耐性くらいかな」
がっかりである。
ラスボスになるくらいだから有用なドロップアイテムだと思ったらそうでもなかった。
気を取り直して残った141ポイントを振ってしまう。
名前:ソウ
レベル:398(0/3990)
経験値:2,310
ステータスポイント:0
職業:冒険者見習い
HP(体力)17,513
MP(魔力)17,115
STR(攻撃力)399
DEF(防御力)399
INT(知能)9,156
DEX(器用さ)399
AGI(素早さ)17,912
LUK(運)99,901
かなりアンバランスかもしれないが振り終わった。
INTを上げたのは効果は分からないけどSTRやDEFを上げるより有用だろうと思ったからだ。
変換が使えるのであれば攻撃力や防御力は関係ない。
ステータスは整ったので次の段階に入る。
「お、リッチの魔力回復スキルは使えるかも。スルトの体力回復スキルもいい。フレースヴェルグの収納スキルも使えるな」
ドラゴンのドロップアイテムにはがっかりしたが他の魔物のドロップアイテムは有用そうなものがポコポコでてきた。
灯に出会ったときに渡したいもの、イザベラやミア、カミラさんとナタリーさんが使えるものなどを精査していく。
そうして夜が更けていく。
「おはよふぁぁぁ」
カミラさんのまだ眠そうな朝の挨拶を聞きながら朝食を並べる。
「はい、早く座ってください。髪整えますよ」
「うん、うん」
シャツ姿のカミラさんを椅子に座らせて髪を梳く。
時々寝てるのかカクッと頭が落ちるので両手で挟んで持ち上げる。
いままでどうやって生活してきたのだろうか、このダメS級錬金術師は?
「おはよう、って今日はちょっと遅いね」
髪を梳き終わって朝食を始めるというときにナタリーさんが家に入ってきた。
「おはようございます。ナタリーさんもパンとスープ食べますか?」
既にモクモク食べているカミラさんを見ながら対応すると食べてきたのでコーヒーだけもらいたいというナタリーさん。
「しゃとうはやらん」
「2杯、ですよね?」
意地悪を言うカミラさんを制して、たっぷりのミルクと2杯の砂糖を入れたコーヒーをナタリーさんの前に置く。
カミラさんのへの字にしているバターの付いた口をハンカチで拭いてあげると満足したのか、またモクモクと口を動かしている。
「本当にソウ君に来てもらってよかったね。カミラ」
決して寝ぼけ眼の幼子のような19歳をお世話するために王都に来たわけではない。
「あ、ナタリーさん、イザベラとミアに会うときありますか?」
僕がそう尋ねると別の村から新しく招聘された子供を学園に案内するので、その時に会うことを教えてもらった。
「渡したいものがあるので休みのとき、お店に来てもらうように伝えてほしいです」
そう言うとナタリーさんはにっこり笑って頷いてくれた。
「来たよー」
「来た」
「いらっしゃい」
数日経ってイザベラとミア、それとナタリーさんが店に来た。
丁度、午前の暇になったときだったので、みんなを迎えて居住部分のほうに移動してお茶を入れる。
「渡したいものがあるって聞いたんだけど、なに、なに?」
お茶を一口飲む間もなくイザベラが期待を込めた目と声で尋ねてきた。
期待に沿えるものだといいんだけど。
「えっとね。これなんだけど」
そう言って僕はテーブルにいくつかの巻物と石、腕輪を置いた。
みんなの目線がテーブルの上に集中する。
「えっと、まず、この巻物だけどイザベラに。体力回復スキルと魔力回復スキル、それと収納スキルね」
僕がそう言って3つの巻物をイザベラに渡すのをカミラさんとナタリーさんがカップを持つ手を止めて唖然として見ている。
体力回復スキル、魔力回復スキルは文字通り体力と魔力を回復するスキルで、収納スキルは荷物などをいくらでも収納できる時空間を操れるスキルらしい。
ちなみに収納されたものは時が停止するため、悪くならないし、食べ物も温かいまま、冷たいままらしい。
選択は間違っていないはず、何度も運用を想定してみて決めたんだ。
「ミアには魔力回復スキルと収納スキル。錬金術には魔力も使うし収納スキルもあると便利だと思うから」
使い道を説明するけどカミラさんとナタリーさんは唖然としたままだった。
「え、えっと、たぶん有用だと思うんだけどイザベラにはこの腕輪をあげる。魔力を込めておくと敵意を向けるものに自動で攻撃してくれる魔力剣が出て守ってくれるんだ」
カミラさんとナタリーさんは反応がないけど、とりあえずイザベラは喜んでくれているみたい。
迷宮に入ったとき役に立ってくれると嬉しい。
「ミア、この石は赤竜石、青竜石、黄竜石、緑竜石って言って錬金術で使うとそれぞれの属性の効果を上げる作用があるらしいから」
「待て、待て、待て、待てぇっ!」
カミラさんが怒ったように制止する。
僕の見立てが間違っていたのだろうか?
「お、おま、ソウッ。なんで、こんなものを持ってるんだ?」
「そ、そうだよ。スキル取得書なんて稀少で出回るものでもないし、値が付けられるものではないんだよっ?」
あー、えーと。
「ましてや、体力回復?魔力回復?収納?なんでそんな宝物庫レベルのレアスキル取得書が5つもあるの?」
5つじゃないんですが。
「竜石だってそうだ!稀に、極稀に竜族を討伐すると落とすと聞くが、錬金術を行う上で最上級の触媒だと聞くぞ?私も欲しいくらいだっ」
カミラさんが悔しそうにそう言うので新たに4つの竜石をカミラさんの前に置くとカミラさんが僕と竜石を何度も交互に見る。
「えっと、カミラさんとナタリーさんにも使ってもらえればと思って」
そう言って僕は魔力回復スキル取得書2つと収納スキル取得書を2つ取り出した。
「カミラさんは錬金術でたくさんの魔力を使って、たくさんの材料を持たなければいけないと思うのと、ナタリーさんは鑑定に魔力を使うし、いろんな場所を旅するので収納は便利」
僕が言い終わる間もなくカミラさんとナタリーさんが取得書をガシッと掴んだ。
「いいのか?」
「いいの?」
あまりの喰いつきに頷くことしかできない。
早速その場で4人がスキル取得書に魔力を込めてスキルを取得、腕輪や竜石などを収納スキルで収納した。
「あ、1つ聞きたかったんですが」
イザベラとミアはまだ燥いでいたけど、落ち着こうとするように椅子に座ってお茶を飲むカミラさんとナタリーさんに声をかける。
「エクスプロージョンの魔法書とかアースクエイクの魔法書ってあまり使い道ないですよね?」
「「ぶーっ!」」
カミラさんとナタリーさんが口に含んだお茶を吹き出した。
僕は急いでテーブルを拭くためのタオルを取りに行った。
「あまりに常識はずれだ」
「そうね、常識はずれだと思う」
テーブルの上には火属性最上級魔法であるエクスプロージョン、水属性最上級魔法であるカタラクト、土属性最上級魔法であるアースクエイク、風属性最上級魔法であるテンペストの魔法書があった。
すべて広範囲殲滅魔法に分類されるもので大変危険なものらしい。
「おそらく王族や高レベル魔術師ぐらいにしか売れないだろうが、売れば1つ1億コルトは下るまい」
カミラさんがそう言うのをナタリーさんはうんうん頷き、イザベラとミアは目を丸くして見ていた。
僕は椅子に座って小さくなるしかない。
「ソウ、売るつもりはないんだな」
カミラさんが尋ねてくるので頷く。
売ってお金にして借金を返してしまったら冒険者見習いではなくなってしまう。
それだけは避けたかった。
「丁度4つあるので1人1つずつ習得すれば」
僕がそう言うと4人は信じられないものを見る目で僕を見る。
「習得はできるが唱えれば魔力を根こそぎ持っていかれて意識を失うぞ」
「魔力不足で発動しないかもしれないしね」
カミラさんとナタリーさんが難しい顔をする。
「私たちはみんな魔力回復スキルを持っている。根こそぎ持ってかれても直ぐ補充されるのでは?」
ミアが人差し指を顎に添えながら、そう言うとカミラさんとナタリーさんが、ううむと唸る。
「習得だけしておいてレベルを上げれば魔力が足りるようになるかも。使うのはあくまで最終手段ということで」
イザベラがそう言ってアースクエイクの魔法書を手に取ると、さらにカミラさんとナタリーさんが唸る。
「高レベル魔術師でも習得してないであろう最上級魔法を鑑定士の私が」
ナタリーさんがテンペストの魔法書を手に取る。
「将来、旦那様と喧嘩したときに」
ナタリーさんがボソッと不穏なことを言うが建物ごと吹き飛ぶと思うのでやめてもらいたい。
過剰防衛だ。
「錬金術師である私もな」
カミラさんがエクスプロージョンの魔法書を取り、ミアはカタラクトの魔法書を取る。
とりあえず使い道があってよかったと僕が満足そうにしていると4人に睨まれた。
理不尽だ。




