山村殺人事件ー7
「では最後に日笠さんお願いします」
三吉専属の使用人日笠は話し始める前にメガネを少し上げる。
「私が思う犯人は……申し訳ありませんが見当もつきません。正直この家の者で菅原を殺す動機が理解できかねます。立場的に危うい奥安家の方々なら理解できますがいち使用人を殺して利を得る人物がいるとは思えません。こんな事をして当主様の手を煩わせる事を考えるとね……もし気に障りましたら個人の言葉なのでご容赦ください」
日笠が微笑む先には酷い剣幕で睨みつける荒城がいた。
3人の意見が出揃った時、千谷の顔に曇りが見える。
「先生……やはり何かの祟りって事はあるんですかねぇ……うちの使用人達が怯えちゃって」
やはり死体が消えると聞くと超常的なものを勘繰ってしまうのも無理はない。
「今のところはなんとも、では最後に私から一つ質問を……」
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「すごい嫌な言い方だった」
3人が退席した大広間。
聞いた話を整理するためにメモ帳に目を落としていると隣から怒る荒城の声。
「確かに言い方はアレだったが的外れでもなかったろ」
「そうだけど!!」
頬を膨らませ遺憾の意を表明する荒城。
顔の距離が近い分迫力が倍にして伝わってくる。
「というか荒城、そんな感じだったか?」
「え?」
「いや、教室ではもっと静かで何にも動じない雰囲気だったから、ギャップがすごくてな」
教室での荒城あやせはテスト全教科満点をとっても学年一のイケメンに告白されても顔色ひとつ変えない人間だった。
まぁ超常現象の被害に遭って感情は揺れるのは仕方ないと思っていたがこんなに感情豊かだとは思わなかった。
「あぁ、教室では取り繕ってるだけ。小さい頃は自分の思ってる事を言うのが正しいと思ってたけどある時それを隠したら生活が楽になった、それだけだよ」
「今は取り繕わなくて良いのか?」
「大丈夫だよ、横溝くんは私に興味ないから」
その言葉の意図は分からなかったが何も言葉を返さず手帳に目を落とす。
別に無視をしたかったわけではない、ただ適切な言葉が見つからなかった。
「ねぇ横溝くん、最後の質問さあれどう言う意味だったの?」
「あぁ、あれか」
俺は3人に最後の質問として「面識は無しにして菅原を殺すと誰に一番恩恵があると思いますか」を提示した。
意味としては昔何かの本で「私怨と私欲は違う」と読んだ事があるから。
個人の感情で私怨よりも私欲を満たす方が行動原理が強いと見た事がある。
それを説明すると荒城は眉を細めこちらを見てくる。
「横溝くんってさ、探偵になるって知ってたの?」
「予測できるわけないだろこんな事」
呆れ口調で否定するが荒城は食い下がる。
「でもでも、そんな「私怨と私欲は違うのだよ」みたいな知識学校じゃ教わらないよ」
なんだその社会に出て初めて出てくるマナー講座みたいな言い回しは。
確かに普通の高校生はこんな知識を持っているわけがないし持っていたとしたらどれだけ殺伐とした世界だと突っ込みたくなる。
「まぁあれだ、推理小説好きが功を奏したとでも思ってくれ」
「ふ〜ん、まぁいいけど。それで3人の答えで何かわかったの?」
3人の答えは
「庭師」菅根は「恩恵とまでは行かないがお嬢じゃねぇかな、幼少期の話を知っているのは幼馴染の菅原だけだったしな」
「家令」千谷は「私は当主様ですかね、嫁入り前のお嬢様と仲良くしていた男というだけで周りからの目が変わります、今は会っていないといえど昔に仲が良くて今も近くにいるというのはよく見えないと仰っていましたから
」
「執事」日笠は「坊ちゃんでしょう、菅原は坊ちゃんの何か秘密を握っているそうですし」
との事だった。
日笠が言う坊ちゃんの秘密は何かと聞いた所本人同士で解決しているから今は遺恨はないとのこと。
「それでさ、何かわかったの?」
「収穫はあったがまだ足りない、次は今回を踏まえてもう少し踏み込むとするか」




