山村殺人事件ー8
「ここってどこなんだろうな」
日が心地よく照らされれる縁側で少し休憩。
庭先の壁から見えるのは向こうに見える山頂と青空。
長子村と言ってたけどもちろん聞いた事がない。
「聞いてみる?」
「怪しまれておしまいだろ、ここは何県ですかって聞くのか?」
「ダメかな?」
「まぁダメじゃないが何が起きるか分からない以上言わないほうが賢明だな、それに知ったところで俺たちの時代にあるかどうかも怪しい。つまり蛇足ってことだ」
仮に何県ですと言われたところでこの事件に関係がない可能性が高いしそれを聞いて疑心が生まれ捜査上不利に働くことは避けたい。
この先も同じような事がある場合は余計な事は聞かないことに越した事はない、まぁこんな事は今回きりにしてほしいが。
「次は誰に話聞くの?」
「日笠さんに聞いたら今は自室にいるから来てくれとのことだ」
心地よい縁側を離れ広い屋敷の迷宮を散策。
日笠が案内をしてくれれば良いものだが予定があると離席、また歩数が無駄に増える。
「なぁ荒城、幼馴染がいたらやっぱり気になるものか?」
「その気になる意味にもよるかな、好きって感情なら相手の全てが気になるよ。身長が伸びたなとか男らしくなってるけど可愛いところは変わらないなぁとか好みは変わったのかなとか後は……」
「じゃあ話す程度の関係だったら?」
「私はそこに居るなぁ……くらいかな」
そこに居るくらい、まぁその認識は間違っていないだろう。
俺だって小学校の時に遊んでいた友人の数名の名前は覚えているが細かな事は覚えていない。
幼馴染なんてその程度、だが想い人なら普通の友人よりも想いが強くなるはず。
「そこを曲がればお目当てさんが居る部屋らしい」
「ねぇ横溝くん、許嫁って成人してなくても決まるもんなんだね」
先程の大広間で3人と別れる前に聞いた話。
奥安家の一人娘「奥安 巴」には許嫁がいるらしい、それも巴は十六歳、相手は二十五歳。
「時代なんだろ、俺だったら許嫁と言われても一回り下の子と結婚は考えたくは無いがな」
「えぇそうなの?男の人って年下が好きって聞くけど」
どこの偏った情報だそれは。
「まぁ好きな相手なら歳は関係ないだろうが一般倫理を問う必要はある。箱入りお嬢様にな」
通路の先、突き当たりにある大きな襖。
その前に立ち襖を鳴らすと透き通った女の声で何者かと聞かれ自己紹介。
入る許可をもらい襖を開く。
「突然すみません、今朝松田さんを返してしまいましたが本人に直接ならと」
「ありがとうございます、私から行けば良いのですが父様から部屋から出るなと厳令されていますので」
部屋はそこまで広くはない、壁に向かう机と隣に本棚。
障子は開かれ窓は半開きで少し風がそよいでいる。
「奥安 巴さん、今件の事について少しお話をお聞かせ願います」
「私でお力になれる事があれば何なりと」
肩まで流れる黒髪に大きな瞳。
顔立ちが整っていると言うよりかは雰囲気も相まって綺麗と言える。
お金持ちの一人娘と聞いてどんな子なのだろうと思っていたがすごく落ち着いて同い年とは思えないがどこか幼くも見える。
「先に巴さんとお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「えぇもちろん、来て頂いて申し訳ないのですが陣一先生はこの件についてどれほどお分かりなのでしょうか」
「八合目あたりですかね」
「……それは素晴らしい。さすが陣一先生ですね」




