山村殺人事件ー6
俺は小さい頃から推理小説や漫画を見てきた。
その類を読む度になぜ探偵役は重要参考人から怪しい人は誰かと聞かないのか疑問に思っていた。
皆が一様に情報や現場を見て自分の頭で考えようとする。
それは遠回りだろ。
「私たちが思う犯人ですかい?」
聞いた質問を確認する料理長の菅根。
「えぇ、名前を言った後にその根拠も頂きたいです」
それを聞いて家令の千谷が背中を揺らしながら笑う。
「てっきり探偵様の意見を聞けると思うたがよもや私達が言うとはね」
「犯人を探す材料は多いに越したことはないですからね、多角的な意見を集めれば自ずと正解が見えると言うものですよ」
実際この家に住む人の意見は重宝する。
そして犯人は誰かという問いには必ず意図がある、誰かを指名するという行為に無意識はないと思う。
普段から怪しかったり恨み言を言われていたりなど負の感情がそこにはある。
それを汲み取り捜査の進展に繋げる事ができれば儲け物。
最初は菅根。
「犯人とまではいかねぇが怪しいのは使用人の町田だな、この前菅原と強い口調で話しているところを見てな。普段は仲が良かったのにその日からめっきり話さなくなってよ、あれは只事じゃねぇ」
手帳に言葉を書き連ねる。
「お二人は菅根さんの言い分に訂正はありますか?」
日笠「私は使用人の個人間はあまり知らないのでなんとも」
千谷「確かにこうへい……町田くんと菅原くんは最近少し険悪だっかかもしれんな。だがそれで殺生とは思えないが」
「俺も殺すほどとは思わねぇが菅原との関係なんてそんくらいしかしらねぇんだよ。それこそ死んだ人間が消えるなんて祟りじゃねぇのか」
料理番としてはそのくらいか、使用人の町田が死んだ菅原と口論をしていた。
確かに口論だけじゃ犯人と決めつけるには早すぎる、だが仲が良かったのに最近は口を聞かなくなったという情報はとても有益。
こういう場合は死んだ菅原の身辺に起きた少しの違和感を拾っていかないと。
「では千谷さん、お願いします」
「私はぁ……庭師の久保田が怪しいと思うな。菅原は代々奥安家の使用人家系でな親父さんの付き添いで小さい頃この家によく来ていた、その頃から球蹴りで庭の盆栽を壊したりしての、そりゃどえらく怒られてたもんだ」
菅根が鼻をならす。
「それで殺すとも思えねぇがな」
「いや、その盆栽を壊した時久保田は怒りこそしたが子を見る目で叱っていた。だが半年前、聞いた話では久保田が大事にしていた死別した奥さんの盆栽を菅原が壊しちまったらしいんだ」
死別した奥さんの盆栽を壊したか、充分に動機になり得る。
それに庭師ならある程度時間の制限は受けない、動き回るには適任。
「千谷さんの意見についてはどう思いますか?」
菅根「まぁ確かに、俺もあいつの形見を壊されたらと思うとなんとも言えねぇな」
日笠「半年前ですと久保田は一週間の休職申請を出していたと思います。損失感情を治すためかと、復帰した久保田は今まで通りでしたよ。それに殺すのに半年の経過が気になります」
人の感情は大抵の時間経過と共に収まる。
よく怒りの感情が来たら一呼吸置いた方が良いのは怒りの感情は人が思っているより長続きしないからだ。
だが寝ても忘れぬ感情はある、それこそ半年たっても消えない感情、人はそれを「憎悪」と言う。




