山村殺人事件ー4
「現状としてはこんな感じか」
部屋に置いてあったメモ用紙にことの流れを分かりやすくフローチャートにまとめる。
事件発生から死体確認、駐在到着、事情聴取、死体消失。
まとめて見たは良いものの少し気になる点がある。
「少し妙だな」
「妙?」
「駐在はこういった山奥にいる警察の支部みたいなもの、なんで事件発生してから自殺と見当を付けるまで本部に連絡しなかったんだ?」
「やっぱ本部を動かすにはそれ相応の証拠が必要だったんじゃない?」
証拠も何も死体が見つかったなら殺人、自殺と事件の比重が大きくなる。
よく事件に大きいも小さいも関係ないと戯言を言う人がいるが実際問題に大きさは関係ある。
警察だってそこまで万能じゃない、もちろん今回の一件は大きい分類。
「それにお抱え探偵ってのは事件を奥安家の意向を反映させたい意図を感じる。だからここでの順序をまとめると」
駐在→探偵→本部
簡単だがここら一帯で起きる事件と呼ばれる事象に対する処置はこの順序を守られると仮定。
そしてこう言うすぐに本部に届けない場合、その理由として考えられるのは。
「地方事件にありがちな「特有の事情」ってやつか」
「特有の事情?」
「簡単に言うと殺人事件よりも世間様に言えない事をしているとか、世間体を気にして殺人の一個や二個を平気で揉み消す根性とか」
「人が死んでるのに世間体とか気にしてる場合なのかな?だって警察が犯人捕まえないと次誰殺されちゃうかわかんないんだよ?」
荒城の言うことも分かるがこの時代の名家当主となると死よりお家柄を遵守する事はあるだろう。
だから駐在と癒着し頭が切れ金になびきやすいお抱え探偵を持つ……と思う。
「幸い手帳には奥安家の家系図とそれぞれの簡単なプロフィールがある、それを頼りに情報捜査と行くか」
「最初は誰に会いに行くの?」
「奥安家当主、奥安 三吉」
日本家屋のことはあまり知らないが寝ていた和室から縁側を通り屋敷の通路を通ると日本要素が満載だった。
ふすまの上に欄間だったり高そうな壺が置いてあったり庭に鹿威しはある。
部屋の数が多すぎる、こんなところに住んだら毎日迷路気分だろう。
お助けアイテムが手帳だけかと少し落胆していたが早計だった、手帳には家系図の他に屋敷のレイアウトも載っており知りたい情報が満載。
「ここが当主の部屋か」
寝ていた和室から歩くこと30分、通り過ぎる人には丁寧すぎる挨拶をもらい最終的には給仕のおばちゃんに部屋を聞いてしまった。
断っておくが俺は方向音痴というわけではない、この屋敷が広すぎる。
扉の前にたちこの前授業でやった面接対策を思い出す。
まずはノックを3回。
「どなたかな」
襖の奥からゆっくりと渋い声が聞こえる。
「横溝です事件の事で少しお話を伺いたく来ました」
「入ってください」
「失礼します」と言葉を置き襖を開ける。
部屋は書斎と言うには広く住む部屋としては壁に本棚が敷き詰められ奥にある机の上にも本が大量に積まれていた。
確か敷居を踏まないことが礼儀とか聞いた事がある。
奥の机に肘をつきこちらを見るのは七三分けの50代くらいの男、おじさんと言うには若い。
「すみませんね陣一先生、昨日は急にお呼びたてしまって」
「いえいえ三吉様がお呼びでしたらどこまでも駆けつけますよ」
なんかドラマで見た癒着関係の言葉を取り繕ってみたがどうだろう。
三吉の反応は少し微笑み机の葉巻を一つ咥える。
「それで先生、事件の方は見当がつきましたか?」
三吉の目つきが変わる。
やはり一家を支える大黒柱は風格が違う、それも豪族なら尚更。
「まだ情報が揃っていないのでこれから屋敷の中を見て回ろうかと、よろしいですか?」
「えぇもちろんですよ、有馬には本部への連絡を待たしてます。私も多忙な故この後も京の方へ失礼します、もし何か入り用でしたら日笠へ」
三吉が手を指す方にいたのは黒いスーツを着た180はある大男。
手を前に凛とした姿、まさしく絵に描いたような執事だった。
「私は三吉様に仕える日笠と申します、連絡役やその他雑務は私にお命じ頂ければ」
「ありがとうございます、では早速ですが日笠さん。あなたが思う奥安家をよく知っている方を2名選んでいただけないでしょうか。条件として奥安家の人間ではない方でお願いします」




