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山村殺人事件−3

メモ帳の中には先ほど鳥が言っていた迷宮から帰る方法や年代、事件の概要が書いてあった。

概ねの流れは先ほど使用人の松田さんが言っていた通り。

後は奥安家の家系図と使用人の名前一覧、知りたい情報があってよかった。


「横溝くん、最初は何から始めるの?」


「まずは情報を整理したい」


「この手帳に書いてる通りじゃないの?」


「普通の事件ならこの手帳で事足りるけどこれは超常現象。言うなれば俺たちは迷子なんだよ……はぁぁ」


全く自分で言っていてため息が出る。

この場で俺たちは奥安家お抱えの探偵であり事件解決には適役、だが俺たちがここに来てからの行動が分からない。

それに駐在の有馬という男との関係値もわからない。

全てが分からない、どう立ち回るのが最適解かを調べないといけない。


「荒城、ここがもし推理小説の中だとしたら一つだけおかしな点がある。なんだと思う?」


「う〜ん、探偵が学生?」


荒城は推理小説を読んだことがないのか。


「時代背景が違うということだ」


「……ん?」


「まぁ俺も推理小説を全部読んだわけじゃないが俺たちは2025年からやく半世紀も前である1960年に飛ばされ探偵役として組み込まれている。ある程度の前提があれば動きやすいがそれがない、つまり犯人が分かったとしてもそれを説得する場が整えられなかったら意味がない」


「つまり?」


「……どれだけ証拠が揃っていて犯人はお前だと突きつけても本当の解決にはならないって事だ。だってここは俺たちが知ってる場所じゃない。いわば未開の土地、分かるだろ?」


1960年代と言われても俺たちは社会の授業で戦後の日本しか習っていない。

この時代の警察がどのように動くとかこういう名家がどれほど幅を利かせているかとかを知らない。

何がどう作用するかは今は分からない、分からないことだらけだ。


「そこは大丈夫なんじゃない?」


手に持っていた手帳が荒城に強奪され手帳をペラペラとめくり「なるほど」と呟きながら頷いている。

梟は言っていた帰還方法に死ぬことが挙げられていた、それにゲームオーバーという問いに死がすり替わるとだけ回答していた。

最悪の場合犯人を当てても事件が解決する前に殺される可能性もあるということ。


「横溝くん、あの鳥さんが言ってたのは迷宮を攻略するってことでしょ。その犯人を見つける事が前提で進んでいるわけであってその他の事は今考えるべきじゃないと思うよ。そうでしょ?」


「……確かに」


俺とした事が平静になろうとしすぎて余計なこと考えていた。

そもそも犯人の目星が付かないと話も進まない、今やることは事件の流れを見て犯人を当てることか。


「悪い、少し冷静じゃなかった」


「謝らないでよ横溝くん、冷静じゃないのは私も一緒だから。だから一緒に考えよ」


荒城の手はすごく震え顔は引き攣っていた。

多分今にも泣きたい気持ちを抑えて目の前にある問題を解こうとしているのだろう。

そうだ、荒城も俺もまだ高校生。

自分は人より物事を冷静に見れると思ったが、少し思い上がっていたのかもしれない。

荒城のおかげで少し現状の判断がついた気がする。




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