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山村殺人事件ー18

奥安巴の消息が不明となり屋敷総動員で探していた時。

森奥を探していた俺と荒城、警備員の久城のもとに響く女の叫び声。

現場に駆けつけると5人の使用人と木の上部に打ち付けられていた菅原の死体があった。


「祟りだ……祟りだ!!」


木に打ち付けられた菅原の死体を見上げる使用人が叫ぶ。

菅原は10mは上に打ち付けられているところを見ると確かに祟りと言われても不思議はない。


「横溝くん……」


隣では胸の前で手を強く握りしめる荒城。

現場に満ちる血の匂いと滴る音、はっきり言ってあまり長居はしたくない。


「あまりみない方が良い」


瞬間に倒れる久城。

菅原から目を離さず腰を抜かし方で息をして動揺が手に取るようにわかる。

その動揺は死体を見たからかはたまた悪い予想が現実味を帯びてきたからか。

久城は恐るようにこちらを見上げる。


「先生……これが祟りじゃなくて、なんと言うのですか」


菅原は恐らく身長170cm体重は70後半の少し大柄な男。

打ち付けられている高さはおよそ10mはある、どれだけ屈強な男でも持ち上げるのは不可能。

それに加え包丁一つで菅原を打ち付けるのも重さを見れば無理だろう。

じゃあ頂上的存在による犯行なのか、それは断じて違う。


「これは巧妙に仕掛けられた殺人ですよ。必ず解いて見せますよ、そのために呼ばれたので」


木の上部に菅原を吊るしたカラクリは後ろを見れば恐らく解明できる。

荒城に声をかけ木の裏へ。

裏手にに行き木の根元を指差す、それを見て荒城が一言。


「……釘?」


「あぁ、菅原をあそこまで持ち上げたのは「滑車の原理」長い紐を用意して木の幹にかかるように投げてその先に菅原を縛り付ける。あとは引くだけで簡単に菅原が持ち上がる」


「でも、幹に垂らしただけじゃ軽くならないんじゃない?」


「あぁ、滑車と言っても「定滑車ていかっしゃ」と「動滑車どうかっしゃ」がある。持ち上げる対象物にかける力を減少させるのは動滑車、犯人は恐らく木の幹に滑車を設置して持ち上げたんだろ。今菅原の隣の幹にロープが通ってるが幹の減りがロープが擦れたにしては綺麗だし少し変色してる」


木の幹に油でも塗って取り外しができる滑車をつけて引っ張ったというのが無難か。

だが少し妙だ、こんな分かりやすいトリック……仕掛ける労力に見合わない。

木の裏手で確かに初見じゃ気付きづらいし何日かは伸ばせるかもしれない、そのためにやったのか。

いやまて、少しの時間を作るためにやっていたとしたら。


久城の協力の元菅原を降ろし本当に死んでいるかをチェック。

お助けアイテムに手持ちライトがあったので瞳孔反射を調べ脈音など素人で判断できるものをつぶさに確認したがどうやら本当に死んでいる様子。

外見も赤みが消え呼吸も見えない。


「荒城、すぐに屋敷に戻ろう」


「え、巴ちゃんは良いの?」


「あぁ、ここらに巴は居ない。俺の考えが合ってたら犯人は相当に凶悪で最悪、次の被害が出る前に準備をしたい」


屋敷に戻りこの地に来て最初に目覚めた部屋の机で手帳を開き整理。

そばには荒城、後ろには警備のために久城が立っている。


この事件は不可解な点がありすぎる。

まず初めに「死体消失」。現場の更衣室という人通りが多い場所でなぜ行われたのか、それと誰が死体を隠そうとしたのか。

そこにいた全員にアリバイがあり死体と現場には死んだにしては血が薄く正面から刺されたにしては争った跡がなかった。

次に「菅原の亡霊が巴の使用人である松田の前に現れた」。現場検証として次期当主の健五郎や巴を連れて更衣室に行こうとした時に松田の悲鳴と共に菅原の亡霊が現れた。

なぜあのタイミングで使用人である松田の前に現れたのか、祟りという印象を植え付けたいなら大勢の前に現れれば良いのに。

最後に「木の上で死んだ菅原の謎」ロープの位置から滑車の原理を使ったのは間違いないがそれ以外に不可解な点がある。それは血痕の少なさ、ロープに括る行為もあの場に運ぶときにも血が滴る。それにあそこは落ち葉や草木が地面を覆っていた、落ちた血を拭くなんて無理な話だが菅原から出ている血は下の一箇所しかなかった。


「菅原が死に巴が消えることで受ける恩恵……この計画は明らかに菅原の意思が働いている」


「ねぇ横溝くん」


俺の肩を揺らす荒城。


「私ね巴ちゃんと少し話したんだけどね。多分だけど巴ちゃんは普通の女の子だと思うよ」


少し思い詰めたように喋る荒城。

巴が女の子というのは俺も知っているが、何を言いたいんだろうか。


「そりゃ女の子だろ、俺たちと変わらない年の……」


「そうじゃなくて、こういうお金持ちの人とかじゃなくてただの女の子なんだよ。巴ちゃん言ってたよ「取り繕うのは少し疲れる」って」


取り繕うのは少し疲れるか。

巴にあった時に感じた落ち着いた雰囲気、時代性からそこまで注視していなかったが。


「そうか……そうだったのか」


今までの疑問点に奥安巴という女の子を投影すると見えてくる一つの真実があった。

だけど、これはあまりにも惨すぎる。


「横溝くん、何か分かったの?」


「あぁ、なぜ菅原の死体が消え松田の前に現れ木の上に打ち付けられる凄惨な死を迎えたのか。なぜ巴が小一時間の時に姿を消したのか」



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