山村殺人事件ー17
「横溝くん、巴ちゃん平気なんだよね?」
菅原の幽霊が出た翌日、俺たちは周辺の調査のため2時間ほど屋敷を出ていた。
その間に奥安巴は消息を絶ち屋敷の中は困惑一色。
幸か不幸か当主である三吉は事業のため明日まで東京にいるらしい。
「平気かどうかは保証できない、松田が言うにトイレに行くといってそのまま1時間経過した後に消息が不明になったと。正直なんで1時間も経った後に確認しに行ったのか分からないが」
「それはあれだと思うよ、巴ちゃんお腹痛そうにしてたし」
妙なフォローを入れる荒城。
「まぁそれは問題じゃない、問題は次に狙われたのが巴だってことだ。なぜ犯人は菅原を利用して巴を誘拐したのか、金目当てなら身代金を要求するはず」
攫われてまだ3時間ほどだが誘拐ならアクションが起こってもおかしくはない。
巴を攫って何が目的だ、奥安家を潰したいなら次期当主の健五郎を狙うはず。
それに許嫁問題も問題の大小で言うと大きくはないと聞く。
「動機が不明すぎる、菅原と巴の関係を考えても動く理由が分からない」
「横溝くん、巴ちゃんは生きてるのか教えて」
不安そうな顔を浮かべる荒城をみて我に帰る。
どんな理由であれ人が攫われているんだ、こんな悠長にしている場合ではない。
それも俺たちと年も違わない女の子。
「悪い荒城、俺たちも探すか」
松田、日笠、田所、料理人達は屋敷を探しその他の使用人と俺と荒城は久城と一緒に屋敷外の山道へ。
陽が高い道はかなり熱い、今はそんなことを考える暇もないけど。
先頭には久城。
「陣一先生、これが霊の仕業じゃなかったら誰の仕業なんですか。死体を消して松田さんの前に現れたと思ったらお嬢まで攫って。奥安家に恨みがある怨霊……じゃないんですか?」
「霊的な仕業で奥安家を狙うなら粗末すぎますよ、奥安家を壊滅させたいなら当主を狙えば良い。当主を苦しめたいなら次期当主の健五郎さんを狙えば良い。こんな回りくどいのは人間が思考作後している結果です、それを紐解けばこの事件は解決する」
「流石は先生、日笠さんが言った通り頼りになります」
今回で気になるのは菅原の所在。
死んだふりをしてやり過ごし松田の前に現れて俺たちに警告をした。
最初は日笠と共謀しているかと思ったがそうなると日笠の行動原理が分からない。
菅原を屋敷から追い出したいならこんな怪奇事件を演出する意味がない、奥安家に何か恨みでもあるのか。
「日笠さんはとても三吉様と仲が良いと見えるのですが事業以外に関係があるんですか?」
「詳しくは知らないが日笠さんは大学在学中に三吉様の事業説明会に出席してそこで意気投合したらしい。そこでこちらに来る形になったとか」
「確か日笠さんの大学は」
「東京大学です」
東京大学で意気投合してこの長子村に来たと。
そんな有名大学を出てここに来る理由、おそらく三吉に着いてきたら何かメリットがあったから。
そのメリットがトリガーになってこの事件を起こした、1960年で東大に行けるほどの知恵を持った男がこんな村に来る理由……。
「キャァァアアア!!!!」
森にこだまする女声。
即座に久城は「俺の後に!!」と共に声の方へ走り出す。
悪路ではなかったので後に続くのに苦は無かった。
「どうされましたか!……な……」
絶句する久城。
目の前には倒れる女使用人が3名と男二人と木の上部に打ち付けられた心臓部から血が滲み出る男の死体。
誰かと問おうとした時、久城が言葉にする。
「菅原……」




