山村殺人事件ー15
「こんな時間まで推理とは性が出ますね陣一先生」
「巴も日笠も呼ばれたのか、こんな時間になんのようだ先生」
「……」
夜も更ける頃、奥安家の一室に日笠と健五郎、巴、駐在有馬、警備員の田所と久城の6人。
俺がここに呼んだ人間の基準は犯人の可能性と次の犠牲になる可能性が高い人物。
「ここにお呼びしたのは事件の謎を解くためです」
「謎がわかったのですか!?」
巴を皮切りにそれぞれ驚きの声をあげる。
ただ召集を手伝ってもらった日笠だけは最初に話していたため腕を組み静観。
だがもちろんブラフ、謎も犯人も行動理由もわからない。
「ですがまだ確証が得られていません、それにこの屋敷に殺人犯がまだいるのであれば第二の被害者が出てしまうかもしれないのでここは皆さんの力を借りたい」
「力をかせって浴場で散々話したろ、それ以上は無い」
浴場で話したのは健五郎、お前だけだよ。
「今から事件現場にいって少し試したいことがあります」
6人を引き連れ事件があった更衣室へ向かう。
時刻は11時50分を回る所、ちょうど良い時間帯。
流石に一日屋敷にいると通路は覚えてきた、今度は迷わず現場に着きそうで一安心。
だが現実はそう簡単にいかない。
「キャァアアアア!!!」
通路に轟く悲鳴。
警備員の田所と久城が先頭を走り声の方へ走り出す。
まさか集めた人以外に狙われる人物がいたのか……。
「大丈夫ですか!!」
通路を曲がるとそこには。
「松田!!」
誰よりも先に出たのは奥安巴。
先に倒れていたのは巴のお世話係の松田だった。
松田は蒼白な顔には多く返り血を浴びていた。
「何を見た」
「お嬢様……幽霊が……襲って来ました」
「「幽霊!!?」」
取り乱す松田とこちらを向く面々。
一目で幽霊と判別できるのは松田の前にいたのは恐らく死んだはずの菅原か。
血が塗られ襲われたというのは至近距離まで近づいた証拠。
「皆さんひとまず近くの部屋に行きましょう、情報整理はそれからです」
近くの茶室に行き松田は暖かい茶を飲み平静になるのを待つ。
外には田所と久城が見張っている。
「ねぇ横溝くん、本当に幽霊が出たと思う?」
「そんなわけないだろ、幽霊なんている訳がない」
「その根拠は?」
荒城は案外冷静、松田の悲鳴が聞こえた時も荒城は少し肩を揺らしただけだった。
日笠が後ろから来た時は声をあげていたのに未だ荒城の生態はよくわからない。
「怨念、呪殺、祟りが仮にあるとしたらこの世界はとっくに滅んでる。権力に反感は付きものだ、死んだ人の呪いで死んでたら政権も国家も樹立してないだろ」
「……でもさ、そういう人は呪い対策で陰陽師とか呪術師とか雇うんじゃない?」
「大勢から呪う対象にされて全部防げる陰陽師がいる訳ないだろ」
「確かに」
幽霊など馬鹿らしくて話もしたくない。
夏の風物詩で楽しむなら結構だがそれを理由に怯えるのは我慢ならない。
いない物に振り回されるほど愚かなものはない。
「皆様先ほどはありがとうございました」
平静を取り戻したのか松田が湯呑みを置き話し始める。
「松田さんわかる範囲で見た事を教えてください」
「はい、私は正午の大時計の点検をしに大広間に行こうとしていました」
「正午の大時計とはなんですか?」
「奥安家では日付を知らせる大きな時計が大広間にありまして、使用人は当番制で24時前の20分はその点検を行うのです。点検といっても針が動いているか基盤が動いているかと目視だけですが」
警備員の田所と久城が言っていた24時になると奥安屋敷に轟く鐘の音の事か。
その点検をしようと向かっていた時に出会した幻の幽霊。
「松田さん、幽霊を見たというのは亡くなったはずの菅原さんがいたという事ですか?」
「……はい。心臓部に簪を刺して口から血を吐きながら私を見て……「進むと呪われる」と呟いて……」
涙ぐむ松田の肩を支える巴。
「松田、無理するな」
「お嬢様……」
進むと呪われる、この言葉の意味は如何様にも解釈できる。
一つはこの事件を進めば呪うという警告、もう一つは時計の部屋に行くと呪うという忠告。
だがどれもおかしい、前者なら捜査している俺に言えば良い、後者なら事件現場ではなくなぜ時計の部屋なのか説明がつかない。
「陣一先生……私は呪われるのでしょうか」
途切れる声で聞いてくる松田だが俺は陰陽師でもなくただの高校生。
わかる訳がない。
「専門外なのでなんとも言えませんがこの質問に答えてくれれば呪われたか判断つきます。嘘をつくと呪われる可能性が高まるので正直にお答えください、いいですか松田さん……」
「はい……」
「あなたは今回の事件に関係ありますか?または関係者を知っていますか?」
「いいえ、断じて知りません!!」
涙ながらに強く訴える松田。
鬼気迫る顔から嘘ではないことはその場にいる誰もが分かっただろう。
それに加え、犯人とまではいかないが関係していると思わしき人物が一人絞れた。
「松田さん安心してください。これはタネも仕掛けもあるただの悪戯ですよ」




