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山村殺人事件ー11

「まいどあり」


屋敷から出れないかと危惧していたがいとも容易く外出。

さすが田舎といった田園風景の中を横断し途中あった駄菓子屋でアイス棒を2本購入。

もう日が傾き夕暮れの時間帯となっていた。


「おいひぃ!!」


屋敷を出ようとした時何故か少し怒った表情の荒城と遭遇。

次なる目的に会うべく二人でアイスを食べる。


「それで犯人は分かったの?」


「分かったけどまだ分からないな」


「なにそれ」


可能性があるのは日笠だろう、だがそれは可能性が高いだけで決め手がない。

まず動機、菅原を殺して何が利になるか。

当主である奥安三吉の邪魔をさせないためか、だが日笠自身が「殺して当主の手を煩わせるのは」と言っていた。

確かにいくら邪魔とはいえそこまで深い関係ではない菅原を殺すリスクを考えると意味がない。


「許嫁のブランドが幼馴染のせいで落ちると言っても今の関係から見て殺す必要はないと思うしな」


「許嫁ってそんなに男関係めんどくさいの?」


「そりゃリアルな話、付き合った事がないだけでもブランドなんじゃないか?実際問題は知らないが」


奥安家のために不安分子を殺しておこうと考えるのはない話ではない。

それにしては奥安家の当主である三吉の行動に整合性がない、仮に菅原を殺して許嫁としての品格が上がるなら駐在にも黙っておけば良い。

家族への説明のために調べさせているのか……。

もしくは奥安巴の兄である健五郎けんごろうの秘密を知る菅原を殺した……いやどちらにせよ奥安家のためなら捜査をする意味がない。


「ここが次の目的地?」


考えていると次なる目的地へ着いていた。

田園風景の中にある赤いランプがトレードマークの建物。

長子村派出所。


「こんにちは」


開いている扉から入室するとも抜けのから。

俺たちの時代にいある交番と同じような部屋、壁には長子村のマップが貼られている。


「お疲れ様です陣一先生」


奥の部屋から出てきたのは短髪細身の中年男、駐在の有馬。

事件当時に死体を確認、その他事情聴取、そして死体が消えた現場にいた人物。


「ありがとうございます」


奥の茶室でテーブルに置かれる湯気の立つお茶が二つ。

目の前には肩にかけた手拭いで額を吹く有馬、おじさん臭がすごい。


「いやぁこの度は奇怪な事件に巻き込まれましたなぁ、私も何が何だか」


「有馬さんはこう言った事件は初めてですか?」


「はっはっは、陣一さん。こんな事件が何回もあってたまりますかって話ですよ」


確かにこんな死体が消える事件が何件もあれば日本はパニックになるだろう。

それこそ名探偵コナンみたいな超絶頭のキレる探偵でもいない限り。


「菅原さんの死亡を確認したのは有馬さんで間違い無いですか?」


「私とその場にいた日笠さんが行いました、呼吸、脈動、瞳孔反応、心拍を確認しました。私だけでは不安だったので日笠さんの確認もとり死亡と言っても良いかと。ですが医師の判断がないので死亡とは断定できませんが」


確かに法律上死亡を断定できるのは医師の検査結果の元で行われる。

だから今回の一件において正しく言うなら菅原は死亡に近い状態だったと言うこと。

死体が動いたと言うにはまだ断定材料がない。


「先生も聞いている通りあの屋敷にいた全員に完璧なアリバイがありました。それこそ一人の人物が誰もいない程でしたよ。まぁ夜中なんで従業員は全員男女分かれて同じ部屋で寝ていましたよ」


確かに誰かが抜き出したという話は聞かない。

本当に誰一人として抜け出せる状況になかったのだろう、それは従業員に限った話ではない。

三吉も日笠も巴も全員。


「死体が無くなる前と後で何か部屋に変わったことはありましたか?たとえば窓の開閉跡があったとか、畳が少しよれていたとか、移動した痕跡があったとか」


有馬は腕を組み上を向く。


「特には……そういえば日笠さんの様子がおかしかったな」


「どうおかしかったんですか?」


「いやそこまでおかしくはないのですが、いつも冷静なのに窓を開けたり従業員さんのロッカーの扉を確認したり。かなり部屋を入念に調べていましたね。それから急ぐように皆さんへ陣一先生の助けを借りるから自室に戻るように指示を出していました。普段とは違う焦燥があり驚きましたね」


普段と違う焦燥感、まぁ殺事件があっていつも通りならそれこそおかしいけど。

部屋を入念に調べて急ぐように自室へ戻るよう指示を出したか。


「日笠さんは皆さんに待機を命じた後はどこにいましたか?それと日笠さんが一人になる時間はありましたか?」


「いや、部屋を出た後は陣一先生が到着するまで私と三吉様と一緒にいましたね。それこそ事件と三吉様の事業にかかりっきりで大変そうでしたよ」


なるほど、一人になる時間はなかった。

部屋から退出させて何かをする時間もなかった。


「有馬さん、次に本部への連絡を待っている理由はなんですか?」


そう言うと有馬は今での笑った表情から虚空を見つめるような表情に変化した。

正直ここにきて一番背中が凍った、それほどまでの変わりよう。


「なんでって、三吉様に止められているからに決まっているじゃないですか。おかしな事は言わない方が良いですよ陣一さん」


やはりこの村は思っている以上に支配が強い。


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