最終日04:43:34/勝狩展望台/前田千尋
私はゆっくりとM1のスリングを肩から外し、両手で構える。
蛍光塗料が塗られた照準を、浩司の眉間に合わせる。
背中と顔を、血ではなく汗が流れ落ちる。
M1を持った手が震え、視界がぼやける。
目の前の浩司が遠くに見えたり近くに見えたりを繰り返した。
「泣いたところ、初めて見たな」
「・・・・・・」
「こんな時に泣き顔は見たくなかったよ」
「ごめん・・・・・・ごめん・・・・・・」
浩司は諦めた様な、潔くもさみしそうな笑顔で私を見る。
引き金にかけた、血に濡れた指が小刻みに震える。
呼吸も荒くなっていき、見開いた眼は徐々に閉じられていく。
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「サヨナラ・・・・・」
そう、小さくつぶやき、引き金にかけた指に力をこめる。
引き金を引こうとした瞬間、一発の銃声が鳴り響き、目の前の浩司の胸に風穴があいた。
心臓を貫いた弾丸は、私の頬を掠めて、展望台の外へと飛んでいく。
「あ・・ああ・・・」
浩司はゆっくりと目を閉じて、地面に崩れ落ちた。
私はM1を地面に落として、倒れた浩司の姿を呆然と見つめた。
入口に視線を移すと、目を血走らせ、旧式の小銃を構えた神主の姿がある。
顔は歪められた笑みで満たさている。
素早くボルトを動かすと、その銃口は私に向けられた。
「小娘め・・・・・・・手間をかけさせやがって」
口を小さく開けて、見つめる私に、そういうと、神主は躊躇なく引き金を引く。
左胸の端っこ。
肺の端の部分を貫き、私は口から血を吐いて仰向けに倒れた。
「ハ・・・・カハッ!・・・・・ハ、ハ、ハァ・・・」
口からは呼吸するたびに血が噴き出る。
目を見開いて、右手で撃たれた部分を抑える。
血は止まる気配もなく、ドクドクと流れ出ていた。
いつのまにか神主は、私の傍まで寄ってきており、趣味の悪い笑顔とともに、黒光りする銃口を、私の顔にゆっくりと向けようとしている。
「・・・」
終わった。
私がそう思って、すべてをあきらめたとき、私の体は激しく揺さぶられた。
いや、町全体が激しい地震に揺さぶられた。
何が起きたかを理解する前に、私の視線には自信によろける神主の姿が見える。
視界はグラグラと揺れ、視界が狭くなっていく中で、私は神主だけを鮮明にとらえていた。
本能的に左腕を動かし、ホルスターからブローニングを抜き出し、まともに狙いをつけずに一発放った。
放たれた弾丸は神主の頭を撃ち抜き、神主は頭から血を噴出しながら、地面に倒れる。
地震はなおも続き、背後からは津波が押し寄せるような、大きな水の音が迫ってきていた。




