最終日04:15:33/トンネル/前田千尋
「浩司・・・・・待った?」
フラフラと、偶に視界が真っ赤に染まりながらも、トンネルの下まで歩いてきた。
そこには、私と違い、怪我一つない浩司がいた。
私の姿をみて、驚いた顔をして、何かを言いかけている。
「ああ、私はまだ向こう側の人間じゃないよ・・・・・・生きてる、生きてる・・・」
私はそう言って右腕を上げるが、激痛に顔を歪め、すぐに下してしまった。
「おいおい・・・・何があった?・・・・酷い怪我じゃないか・・・・・」
「はは・・・・撃たれて切られて殴られて飛ばされて落ちて・・・・私もしぶといよ」
浩司は私の体に触れようとするが、痛みに顔を歪める私を見て、躊躇している。
私は、そんな浩司に小さく笑いかけ、彼の右腕にしがみついた。
「決心、ついたんだろ?」
「ええ、やっぱり浩司が死ぬほかないみたい」
「ならさっさと殺ってくれ、俺も覚悟はできてる」
「ここじゃ嫌・・・・上に行こう?」
私は浩司の顔を見上げて言った。
「連れてってよ、私はもう動けない」
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あの岬まで続く獣道を、普段の倍以上の時間をかけてゆっくりと登っていく。
理由は簡単。
もう私は歩くこともままならないからだ。
浩司の肩を借りて、何とか足を踏み出しているが、進むたびに崩れ落ちそうになる。
「さっき皆に会ってきた」
「はぁ?」
「義昭も加奈も、クラスの皆も今はもうこの霧と一体化してる・・・・」
「・・・・・まさか学校に行ってたのか?」
「綺麗な顔のまま死ねたんだ・・・・これから先の私とは違ってね」
私は腕にしがみつき、少し顔を赤くして、言った。
「好きな人と入れるって幸せなことだね」
「何言ってる?」
「初めて人を好きになれたな、この町に来て」
「・・・・・」
「・・・・・」
ようやく登り切り、展望台の上へと上がる。
私は展望台の手すりまで連れて行ってもらい、手すりに背を向けて寄りかかると、浩司の顔をじっと見つめた。
「私、ここに来るまではただの道具だったから・・・・・初めて一般人になれたって・・・」
「・・・・・」
「友達ができたのも初めてだったし、毎日が充実してたよ」
「・・・・・」
「全部浩司達のお陰さ・・・・・感謝してもしきれない・・・・」
「・・・・・」
「なのに、こんな最期になるなんてね・・・・」




