2日目19:03:36/日向小中学校/前田千尋
「く・・・」
私は新たにできた傷を抑えながら扉を開けた。
普段通っている学校の自分のクラスの扉だ。
自分の席に座ると、青く腫れた腕の一部に目を落とす。
「・・・」
恵美が不安げに私を見ていたが、私は右腕を痛みをこらえながら動かして、平気そうな顔をした。
元々無表情な娘なのだから、意識せずとも表情は変わっていないが・・・
「・・・お姉ちゃんにもお父さんお母さんはいないの・・・?」
ふと、じっと私を見ていた恵美が言い出す。
「いない」
「じゃぁ・・・あのお兄ちゃんにも?」
「ううん。浩司にはいるよ・・・私だけ苗字が違うんだ。転校生だから、私って」
「・・・なのにお兄ちゃんの家にいるの?」
「親戚だから・・・」
私はそう言って彼女をじっと見つめる。
彼女はさっきまでのような、私に対して警戒しているような、怖がっているような顔はしていなかった。
どこか、心配されているような顔で、じっと私を見ている。
「・・・不安かい?」
「うん・・・」
「ここから出れたら、どうする?」
「わからない・・・」
「そうだよね、恵美・・・じゃあさ、ここから生きて出られたら・・・さ」
私は横に座った彼女に言った。
「・・・ここから出てもさ、私の事を頼ってくれて構わないから・・・さ」
「え・・・?」
「家族になれるかは知らないけど、恵美のお姉ちゃんになっていいかな?」
「・・・・・・・」
私の言葉に、彼女は眼を見開いて無言になる。
まるで私がなってあげると言いたげな言い方だが・・・本当は私のほうが彼女を必要としていた。
少し経つと、彼女は小さく笑ってコクリと頷いた。
「・・・そう。ならお姉ちゃん頑張らないと」
私は遠くに聞こえる物音を察知して、M1を持った。
恵美を私の後ろに隠すようにして、扉に銃口を向ける。
ガラリと教室の扉が開く。
「浩司・・・」
扉を開けた人物に銃口を向けながら言った。
「無事だったのか・・・良かった・・・」
彼は驚きながらも、ホッとしたような表情で言う。
「ねぇ、浩司・・・よく聞いて」
私は銃口を向けたまま、そう切り出した。




