2日目10:16:25/日向公民館/高橋美奈子
私は、メモ書きを置いて恵美ちゃんの手を引いた。
先ほどから公民館の外側が騒がしい。
きっと、ここも破られるのも時間の問題だろう・・・
「先生・・・外にいっぱい・・・」
いつからか、恵美ちゃんが目をつぶって外の様子を伝えてきた。
目をつぶると、誰かの視界が映るらしく、私も時折目をつぶりながら・・・外の様子を確認していた。
もう、限界だ。
私はバリケードを少しずらすと、公民館の広場から、廊下に出た。
外の、玄関先には大勢の怪物が見えた。
皆、人型ではあるが・・・赤い霧を体に纏わりつかせて・・・・
「恵美ちゃん、目を開けちゃだめよ」
私は彼女の手を引きながら、裏口に回る。
さっき目をつぶっても、誰もここには来ていなかった。
裏口のカギを開けて、外に出ると同時に、背後から銃声のような音と、怪物の呻き声・・・そして、何かが破壊された地鳴りのような音が聞こえた。
「先生・・・どうなってるの?」
「恵美ちゃん、大丈夫だから、先生が守ってあげるから・・・・何処に行けば・・・?」
私は、小さな彼女の手を引きながら、後ろを見ずに走る。
「もう目を開いていいよ、絶対先生を見ていてね!」
そう言って、私は彼女に合わせた小走りで駆け抜ける。
時折聞こえる銃声が、私たちの味方であることを祈って・・・
その銃口が私たちの方を見ていないことを祈って・・・
きっと誰にもバレていない・・・
そんなことを祈りながら、たどり着いたのは、浩司の家の近所だった。
丁度、メモにも書いてきたから、大丈夫。
私は周囲を見て、誰も追ってこないことを確認すると、彼女の手を引いて彼の家がある路地に入っていった。
彼の家は、玄関が開いていた。
私は、目を閉じて、誰もいないことを確認すると、中に入っていく。
階段を上がって、とにかくどこか彼女を隠せそうなところを探す。
偶々開いていた扉の先に入ると・・・そこは恐らく前田さんの部屋だった。
部屋にかかっているセーラー服がそれを物語っている。
タンスに机にベッドに・・・押し入れ・・・ちょうどいい。
私は、彼女の方へとしゃがみ込むと頭に手をのせて言った。
「恵美ちゃんは、この中に隠れてて?」
「え?・・」
「先生はすぐに戻ってくるからね・・・それまで外に出ちゃダメ・・・」
私は、泣きそうな彼女の頭を撫でて、彼女を押し入れに隠す。
手に持った金属バットを握りなおすと、ふーっと深呼吸する。
そして、部屋を出ていった。




