2日目05:58:05/日向町役場/前田千尋
「誰かに見られてる気がする」
私はそう言って町役場の中へと入っていった。
ついてきた浩司も、私の言葉に不安そうな顔をする。
「見られてる?」
「さっきは結構いたあの異形の数が少ないのもおかしいけど・・・誰かになんかこう・・・見られてるような・・・」
私は役場の入り口で、そう言って目を閉じた。
今はこの動作が索敵の動作だ。
目を閉じて、浩司以外の視線を探す。
すると、私たちのいる役場の奥の方に何かが居た。
その視線を見ていると、細い何かを取り出して・・・金属が擦れる音がする。
暗がりからも、ライフル銃の機関部の菊の紋章がハッキリと見えた。
「浩司、出よう!・・・」
私は目を開けてそういうと、彼の手を引いて外に出た。
その直後、派手な轟音とともに、私の腹部を銃弾がかすめていく。
「痛ゥ・・・・!」
「千尋!大丈夫か?」
「かすめただけ」
痛みに顔を歪めながら、私達は適当な民家に飛び込んだ。
玄関口で、銃を構えて待つと・・・背丈のがっしりとした老人が、ライフル銃を構えてゆっくりと出てきた。
赤い霧が周囲に漂っているのを見る限り・・・彼も異形の者だが・・・それにしては、今までの者よりも原型がある。
「どうして私達が見えたの?・・・あの視界からは私も浩司もいなかったというのに」
いや、撤回。
シルエットだけだ。
その表情も、腕も足も何もかもが・・・さっきよりも酷い。
私は掠めた腹部から流れる生ぬるい血の感覚を感じながら・・・引き金を数回引いた。
すると男は上半身の一部を吹き飛ばしながら、地面に伏せる。
「なぁ、止血しなくてもいいのか?」
「ああ、するよ・・・」
私は銃をいったん床に置くと、上着を脱いで彼に渡す。
「ポケットに消毒液と包帯があるから取ってもらえない?」
上半身だけ下着だけになって傷を見ると、かすめただけだというのに結構抉られていることが分かった。
「ほらよ」
「ありがとう」
私は手際よく自分の体に消毒液をかけて包帯で縛った。
液が傷に染みた痛みがあるが・・・動く分には関係ない。
インナーシャツを着て、ハーネスを付け直し、上着を着ると、私はすぐに立ち上がった。
それを彼が止める。
「動くなよ。その傷なんだ、暫く休もう」




