2日目02:12:36/平元家/前田千尋
「行った?」
「・・・うん。入ろうか」
私は暫く構えたままで止まっていた姿勢を崩して前に進む。
あの大津波で、一時的に意識を失っていた私達が気付いたのはついさっき。
腕時計を見る限り、2時10分ちょっと。この怪異からもう1日が経過していた。
のしかかられたまま気絶していたので、起きるときにちょっと気まずい思いをしたが・・・それも由紀子の家を出てすぐに散った。
赤い霧が深く、濃くなり・・・そして目をつぶって集中させると、何かが視界に入る。
あまりの現実味のなさに目を開けると、浩司も同じ思いをしたらしく、顔を青ざめさせていた。
「結局何なんだ?誰かの視界が見えてるっていうのかよ」
「・・・・・・ああ」
家に入っていき、彼の言葉を聞いた私はハッとして彼の顔を見る。
「目をつぶって、私の視界が見えるんじゃない?」
私がいうと、彼もすぐに目をつぶる。
そして、すぐに目を開くと、口を半開きにして苦笑いした。
「合ってる・・・何なんだ?気づいたら俺らもあいつ等の仲間入りか?」
「さぁ・・・案外そうかもよ?実はおかしかったのは私達の方で・・・正常だったのは彼らだと」
「たまったもんじゃねぇな」
そんなことを言っているうちに、私の部屋まで来た。
家に立ち込める煙草の臭いから察するに、やはり生存者の誰かがいたようだ。
そして、その誰かさんは私のケースを見ている。
私は、ケースを開けて弾薬類を見たが、取られているということはなかった。
津波前も、駐在警官の拳銃とは別種のライフルみたいな銃声が鳴っていたが・・・あいにく弾薬は違うらしい。
だからどうしたということだが・・・
私は浩司をベッドに座らせて、自分は椅子に座って空になった弾倉に弾を込めていく。
ついでに、何発かポケットに弾を入れた。
そろそろ、外部に連絡を取らねば・・・
弾はあと2日持ちそうだが・・・その前に私達が飢えで死にそうだ。
この状況だから、空腹も感じられないが・・・きっと飢えに苦しむ時が来るだろう。
「先生たちと合流したら、外部に連絡を取らないと・・・といっても、電話もダメで道は繋がっていないんじゃどうしようもないけど」
私はそうつぶやきながら、弾を込め終えた弾倉をM1とハイパワーに入れた。
「どうなってるんだろうな・・・何なら先生方の他に生きてる奴はいないのかよ・・・?」
「どこかでなってた銃声の主が生きてるといいんだけど・・・流石の私も囲まれたら無理だから」
私はそう言って、M1のコックレバーを引いた。
カシャン!という音とともに、初弾が薬室に送り込まれる。
その瞬間、メイン通りの方から銃声が鳴り響いた。
「まだ向こうは人が多いのね・・・迂回しましょう、一回トンネルの方まで出て・・・そこから公民館に」




