初日19:22:34/日向漁港/北原直人
「畜生が!」
俺は思いっきり力を込めて鉄パイプを振り下ろす。
何度倒れても這い上がってきた化け物は、ようやく地に伏せた。
どうせ一時的なものだろうが・・・チョロチョロと蠢きながら動かれても困る。
息をあげながら、俺は漁港の・・海の向こうを見た。
真っ赤な空の下。真っ赤な水がずっと続いている。
波にも揺れないその水は、空の様子を明確に反映していた。
覗き込むと、俺の影が映し出される。
鏡のような水面は、ハッキリと「俺が化け物になった姿」を映し出した。
「趣味が悪いな」
そういって道端の石を蹴飛ばす。
揺れなかった水面に、小さな波が出来た。
行く当てもなく、ただただ逃げるように来た漁港。
さっきまでいた場所の方から化け物の蠢き声が、風に乗って聞こえてくる事を考えると、ちょうど奴らと入れ違いになったのか、ここ一帯には化け物の数が少なかった。
丁度、さっき倒した奴のように、居ないわけではないが・・・
とにかく、一旦どこかへ隠れよう。
そう考えながら、漁港の道を歩いていると、背後から音が聞こえた。
一瞬で背筋が凍り付き、瞬きが出来なくなる。
振り返ると、倒したはずの化け物が、何か周囲の物を巻き込みながら再生している真っ最中だった。
俺はとりあえず、陸に上がっている船に飛び込んで、懐中電灯を消して様子を見守る。
何時かの駐在警官のような、人間の形をしていない化け物が出来る様子を見てしまった。
起き上がりながら、周囲の砂から草まで何から何まで巻き込んでいく。
近場にあった、死んで腐った魚まで取り込んで出来上がったのは、元の中肉中背の中年男の歩く死体から・・・体つきが1回りほど大きくなり、体の所々を砂利と草で覆った化け物だった。
2足歩行こそすれど・・・バランスが悪いのか、フラッフラだ。
俺はその様子を見終わると、そっと離れていく。
漁港から、少し戻るとトンネルがある。
幸い、今は周辺にあいつ以外の化け物は存在しない。
俺は道路の端を、腰を低く小走りで駆け抜けると・・・トンネルの入り口までたどり着いた。




