初日17:06:35/日向町公民館/高橋美奈子
「先生、誰も来ないね」
バリケードを作ってどれくらい経っただろうか?
人間不思議なもので、緊急事態になれば食欲も何も感じない。
私は、横に座っている恵美ちゃんの言葉で薄っすら夢の世界に入りかけていた意識を元に戻した。
「そうね・・・千尋ちゃん。大丈夫なのかしら」
私は彼女の手を握ったまま呟くように言う。
最後に会った教え子の名を出すと、横にいた恵美ちゃんの握る手が少しだけ強まった。
「あのお姉ちゃん。どこか怖い」
「え?」
「笑わないし・・・怖い目をしてるから」
私は、そう言った恵美ちゃんの顔を見つめた。
確かに、あの子が来た当初は・・・無表情で喋り方もどこかロボットみたいで、不気味なのは認めよう。
だけども、徐々にそんな一面が丸くなっているし・・・何よりも皆と上手くやれてる。
「あの子は大丈夫よ・・・最初は・・・ちょっと緊張していただけ・・・」
私はそっと彼女の手を離すと、頭を撫でた。
「きっと、帰ってきたら恵美ちゃんも助けてくれるはず」
「・・・・・・」
「!?」
外で何かが爆発するような音がした。
私は彼女を抱きしめて、辺りを・・・バリケードの方を見る。
爆発音というよりは、銃声。
さっき前田さんが近づいてきたときも、こんな音がしていた気がする。
私は暫く銃声が響くのを聞きながら、前田さんが来ることを期待していた。
だが、その銃声は止まない。
私と恵美は音が鳴り響くたびに身を寄せて体を震わせる。
「前田さん、じゃないの・・・?」
私の呟きもよそに、銃声は鳴りやまない。
「・・・先生、怖い・・・」
「・・・・・・」
リズミカルに、鳴り響く銃声が止む。
外は再び静寂に包まれた。




