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光の魔法使いクララ・パドヴァールの放浪記 喧騒のニライカナイ

 関係ないけど、いつかロブスターを食べてみたいです。

 アメリカにロブスターロールという、

 非常に羨ま……けしからんものがあるそうです。

 流石、アメリカ。カロリー暴力!

 「さあっ飲め飲め! 宴じゃ、宴じゃあっ!」

 白髪混じりの紅色の髪を持った女性が声を上げて音頭をとる。


 「「「おおっ〜!!」」」

 人が何百人も入りそうな大広間には、鱗を体に持つ者や下半身がヒレの女性が思うがままに楽しんでいる。

 私はそんな景色を少し上の部屋から眺める。

 料理に舌鼓みをうつもの、無礼講だからとからみ酒をするもの、腹芸と同じ括りなのか鱗を目に見えるペイントをしているものなど様々だ。


 「…………何故こうなった?」

 「あははは! 久しぶりのお祭りだからよ!」

 愉快そうにルルレアは鈴の音を響かせるような声で笑う。


 「ふむ、美味い」

 巻き貝のようなものを串で刺した豪快な料理を頬張る。口いっぱいに広がるのは海の香りと独特な誰の風味。


 「こっちも食べて!」

 ルルレアがヤドカリのようなものの姿焼きを持ってきた。


 「えぇ…………、これ食べられるの?」

 「うん、ここをこうやってぇ」

 そう言ってルルレアはヤドカリのやどを掴み、思いっきり引き抜く。腕も同じく。そして渡してきた。


 「こうハサミを思いっきり、ぐっと」

 「こう?」


 満面の笑みで頷く彼女を尻目に、一口齧り付く。塩見が効いていて、すぐ二口めを求めてしまう美味しさだ。



 「あらあら、楽しんでるようね」

 先ほど音頭をとった女性が話しかけてきた。


 「貴女は?」

 そう訊くと、ルルレアの顔を胸元でがっちりホールドしながら、


 「私は乙姫のレイリアよ。うちの子がお世話になったそうね。綿津見様から聞いてるわ、全く雷帝も酷いもんよね。わざわざ気絶させて、ここまで流すだなんて」

 これ知ってる。『近所さんの話は長い』で書かれてた。何でも、女性は熟すと話を延々とするらしい。

 何故女性を果実で喩えるか分からないけど、暫くは話を聞いていた方が良い気がする。


 …………キテージだと、よく近所のおばちゃんが私に話しかけてくれた。

 大図書館に毎度のように来る私に興味を持って話しかけて、質問に答えてくれる優しい人だった。

 偶にその人の家に行くことがあったが、小さくても立派な庭園で驚いた。何でも植物の研究が主で、図書館の資料から様々な知識を元に品種改良したそうだ。

 なお、花を摘もうとしたり、踏みつけようものなら、植物がひたすらにビンタを往復でする絵面が見れる。稀に相手の研究道具を持っていってしまうものもいるので、途中から色んな人が苗をもとめていた。

 …………研究者が研究でもないのにわざわざ水遣りに気づくような存在ではない為、丁重に断られてたが。

 あの人は元気してるかなぁ。


 「それでねぇ、…………あら」

 首振り機械と化していた私はレイリアさんの様子が変わったので、何だろうと疑問に思った。


 胸元を見ると、しっかり首がホールドされているルルレアが力なく腕を枝垂れさせていた。


 (…………こうして、奇しくもルルレアはその人生という名の旅を終えたのでした…………)

 何処かの台詞を引用しながら、不慮の事故で消えてしまった彼女に祈りを捧げた。



 「………………これ以上何もないと良いなぁ」

 後ろの女騎士がため息混じりに、そう呟くのだった。














*****


 宴は終わり、酔い潰れた者たちに布を被せてゆく。

 「さて、こっちは終わったよ!」

 「ありがとう手伝ってくれて、もう休んでて」

 ルルレアは宙を泳ぎながら、上にいる海族に布を被せている。



 「凄いな、外からの水を防ぐ魔法。これどれだけ負荷がかかるんだろう」

 外を見ながら、この不思議空間に感嘆の念を抱く。

 通常、魔法は一瞬だけ発動させる。理由は簡単で、体の負荷を出来るだけ抑える為だ。

 魔法は長時間、もしくは短時間で連続して使うと体が比喩抜きでバキバキになる。やり過ぎると、下手したら死ぬくらいに。


 だから、キテージの魔法使いは体が丈夫だ。ずんぐりむっくりな人もそれなりにいる。

 無論、私は………………そんな筋肉はない。鍛えてるのに、腹筋が全然ない。ある錬金術師が著した通りのレシピで薬品を作ってみたのだが、ただ苦いだけだった。


 因みに、ジジイは凄く体格が良い。間違いなく、現在最強の魔法使いだろう。秘訣を訊くと、『自然とガタイは良くなる』と言われた。本当かなぁ。


 「誰がこれを維持してるんだろう?」

 「おっ、いたいた。ちょっとこっち来ておくれ」

 レイリアさんが私を呼んでいたので、そちらに足を運ぶ。


 「クララちゃん。ここを発ったら、次はどこに行くんだい?」

 そんなことを唐突聞かれても、やっと頭の整理をつけた頃合いだ。…………それに行き先に当てもない。


 「特にないです。でも、回れるところは取り敢えず回りたいですね」

 その言葉にレイリアはうんうんと頷く。


 「気ままな旅、いいね。うちの娘を預けたくなった」

 「へぇ?」

 ガシッと肩を掴み、そのルルレアに似た顔立ちを近づけてきた。


 「あの子にはこの世界は狭いと思ってたんだよ。リコリコのやつは閉じ込めるだけだしね」

 「はっ、へぇっ?」

 リコリコって誰?! 話の内容にまた頭がパンクしそう。


 「雷帝の旅に同行させた方があの子の為になるし、クララちゃんにも悪い話じゃないだろ? 海族の気性を持った明るい子だから、頼んだわよ」

 「……あ、ぇ……、………はい」

 圧に屈してしまった。やはり母はどこに行っても強しということらしい。

 お母さん、元気かなぁ、と現実逃避を少ししてしまった自分は悪くない。

 去ってゆくレイリアの背中を見つめながら、そう思った。

 次回には、

 ルルレアが最初に岩場で挟まった理由と、

 宙を泳いでた理由を書きます。


 変な設定のお陰で、基本ムキムキになった魔法使い。

 クララはそこまで鍛えなくても、体質的に問題ないので、

 キテージの中で魔法戦闘は強い。

 キテージの魔法使いは常にどんぱちやってるので、

 色んな仕込みをしてるのです。……魔法陣とかね。

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