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光の魔法使いクララ・パドヴァールの放浪記 決闘プルミエール

 何か癖が強くないキャラってなんだろう? (哲学)

 「ふわぁ、眠い」

 欠伸が漏れて、瞼が重い。絶妙な光源が、安らかな印象を与えて、私を眠りに誘うのだ。

 服を脱ぎ、キテージではない大きさの浴場に入る。キテージだと、勝手に拡張できないよう頑丈な素材が使われていた。上は空いてたけど。


 ここはニライカナイの中心地、竜宮城。乙姫の居城というが、実際来てみれば乙姫が女将の宿という印象を受けた。


 (陸地から少しの嗜好品を輸入してるって、レイリアさんが言ってたなぁ)

 話半分でも、興味深いと思ったら内容だけは逃さない、それがキテージで培われた私の聴覚だ。


 それにしても、今日は疲れた。魔法陣なんて碌に使わないからな。【クラッカーボム】より、圧力を真っ向から抵抗する【レジスト】は燃費悪いし。


 魔法陣は詠唱が無い代わりに、その陣に『力』が流れることで発動する。持続時間も、『力』を注げばそれだけ保たれる。


 ウツボが口を開いたような装飾をされている壺からお湯を掬い、体にかける。


 (あの水を防ぐ魔法は間違いなく、魔法陣型。そしてそれを仕掛けたのは、普通に考えて『雷帝』)

 いつの時代か分からないが、この程度ならどの世代でも出来たと思う。…………ただ、これを発動してるのは誰だろう?

 体を鍛えている人なら、コツを掴むことさえ出来れば、長時間発動できる。大人数なら負担を減らせる。でも、…………気質的に、海族の人には向いてない。

 しかし、乙姫が命令したなら?


 「まあ、だから何って感じなのだけど」

 思考を中断したくなるほど、起きてるのが辛い。体もくたくたなのが余計後押しするのだろう。


 何かもうよく分からない泡立つのを使い、体を洗う。そういえば、何処ぞの錬金術師がこの容器を開発したそうだ。本当に何でもありだな、私も錬金術を学ぼうかと思案していると。


 「おお〜、一番乗りは取られちゃった!」

 ルルレアが宙を泳ぎながら、こちらに降りてくる。

 「何? 私もうお湯に浸かりたい」

 そういうと、彼女は残念そうに、


 「背中流し、やりたくない?」

 「やらん、私はもうお湯に浸かった。まだ出たくない」

 「実はここ、露天があってね」

 「何それ、詳しく!」

 露天! キテージだと、必然的に露天というか結局乱闘が起こってしまう。たから、屋根が自然と無い。でも、北の大地はいつだって寒い。幾ら魔法で暖を取れても、そうではないのだ。そもそもそうしたら心も体も休まらない。


 「あそこから外にあって、イカスミお冷、ゲソの湯とか…………」

 何故、そのチョイスなのか。ゲソの湯って何かあまり字面が良くない。あと、イカスミお冷とは?


 「蛸壺のサウナもあるよ、その後イカスミお冷に入ると『整う』とか、何とかってお母様が言ってた。肌ももちもちするらしいよ」

 何でも上級者の技らしい。碌に露天を経験してない私にはまだ早い話だ。



 「ところで、何で浮いてるの?」

 さっきのことがどうでも良いと思えるほどの疑問だ。魔法の領分を超えている。人を浮かせ続けるなど、負担が大きすぎる。それも、祭りを見る限り全員がその影響を受けているのか?


 「んー、お母様がやってるんじゃない? 詳しく知らない。あっ、でも…………もし私の背中を流してくれるなら?」

 「分かったわ!」

 ひょいひょいっと風呂から出て、ルルレアの背中を流す。………………何故か、凄く視線を感じるのだが、気のせいだろうか?


 「この魔法は時々くるお客様用の魔法かな。私も久しぶりで、外に出てたから準備途中だと水が抜けちゃうの忘れてたよ」

 滅多に使わないということは、コストは良いとは言えない。そして、水が一時的に抜かれる。これは恐らく、私がここで呼吸できてることにも関係している。


 「……『魔法』以外、『錬金術』は最近過ぎる。あとは、『呪術』? 聞き齧った程度だから分からないけど、確か『魔法』とは違うもの」

 口に出しながら、現状での推論を述べてゆく。


 『呪術』と『魔法』は違う。起こす現象も、『力』をそのまま使うのが魔法だとするのなら、呪術は『相手』に流すものらしい。『西方域冒険譚アナクロ・レガシー 外伝〜薔薇と鷹〜』で紹介されていた。作者は伝説の探究家・ノア。彼の著した作品なら信憑性は高いと思う。

 「私だけに干渉してる? 範囲を視覚化し、境界をはっきり見せるための境界を見せる。確かにそっちの方が楽か」

 結論が出て満足した。なお、その手は終始止まっていたが。














*****


 「…………」

 決して羨ましいとか、私も混ざりたいとかではないことをここに明記させていただく。ルルレア様はその天から与えられたかのような天上の美を体現した肢体を余すことなく晒し、友人のクララさんと入浴している。

 覗きではない。これは、私にとっての任務だ。個人的な残業なので、手当は出ないが。

 しかし、私にとってルルレア様を眺めることはどんなことより大事だ。故に、中からあの特徴的な髪を見つけたときにすぐさま駆けつけた。


 きっと、今の光景は私へのご褒美だ。


 「リコリコ? それって、クララちゃんが会った騎士の名前だよ」

 我が主人が私のことを言ってくれてる!

 「あぁ、あの人。…………リコリコさんって厳しい人なの?」

 何を言っているのか、私はいつだって次期乙姫様を敬っている。厳しくするなんてことはない。


 「……そうね、私より周囲に対してになるけど、鬼って言われてる」

 よし! それルルレア様に言ったヤツ、後で〆よう。

 でも、今は用事がある。運が良かったな。


 「かっこいいと思ってたけど、うーん。まあ、悪い人ではないんだよね?」

 「悪い、悪くない…………というより、ただひたすらにストイックなんだよ。それを他者にも求めるだけで…………お陰で、私のところに居た護衛がいつも泳ぎ込みをしてる」

 体力がなってないのですよ、彼ら。私の本気についてこれないし、その程度で護衛など片腹痛い。

 あと、ルルレア様を逃した罪で泳ぎ込みをいつもの二倍にしましたが、累乗でもよろしいでしょうか?


 「しかも、外に出してくれないし。何か私の質問をわざわざ深読みまでするし、もう少し気を抜いてもいいと思うのよ」

 ルルレア様! しかし、私は元々外部の身。一歩先を慎重に渡る癖は生まれた時から身につけさせられました。それもこれも、ルルレア様に捧げるためと思えば、この程度は!


 「へぇ、良いじゃない。大切にしてくれる人が居て」

 えへへ、照れますね。クララさんも一緒に振り回されるのはどうでしょう? いつかは同志と呼べるかもしれませんし。


 「うん。でも、今はクララちゃんが一番大事かな」

 はぁっ! 私の頭に何かがピリッときました。えぇ、まさに天に至らんとする塔が雷に打たれて崩れたように。えぇピリッとね。


 「よし、クララ! 私、リコリコは貴女に決闘を申し込む! ルルレア様を奪いたくば、私を倒してからにするが良い!!」

 手袋を投げつけたい気分だったが、勿論お風呂なので服を着ていない。

 私は隠れるのをやめて、堂々と二人のいる浴槽に入った。二人は非常に喫驚していた。













*****


 ベットをみれば、可愛いという印象を受ける。しかし、上品さとそこに飾られた装飾の美しさがあり、品格が下がることなく、調和が取れている。

 珊瑚のような照明を垂れ下がった紐を引いて消し、ベットにもぐる。


 色々あった一日だったけど、ここでゆっくり出来るならまあ、悪くはなかったかな。


 何か、誤解されるような面倒ごとが待ち受けてるけど、いい機会か。

 キテージでは、本職の騎士はいない。魔法使いオンリーだ。だから、どう転んでも良い経験になる。


 …………、何で構図がお姫様を取り戻そうとする騎士対魔法使いなんだろう。魔法使いが明らかに悪役なんだけど…………


 肌触りが良く、体を包み込むようなベットはそんな意志を意に返さず、私を微睡みに沈ませる。

 何か、ルルレア絡みの問題は演劇か? という収束を見せる。


 というか、ルルレアの性格の形成は殆どリコリコのせいなのでは?

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