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光の魔法使いクララ・パドヴァールの放浪記 好奇心は少女を貶める

 魔法の説明回、これを書きたかった!

 「なっ、何よ。言ってみなさい!」

 銀髪の変人少女の声色から動揺しているのが分かる。


 「魔法教えて」

 「も、勿論ものによるけど…………、はっ?!」

 「だから、魔法教えてよ」

 固まった顔のまま、首がギギギっと音を立てるように向いた。


 「本当に?」

 「…………えっ?」

 「…………本当に魔法を教えて欲しいの?」

 何だろう? 雰囲気が変わった?


 「……………あは、あっはっは!」

 そしていきなり笑い始めた。

 何か気に触るようなことだっただろうか、ぱさりと銀の前髪に隠れて表情が見えない。


 「ぇ、えっと……その……大丈夫?」

 「あはは! いいわ、そのぐらい教えてあげる」

 腰に手を当てて、ドヤ顔でこちらを射抜く。海底にある白い砂のように美しかった肌が、今では桜色に色づいている。


 「……本当に? さっきまで可笑しかったけど大丈夫?」

 「ええ、本当に可笑しかっただけだから」

 豹変ぶりに少し恐ろしさを感じつつ、樽の近くに寄る。


 「そう、あの事は約束通り忘れるから早速教えてね」

 「…………うん、ありがとう」

 少女は顔をゆでだこのようにまた赤らめていた。


 「さて、問題。魔法とは?」

 「火とか、水とかを世界の力を借りて生み出すとか、あと自分の中にもそれと同じ種類の力が蓄えられているとか、そのぐらい?」

 聞き齧った事や、想像で答えを返す。


 「合ってる。けど、魔法を使う為に必要なもの、あと魔法を使うと身体がどうなるのか、そこも重要かな。甘めに採点して二十点」

 「初心者に手厳しい、もしかして意地悪?」

 少し不満を口にしてしまう評価だ。もうちょっと高めにしてくれてもいいじゃない。


 「初心者? ……そう、海族には普及してないのか」

 口に手を当て、思案の表情になる少女。


 「…………今はいいか。それで手厳しいと言うけど、これは加算式だからポイントを知らないといけない。それに魔法学園でも日々最高得点を如何にして更新するか議論になるほどの名問、それで五十点もとられたならその人はうちに来るべきね」

 「むぅ、分かった。それで魔法を使うのに必要なものって何?」

 不承不承で納得して、気になった事を質問する。


 「魔法に必要なもの。それはその現象を指し示すものよ」

 「その現象を指し示す?」

 どう言う事なのだろうか? よく聞く詠唱や、魔法陣じゃなくて?


 「魔術学校なら簡単に詠唱と魔法陣が主流だとか言うけど、実際のところその詠唱が何を示しているのか、魔法陣の模様の意味が魔法と深く関わっているの」

 「へぇー」


 「基本は定型呪文が多いけど、その定型の言葉にどんな意味が宿っているのか。そこを深掘りすることが深淵に私たちを導いてくれる」

 「言葉の意味が重要なんだね」

 詠唱という文を分解すると出てくる文節。そして、おそらく単語に至るまでこだわって作られるのが呪文なんだろう。


 「さて、前置きはこのぐらいにして魔法を発動してみよう」

 「あれ? いきなり使えるようになるの?」

 もっと説明があって、安全のことで口酸っぱく言われるものだと…………


 「魔法自体は簡単な構造だから、呪文を唱えればすぐに使えるよ」

 「本当に大丈夫なの?」

 「別に簡単なものを使う分には危険はないさ。あっても私が対処するし」

 そう言って彼女は紙に詠唱を書き、渡してくれた。


 「さっ、早く始めようか」

 これが私の初めての魔法。胸がドキドキする。


 「うん、はぁっ…………」

 口から酸素を吸い、一節を口ずさむ。


 「導く灯りを今一度【アクトライト】」

 ぽわっと光が虚空に浮かび、成功したことに心が躍る。


 しかし、

 「……あれっ?」

 ふらっと世界が揺れたかと思うと、視界は暗闇に落ちた。








*****


 「………………んむ?」

 頭が痛い。何故だろう? 魔法を使ったから?

 疑問の声に答えられず、ひとまず私は重たい瞼をうっすらと開ける。


 「ふむふむ、ここはこうで、へぇーそうなんだ」

 銀髪の少女が何事かを呟きながら背を見せている。


 「……ねえ、私はどうなったの?」

 そう彼女に訊くと、彼女はピクリと反応した。


 「あれ? 何で私仰向けに寝てるの?」

 部屋の中でも、偶に寝ぼけてユニークな格好で水中を漂ってしまうのに。


 ヒューと生暖かい空気が頬を撫でる。風か、という事は…………

 下を見ようとしてはたと気づく。私の身体には私のサイズというには窮屈そうな服がかけられていた。


 そしてそれを取り払い、自分の体を見ると…………一糸纏わぬ肢体があった。


 「…………もしかして……」

 はらりと私の胸元に付けていた寝衣が彼女の足元に落ちた。


 「…………ぐすっ、私傷物にされちゃったのね、名も知らぬ相手に…………」

 きゅっと体を腕で隠しながら、よよよと啜り泣く。


 「なっ、なっ、な、ちち、違うからぁっ!」

 目は手で覆われてないところからチラッと見ると、彼女はまた赤くなっていた。そろそろ頭が茹で上がりそう。


 「…………責任、とってよね」

 少し可笑しくて、欲望に素直なこの変な少女は面白い。ついつい揶揄いたくなってしまうのだから。


 「せっ、責任?! 何それ、ゑぇぇぇ!?!?」

 あたふたしながら、戸惑いながら、涙目もしている忙しい彼女に微笑み、手で口を隠した。

 取り敢えず、次回には互いに名前を知ってもらおうか!

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