光の魔法使いクララ・パドヴァールの放浪記 完全漂流者
パンドラの箱が開きます
樽少女漂流中……
ガタ、ガタガタ。海の上で樽が大きく揺れる。
パカッと、樽の蓋が開くとそこには銀髪蒼眼の美少女が現れる。
「あのジジイ、やりやがった……」
クララが辺りを見回しても、海、海、海で陸地の見えない完全なる漂流者に転職していた。
カサっとポケットから音がして、取り出すと手紙が入っていた。
『次期雷帝には見聞を広めてもらおうと思い、目にも入れても痛くない孫を泣く泣く海に放した。遅くても良いから、世界一周ぐらいはしなさい。
by雷帝』
クシャと丸めて捨てようと思ったところで、
「あれ? もしかして私無一文?」
体の何処を触っても、ついでに暑くなって下着姿になっても、これといってめぼしいものはなかった。
強いて言うなら、体が資本だけど…………
「まあ、誰もいるわけない」
こんなにも素晴らしい大海原は何者も遮ることがないのだから。
「…………にしても、暑い」
さっきから日差しが強くて、早く樽に戻りたい。しかし、樽に戻っても何も出来ないし……
魔法で水を生成して飲むが、一時凌ぎがやっと。こんなこと初めてだ。初めての経験。
まず魔法を作るとして、どんな言葉で繋ぐのが良いか。
「凍てつく風に流れる浮浪、【フロストウィンド】」
ヒュオーと風が吹き、体の火照りを抑えてくれる。それどころかそれを超えて、身体が震える。
「と、とと、とまれれ、れ」
本来なら口で言わずともとまる風を、無理矢理呪文で止める。
数十分後、
「やっぱり暑いよぉー」
器用に仰向けに陽を浴びる。しかし、その白磁器のように白い肌はその美しさを全く損なわない。
しかし、側に見る目がないとはいえ、やっていることは下着姿で日光浴をする変質者。
「取り敢えず氷を作ろう」
もはや、何回失敗してもこの暑さよりはマシだと思い、再度作業に移る。
「浮び上がれ水泡、凍てつきその身を固く閉ざせ【バブルフロスト】」
海から浮かび上がる無数の泡が集まり、一つの氷を形成する。
「うひゃぁ! 冷たい、冷たいよぉ」
歓喜しながら氷を服で挟みながら抱きしめているまごうことなき変質者の姿であった。
数分後
「…………さて、冷静になったし、涼しい風でも生み出すか」
流石に無様な姿に羞恥心もあったが、これはしょうがないことだと思い魔法を生成する呪文を考える。
「凍てつけはダメだったから。…………涼やかな風よ、流麗に踊る風よ、穏やかなる気丈そのままに私を包め【カームヴェール】」
微風ではあるが、涼しくかつ温度変化にも多少対応した魔法。これなら論文も出せるかもしれないと思ってしまうほどの自信作になった。
「ふふっ! 勝った、勝ったわ、この世界に!」
「へぇー、世界に勝つなんて凄いね」
「ええ、これでジジイの魔法を………………」
クララの目の前にもう一人美少女が現れた。真紅のように深い赤髪に神秘さを感じるエメラルドの瞳。
そして何より注目を引くのが、
「貝、だとっ!」
貝である、下着の代わりのように貝が胸を支えている。
「えぇ、普通触れるならこっちじゃないの?」
そう言って、謎の美少女? は人なら耳になる位置を指す。
「エラね、…………それより貝!」
クララの興味は完全にその貝に注がれている。
(下着か、抜かった! 本には海族の生態とか書かれていたのに、そんなこと書かれていなかった。そうよね、見なければ分からないこともある)
完全に下着のことしか頭にない全身下着の女性の図である。
(貝の種類は? 使い心地はどうだろう、分解してみたい)
若くても、完全に魔法使い脳に染まった少女は目の前のことに夢中で、必死で身振り手振りする人魚のことに気が付かない。
書いてゆくと、こんなキャラが生まれてしまった。
性格よりまず奇行に走るとは……




