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光の魔法使いクララ・パドヴァールの放浪記 プロローグ

 早速書いてみた。魔法を書きたかったんだ……

 「クララ・パドヴァール、貴様を次期雷帝に認定する!」

 いかにもな感じの白い髭を蓄えたジジイがそんな事を言ってきた。


 「嫌だ! 私は部屋に引きこもって、研究するんだぁっ!」

 相手がボケていても、ハッキリ、分かりやすく返す。こんな事なら、わざわざ中庭に来なければよかった。


 「儂も歳での、そろそろ世代交代の時期じゃから、ちょうど…………。こほん、いや儂より相応しいお前にゆくゆくは継いでもらいたい」

 丁度良いからって言おうと思っただろクソジジイ。


 「はっ、ジジイなら後数十年は余裕でしょ」

 「うむ」

 認めたぞ、このボケ老人…………

 やはり歳なのか? 大丈夫だろうか?


 「じゃが、お主が一番雷帝に近い。それは自覚してるじゃろ」

 雷帝:魔術学園都市・キテージの事実上のトップ。

 その身に有り余る程の叡智と膨大な研鑽によって生み出された魔法を持つ。

 又、古の誓約に縛られた存在であり、人前に顔を出す事はあまりない。


 これが概要そとづらで内情は…………

 「年中、部屋に引き篭もっている分際で何を言ってる?」


 ただの魔法バカで、研究バカである。というか、ここに来ている時点で殆どが私たちのような同類である。


 「…………だって、もっと儂だって研究したいんだもん」

 だもんって言っても可愛くない。目がギラギラしてるし。


 「なら余計嫌だよ。雷帝なんてものに縛られるぐらいならここから逃げるぞ、私は」

 「そう思えるのなら、やって見るがいい!」

 パチパチと電流が空中を流れ、ジジイが戦闘モードに入る。


 「…………【クラッカーボム】」

 私の十八番にして、特に時差なく放てる護身用魔法を呟く。

 瞬間、閃光と爆音が部屋を包み込む。


 (ちっ、最初から対策していたなっ!)

 黒いグラスの老眼鏡と耳栓を付けている。


 「「「まぁ〜てぇ〜」」」

 いつの間にか同僚たちが背後から迫ってきていた。

 「お前らまで、何故だ!」


 「もし雷帝になりたくなければ加われと」

 「面白そうだから混ざろうと」

 「ここなら本気出しても問題ないだろ」

 あぁ、最初の奴以外はいつも通りだと感じつつ、詠唱を始める。距離は数メートル、なら間に合う。


 「光の真名はここに示される。数多の伝承、その原点。全てを照らし、全てを薙ぎ払うは虚構! 【クラウ・ソラス】」

 掌から極彩色の巨光が眩く輝き、同僚を飲み込む。


 「頭が痛い!」

 「あれぇ、真理の扉が開けそう。…………うぷっ」

 「あふぶ、ぶぶべら」

 相手を錯乱状態に結果的にする魔法。正確には、情報量の過多による脳の処理を増やさせて錯乱状態にしてるだけだ。


 「……我が大罪、我が業の名は暴食。知に飢え、数多貪ろうと足らぬ、足りぬ」

 雷帝の詠唱、その身が司る大罪と智慧から引き出される魔法の頂き。


 「その罪、その痛みを持ってしても我が道を留めるにあたわず」

 どうする、どうやってもこれをなんとかしないと面倒ごとに巻き込まれる。相手は雷帝、腐ってもこの世界の頂点。そして、その呪文は…………


 「神を嘆かせ、討ち取らんとする者。最大の罪、最大の苦しみを持って高みに至れるなら我が身捧げることも厭わない」

 幾星霜を懸けて、最高の呪文に到達せんとする意思を込めた積層魔法。止めるなら詠唱中を狙えば何とか止めることもできるかもしれない。

 しかし、今は後のことより此の時が勝る!


 「深淵の探究者は深く深く虚無の理に沈む。暗闇の淵で、巨光の彼方で定める条約は永劫の乖離。私は汝を理解せず、汝は私を理解しない」

 二つは共存しても、理が交わることはない。


 「偏在せよ、変幻せよ。其方たちは此処に在る」

 其れは何処にでもあって、何処にもない。

 しかし、今は私の手のひらに。


 「【アヴェスター】」

 数瞬、私の方が先に魔法が完成する。

 しかし、


 「【カタストロフィ】」

 黒と白が破局にぶつかって、数秒の均衡の後、消失した。

 勿論、その直線上にいた私も…………












*****



 「ふぅ、流石に老体には堪えるわい」

 人が丸々入りそうな樽を海まで持って来た雷帝は腰を叩きながら、心底疲れたように呟く。


 「ほれ」

 ポチャンと樽が海に落ち、流れてゆく。


 「寂しくなるのぉ」

 「そう思うなら、お孫さんをまだ手元に置いとけば良いじゃないですか」

 それを言ったのは、先程クララの魔法で唯一頭を痛めるだけで済んだ男。


 「可愛い子には旅させよ、というじゃろ」

 「あれは…………旅なんでしょうか?」

 数少ない常識人の声は雷帝に届く事はなかった。



 数秒後、常識人は振り返り、

 「…………、まあ彼女なら鼻唄混じりに帰って来ますね」

 最年少で教授。あの土地で権力を持てるまでに育ってしまった少女にはもっと世界を見た方が良いと思い、その場を後にする。


 結局苦労するのは常識人という定めを開き直り、暴れたりなかった都市の住人をしばき倒すのは少し後の話。

 世の魔法使いの大半がとにかく刹那を楽しむ主義。

 魔法の裏設定は後ほど。

 魔術学園都市キテージは

 どの国にも囚われないヤバい場所の一つ。

 あと、二つぐらいヤバい国はあると思っていいと思う


 あと、クララはまだ、しんでいない! お楽しみに!

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