昔日の追蹤、まだ日は僕らを照らしていた
久々の投稿
闇に覆われてゆく世界を眺めながら、ほんの少しの心残りを。きっと、いつか再会するであろうあの人に思いを巡らす。
◇
「おい、さっさと動け!」
鞭は無情に僕の背中を叩く。強かに、相手に反抗の意欲を持たせないように。
ぐっ、と口を噛み締め、ただ痛みに耐える日々。希望なんてものは見当たらず、絶望こそが世界に存在している証明だと、ただ体に教え込まれる。色の無い世界。何故、僕たちは生まれてきたのだろう?
遥かに高い柵の向こうには果てしない大地が、地続きにあるはずなのに。僕たちはその隙間から羽ばたく鳥を眺めることしかできない。
ぱたり、と一人倒れた。其処に鞭が振り下ろされる。一回、二回。その度に体は浮くが、決して立ち上がる事はなかった。
「ちっ、こいつはもう駄目か。おい、其処のお前! コレを処分してこい、今すぐだ!」
僕が指を差され、その言葉を理解せずとも意味を受け取る。
ああ、またか。そんな諦観が全身を支配する。他の者はそんな様子を無視して、作業を続けている。
「聞いとらんかったのか!」
命令されてから直ぐに動かないと叩かれる。死にたくない、死にたくないけど…………こんな世界に生きる価値はあるのだろうか? もう、いっそのこと…………
そんな事を考えても、体は命令された事を忠実にこなす。今まで通り、死体が捨てられた穴に放り投げる。感動はなく、落ちた事を確認したら、また鞭を打たれて作業に戻る。そんな毎日、物心ついた時から身についた動作。
そんな日々はある日、唐突に砕かれた。
「一緒に来るかい? 私の名前は————」
彼は僕の日常にいきなり現れたかと思うと、顔を顰め、涙を流し、僕たちを救おうとしてくれた。
みんなはその救いに、救済を前に今までと違う、堰き止められたものが崩壊したように感情がとめどなく溢れていた。そして、地上に出てゆく彼ら、彼女らを見ながら、僕の足は一歩も動かなかった。
それは恐怖だ。未保障の未来は当時の僕には足をすくませるのに十分だった。何も分からぬ土地に行くぐらいなら、このまま死ぬまで横たわっていて構わないという気持ちさえ芽生えていた。
「どうした? 君はついて行かないのかい?」
先頭にいた彼がこちらに声をかけた。フードの奥から、優しげな瞳がこちらを見つめる。
「…………」
僕は後ろを指差した。其方では、早く外に出たいのであろう彼らがこちらを見ていた。
「…………ふむ、君の心配は最もだ。君のような子は稀だからね。だから、目立つ君を、彼らへの見せしめとしたのだろう。でも、その心配はいらない」
彼が今まで取り払わなかったフードが捲られると、僕と同じ色のはずなのに全く別物に見える白髪と、紅い目が露わになる。
「心配することはない。他とは明確に違う、曖昧な私たちでも世界は迎えてくれるよ。だから、一緒に行こう」
差し伸べられた手に自然と手が伸びた。
これが、あの人との出会い。
その後、貧困に喘ぐ民を救い、より良い未来を描くため、その手で幾多もの”救済”が行われた。
僕はあの人の背中を追い続けた。言葉を学び、あの人に躊躇っていたところが少しずつ抜けて、親子になった。義理であっても、あの人の自慢の子供になれるなら…………なんて恥ずかしい記憶も蘇る。
幾年もの歳月を経て、あの人は殺された。助けられた者の刃に、友の意志に。
僕は何も出来なかった、鎖に繋がれ、本当ならやるべきだった事を何も出来ず。
もはや、悔やんでも仕方がない。きっと、あの人には十年、二十年は会えない。もしかしたら、数千、数万の月日が経とうとも、会うことができないかもしれない。でも、また会ったら今度こそ。
まだ残っているかもしれないあの人へ、素敵な物語を送ろう。あんな理想を描かずとも、人々は幸福で、日々を一生懸命生きてるのだと。
「じゃあね、ミシェル」
今度は対等にあれる友として。
……うん、暫く投稿してなかった作者です。
最近、爆速的に時間が過ぎてゆく。やることが多い……。
育成素材集めないと……、はっ! いえ、あの。決して、遊んでたから投稿が遅れたとかではないですよ!
ただ続きを書こうと思っても、何処かの作者が眠い目を擦りながら書いたせいで、続きどうしようとか思ってるだけですから。釈明は一応、この辺で。活動報告に少し書くので、宜しければそちらを見ると、作者の杜撰さが分かるかも?




