光の魔法使いクララ・パドヴァール放浪記 暖炉のそばは暖かくて……
さあ、続きだ!
「んー、美味しい。タダ飯は美味いわ」
頼んだ串を噛み締めるように食べる少女。
「タダ飯って…………そんなに食べられないの?」
「心外、美味しいものはよく食べられるのよ」
口に残っていた分を飲み込み、肩をすくめる。しかし、串は持ったまま。
「そんなに食い意地が張ってるのに?」
「舶来の方には分からないわよ、下々の苦労わね」
刺々しい口調ではあるが、ハキハキとした物言いには嫌味を感じない。
「そうね、…………そもそもここに来たときから全てが新鮮に思えるわ」
空を見れば晴れ晴れとした晴天。人々は賑やかな往来をして、子供がその合間を縫い駆けて行く。
キテージには見れない景色だ。
「ふーん、舶来の方と話したことなかったから、この街がそんな風に映るのね。…………まあ、私も此処にはまだ慣れてないけど」
「そう言えば、名前は何って言うの?」
「アカツキ。まあ、これは姉さんが付けてくれた名前だけど」
その名前を気に入ってるようで、少し頬を綻ばせている。
「そう、気に入られてるのね」
夜明けを意味する名前にするだなんて、本当に気に入った子にしかつけない名前だと思う。
「ええ、暖かな居場所。…………私のことは置いといて、貴女の名前は?」
「私はクララ、このしがみついてるのがルルレア」
「私はユラです」
順に紹介していくと、ユラちゃんの名前を聞き目を瞬かせた。
「ユラ…………もしかして空屋敷のところの娘さん? 会えて嬉しいわ」
「そうですけど…………お父ちゃんの知り合いですか?」
予想外の好反応に戸惑うユラちゃん。数瞬、顔を俯かせて、自然な上目遣いでアカツキに訊いた。
「私じゃなくて、姉さんだけどね。あの人のお陰で、ここら辺はより一層過ごしやすくなったから」
「そう、何ですか?」
ユラちゃんが首を傾げると、バッとアカツキが両手を胸元に引き寄せて、
「ええ! 彼のお陰で真っ当な商売が成立するし、生活も断然良くなったと聞いているわ。お金が滞りがなくよく回るから貧しい暮らしからは脱却しやすいわね。…………女だから体を使えばそれなりに贅沢も出来るし、ほんとあの田舎よりマシだわ」
熱弁から始まり、熱量が上がってゆく中、きらきらした瞳に蠱惑的な光も加わり、火照った身体から熱を逃すかのように籠った息を吐き出している。
(体、使う。やっぱり、土木はどこに行っても必需品並みなのね)
正体も分からない妖術に想いを馳せて、二人のやり取りを聞き続ける。
「あっ、あの…………お父ちゃんが凄いのは分かりましたから、…………でも、そんなにここの暮らしは良いんですか?」
「そりゃもちろんっ! ただでさえ余所者で居心地悪いって言うのに、育てた恩を返せと恩着せがましいから文字通り体を売ったし…………ここだと、外との交易があるからか人当たりが良い人も多いのよ。基盤は元々あったんだろうけど、それでもこの雰囲気を作り出した貴女の父親は偉大だよ。…………まあ、年はもいかない私に言われるより、貴女に褒められた方が嬉しいだろうけどね、噂通りなら」
ふっ、と何か達観したような顔をしたかと思うと優しげな目でユラを見つめた。
「貴女を見ると、羨ましいよ。同年代の子が此処まで幸福に生きられる場所か、私も此処で生まれたのなら良かったのに」
幼さよりも培われた強かさのようなものを感じていた彼女の、少し溢れた本音。その顔は大人びたと言うより、疲れ果てたそれだろう。
「…………おおっと、本題を聞き忘れるところだった。本当はクララ、君たちについて聞きたかったんだ」
彼女は愉快そうに、口を歪ませた。
ふぅ、一日投稿の壁はそう破れない……
はい、本編の達観した少女アカツキさん
文字通りのことをして、食べ物となる場所を分け与えられた少女。彼女を拾った者は、彼女に名前を付けなかった。愛着なぞ必要なかったからだ……と、紹介です。
不幸な少女製造してるな、この作品。まあ、この世界で一番痛みや、苦しみを与えられたのは〇〇なんだけどね。




