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光の魔法使いクララ・パドヴァールの放浪記 宵待娘と愉快な二人+α

 一方その頃、

 横に置いてある串を一つ掴み、口に運ぶ。

 「うん、身の程を知った気分」

 そもそも前回欲張ったのがいけなかった。今回も、食べられるだけ食べようと思ってしまっていた。でも、ユラちゃんに止められた。


 「お姉さん…………甘いものは逃げないよ?」

 「…………いや、ユラちゃん。逃げるのよ、甘いものは。何でか分からないけど」

 あの光景は今でも忘れることが出来ない。珍しく妹がキテージに来た時、お土産で持ってきてくれたお菓子。洒落た感じの小さなお菓子、自慢げな妹とともに食べようとテーブルに広げた。

 初めから最後の一個まで何もなかった。しかし、最後の一個。奇数だったから、互いに譲れなかった。互いが手を、魔法を尽くして取りにいき、滑るような軌道でお菓子は動いていた。

 勿論、動きの向きを風や摩擦力の調整をして、その手に掴むために。オヤジやお母さんの元でも欠かさず努力していたのだろう妹と力量は互角。

 残る要素は運だけ、少なくとも魔法以外を知らない私はそう思っていた。ただ勝負は千日手ではなく、突然動き出した。

 計算していた動きをお菓子が逸脱したのだ。誤差でも曲がらない動きをして。その時、初めて妹に負けた。…………今でも、その時のことを思い出すのだが、あれは一体?


 「でも、そんなところ見たことないよ?」

 思考に耽ってた私を覗き込むユラちゃん。

 「この世は摩訶不思議、意外なものが沢山あるからね。…………もしかしたら、幽霊の仕業かもね」

 脅かすように声を低くすれば、

 「幽霊? そんなに怖くないよ」

 「あれ?」

 もう少し下の子じゃないと厳しかったか、うーんでも妹はユラちゃんぐらいの時は怖がってたような…………

 比べても仕方ないか。


 「ルルは幽霊信じる?」

 「…………」

 あまり反応がないルルレアに訊いても返事がない。

 「おーい、聞いてる?」

 「ふふっ、この歳になってね、恐るるわけがぁっ?!」

 背後に冷気を当てる魔法をかけるとガタガタと震え出し、こちらに抱きついてきた。


 「ごめん、ごめん。悪戯心が出ちゃって…………うん?」

 ルルレアは何も言わずに抱きついたまま顔を俯かせている。

 「ねえ、ルル? ルルレアさん?」

 数回肩を揺らすと、涙目になったルルレアが、


 「べ、別にぃ、怖くないんだからねっ!」

 「あははっ、でも涙が……」

 「ああっ、ああ、あぁぁっ!」

 「ふぐっぅ、ちょ、力、力抜いてぇ!」

 締め付ける力が強くなり、少し変な声が出た。


 「…………お姉さん、周りの迷惑だからそこまでに……」

 困った目でこちらを見るユラちゃん、そして騒ぎにこちらに集中する無数の目線。針の筵、気まずさで涙が出そう。


 「そうですよ、周りに迷惑です」

 そちらを見ると、昨日見た禿の少女がいた。


 「ごめっ、痛い痛い。ちょっと、ルルレア。今話の途中だから……」

 訴えても、聞こえてないのかさっきから腹をぐりぐりされている。…………まだお腹に余裕があって良かった、ってそうじゃなくて。

 しょうがない、何とかルルレアの腰に手を回して、よりこちらに引き寄せる。ルルレアの紅い髪が肩にかかるが気にしない。

 「よしよし、大丈夫。大丈夫だから」

 「うぅ……」

 あやすようにゆっくりとしたリズムで、ルルレアを揺らす。


 「…………ふぅ、みなさんご迷惑をおかけしました」

 そう言うと、大半の視線は別のところに移った。


 「ああ、君も。ごめんね」

 「別に私は良いです、今度同じ騒ぎをして迷惑をかけなければそれで」

 そう言って、彼女は私の隣に腰掛けた。


 「えっ? どうしたの?」

 あまりにも予想外のことに驚く。

 「でも、…………謝罪の意思があるのなら串一本奢って頂けると嬉しいですね」

 「別にいいけど、あっこっちに串三本!」

 店員の人に声をかけて、注文する。

 「ありがとうございます」

 その美しい容姿と相まって、笑顔の破壊力は抜群だ。

 さらさらと風に攫われる黒髪、狐色の尻尾を見ながらそう思った。

 顔よりも好奇心を優先して別のところを見ているクララ。


 ???「あっ、こんなところにありましたか。……この衣装、ルルレア様が強靭な精神を得て帰ってきてしまったら、怖がらせることもできませんね。……早着替えして、抱きつかれると言う算段はもう……うぅ、でも帰ってきたら思う存分抱きつけばいいですね」←浸食率 66%

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