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交差する、連鎖する、結びつくその時まで

 今までの文量だと、目的の話数までに終わらないと悟る。

 「あっ、お姉さんお帰り!」

 既に日は没したため、声の方を見れば薄暗いシルエットが元気に手を振っている。その腕と同じくらいに吊るされた洗濯物が風にはためく。


 「ただいま、ユラちゃん。洗濯物? 手伝おうか?」

 「いいの? ありがとう! 今は取り込み中だから、向こうのところにあるお姉さんたちのを手伝ってくれると嬉しいな」

 私たちを気遣ってか、ユラちゃんはそんなことを言ってくれる。

 (洗濯物なんて、特に気にしないんだけどな。洗濯は基本全員集めたものを水流を操って綺麗にするから気にしようがないんだけど…………ルルレアは違うかもしれないから、自分たちのを片付けるか)


 「そうね、じゃあ手伝わせてもらうわ」

 「うん!」


 *


 湯気立つお茶をさっきから震えを止めない少年の前に置く。カタッ、という小さい音だけでもピクッと反応する彼にクララの魔法を直撃させたら気絶するんだろうなどと考えてしまった。


 「さて、別に君は今から家に帰っても良いのだけど…………一晩ここで泊まるでござるか?」

 「ええっと、……その…………いきなり逮捕とかないですよね?」

 酷く怯えた表情でこちらを窺ってくる少年。


 「……少年、それはまるで拙者が強権を振り翳す横暴な役人だと言ってるようなものだよ」

 「すみませんっ!」

 少し真面目な口調で悪戯すると、思ったように反応してくれた。


 「冗談でござる、それよりも早く元の生活に戻ったほうが良いでござるよ」

 安堵したのか、少年はほっと息をつく。


 「そうですね、…………変な依頼なんか受けるんじゃなかったです」

 「そうでござるよ、少年。きっと君は騙されやすいタチでござろうから…………まあ、真面目そうだからお金について困ったら奉行所に来てみれば良いでござるよ」

 彼も不運だろう、だからと言って普通『二人を尾行しろ』と言われてするか? お金が貰えても、怪しさが全開じゃないか…………まあ、相手が悪いと思うけど。


 「何故ですか? 何故そこまで……」

 感激で涙を流しそうな少年を見ていると、その純真さが眩しく、かつ単純だなぁと思う。


 「別にうちの家に来てもいいんでござるが、どうせなら少年はもっと知り合いを増やした方が良さそうでござる。あと、お金云々はやっぱりウロさんがそういうことに力を入れてるみたいでござるからな」

 「ウロって、あのウロさんですか?! 刑部の?」

 「そうでござるよ、ちなみに拙者の育て親でござる」

 その言葉に目と口を大きく開き、閉じないままパクパクと動かしている。


 「あのっ、やっぱり空屋敷って噂通り使用人がいないって本当ですか?」

 「なはは…………噂になるほどか。まあ、それは本当でござるな」

 切り替わったかのように熱烈な視線をこちらに向けてくる少年の気迫に押されつつも、質問に答える。


 「じゃあ、中に…………」

 少年の熱量は冷めやらぬまま数時間続いた。最後は、肉体労働から解放されようとした白銀に全て押し付けて帰った。


 *


 「お兄ちゃんの嘘つき」

 「ユラ、悪かったでござるから許して」

 誠心誠意、心を込めた土下座を繰り出す。以前、土下座をしたときに誠意が足りないと言われたので一動作を丁寧かつ程よい速さで頭を下げるのが要だ。


 「むぅ、今度は早く帰ってきてね」

 「勿論でござる」

 なんだかんだで引き受けてくれる白銀先輩に感謝しつつ、これからも良い関係であることを保とうと思った。


 「ユラちゃん、具材は切り終わったよ」

 「じゃあ、次は…………」

 クララの声に素早く反応し、台所へと向かって行った妹に何とも言えない寂しさを感じる。

 やはり、歳の離れた兄より姉の方が懐くのだろうか?

 例え、いつか娘が父と一緒のことを嫌うように兄を嫌う日も来るのだろう。その時は刑部さんと夜まで飲み明かすのも悪くないかもしれない。


 そんなことを考えていると、懐から紙がはらりと落ちる。

 それは蛟の里の地図だ。蛟の里は入り組んでいる為、なかなか土地勘がないものには厳しい場所だ。


 (お礼と言われたら、断れないでござろう…………)

 今もあの純朴な少年の笑顔が頭をよぎる。


 *


 「それで、用意は出来るか?」

 「そりゃ、刑部さんの頼みとあらば」

 「今は違うって言ってんだろ。それは甥にやった」

 港近くの裏路地で会話する男二人。それはまるで秘密組織が陰謀を働くための密会のように思える。


 「それでも、俺らにとってはあんたが刑部だ」

 「はぁ、頑固者が。…………さて、次に行かなきゃな」

 「酒を一緒に飲む暇もないんですかい?」


 男は口の前で手を傾ける仕草をするが、

 「今日は娘が食事を作ってくれるんだ。わざわざ飯を楽しめなくなる真似するかよ。酒は次の時にな」

 背後に手を振り、この場から去ってゆく。

 陰謀、思惑が渦巻く街・黄昏。

 金のかけらたちはその輝きを守るために、

 同じ壺の中に飛び込む。


 次回、交差も連鎖も、全部コンボであって欲しかった……

 お楽しみに?!

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