光の魔法使いクララ・パドヴァールの放浪記 誤解と宿と
キテージ基準で考えてはいけない(戒め)
「私は無罪です!」
「うん、そうでござるな。あれは口実でござるから」
目の前にいるのは役人と名乗った黒装束に頭まで包んだ少年。明らかにこっちの方が怪しい人物だ。
「じゃあ、何で?」
「獣人の街であんな爆音を鳴らしたからでござる。あれは流石に面倒ごとになりそうだったので、ここまで来てもらったのでござるよ」
ぴょこぴょこと狐色の耳が頭の上で動いている。
そう、この常夜の国は獣人族の国だ。多種多様な特徴を持った獣人族は各派閥の長を中心にした政をしているらしい。キテージにいる何人かの知り合いから聞いた話だ。…………もしかして、獣人族にとって【クラッカーボム】は最強の手? キテージではそんなことはなかったと思うのだけど。
「少し、身の上を話して欲しいでござるよ。場合によっては、宿も提供するから」
すごい胡散臭いが、宿を提供してくれるならありがたいので、私は今までの経歴を話した。
「ははっ、何でござるかその大冒険。…………というか、キテージ出身って」
「そんなに、キテージって評判悪いの?」
今までの疑問だ。キテージを知ってる人はやれ建物を壊すな、やれ気ままに撃つなと非常識だと思われることがあったし。
「悪いというか、魔法使いが色々なところで魔法を使うからでござる。そんな傍迷惑な魔法使いが良い目で見られる訳ないでござろう。そもそも魔法は何処も一般的に許可されたもの以外使ってはならぬし」
「え? 街中で魔法を自由に打つ場所くらいあるでしょ?」
「む? 街中にそんな場所作れないでござるよ。周りに被害が出るかも知れぬからな」
あー、分かった。魔法発散勢のせいなのね。彼らはとにかく魔法を放ちたくて仕方ないから、そのせいで評判が悪いのか。
「なら、どこか広い土地を用意すると良いわよ。思いっきり魔法を使える場所を。もしくはキテージに来てもらうか」
「それしか解決方法はないのでござろうか…………それは後回しにして。貴殿はそこまで外れてなさそうなので、うちの刑部さんの家に泊めてもらえると思うでござるよ」
ほっ、と安堵の息を吐く。これで野宿を回避できるかもしれない。
*****
どん、と堂々とした玄関を持つ大きな屋敷に案内された。
「今帰ったでござるよぉ〜」
黒装束が大きな声を出すと、たったたと廊下を駆ける音がした。
「お兄ちゃん、お帰り」
「柚羅、今帰ったでござる。客人がいるから、今日は食事の用意を手伝って欲しい」
弾けるような笑みで出迎えた少女は黒装束に飛び込んだ。そして、こちらのことが視界に入ったようで、
「それで、後ろの人たちは…………お兄ちゃんが女の人を家に上げようとしてる! 大変だ、大変だ、父ちゃ〜んっ!」
屋敷中に響かんとするほどの大声が響き渡り、突き当たりから老齢の男性が現れる。
「おいおい、バカ息子。幾らなんでも早すぎるぞ、もう少し大人になってからだな」
「違う、見回りしてたら保護したので、ついでに宿を提供したのでござるよ」
「それを世間一般では下心があるとだな…………」
「何でそうなる、拙者が色目に全く靡かないことを…………」
賑やかな家族だなぁ、と思いながら蚊帳の外で聞きながら、
「はっ、クララちゃんは渡しませんよ!」
ルルレアも混ざって行くのを何とも言えない気持ちで見つめることしかできなかった。
ルルレアの暴走が激しくなる中、呼応する様に海の底では更に暴走する者が一人。まるで酸素を吸うように、彼女は主人の残したものを手掴み、補給した。←侵食率 10%
既に彼女はもう……
振り返るな、進め若人よ。
後ろのことは気にしなくて良い。本当に。




