光の魔法使いクララ・パドヴァールの放浪記 夜遊び、火遊び、危険な香り
寝過ごしたので、今頃投下。
大きな音が響き渡った大海原、既に常夜の国の海域へと足を踏み入れていた私たちは事情聴取をされていた。
「本当に、他国からの間者ではないんだな」
「ええ、私の出身はキテージですし。こっちの海族とともにニライカナイから来ました」
強面の男に圧っされながらも、目を逸らさず淡々と説明する。
「…………うむ、そうか。すまん、最近は何かと物騒な事件が多くてな」
「いえ、そちらも仕事でしょうし、気にしないで下さい」
そう丁寧に返すと、強面の男たちは取り調べ室から出て、私たちは一息付いた。
「ふう、完全に忘れてたわ。でも、この場で捕まって逆に良かったわね」
「うん、身分証明とか海族では考えられない文化だったから一度聞かれたときに頭が真っ白になっちゃった」
キテージは他の国土と隔つ線というのがはっきりしている。山と氷山が三方向を囲い込み、残った一方には延々と燃える炎と橋が架けられている。
ニライカナイは殆どの海を支配していると言っていい。
二つに共通しているのは、通行が自由ということだ。
自由と言っても、キテージは燃える橋か、海から氷山たちを攻略せねばならず、ニライカナイは海上を通るのに許可は要らない、ただ集落に訪れるには水中で呼吸が出来なければならない。
つまり、余程の大馬鹿者か実力者以外が立ち入ることがないのだ。ついでに、ニライカナイに明確な支配領域は記されてない。あくまで、海族たちの集落とその頂点たる乙姫の住む土地の総称なのだ。
「私たちってもしかして世間知らず?」
思わず漏れた言葉にどちらも答えを返せなかった。
*****
「今度はしっかり船に乗って入国して来いよぉっ!」
「「ありがとうございました!」」
意外と親切にしてくれた役人の人に頭を下げて、私たちは視線を移す。
目の前に広がるのは、木造の建物が数多く段々に積まれた独特の建築物たちだ。思わず、感嘆の言葉を口にする。
「凄いわ、下は海面なのに上へ上へと伸びるだなんて」
「クララ、見て見て。この木の細工を」
私が周囲を眺めていると、背中の樽に収まったルルレアが私の背中にしがみついて指を指す。
「へー、紙で明かりを透かすだなんて。面白いわね」
一つ一つ眺めていると、その屋台のおじさんが声をかけてきた。
「お嬢さん、外国から来たのかい? それなら、これはどうだ」
私が頷くと、おじさんは一本の飾り付けられた棒を差し出した。
「これは何?」
首を傾げると、おじさんは良い笑顔で説明してくれた。
「これは簪と言って、頭に付ける装飾でな。それはそれは、お嬢さんのような別嬪さんにお似合いの品だよ」
へー、と生返事が出かけて喉を押し殺し、もう少し品について話を訊く。
「そう、それはどんなふうに髪に付けるの?」
「実はな、お隣の所でお試しが出来るんだよ。更に、ここで買ってくれれば、服も原価で売ってくれる。どうだい?」
ああ、隣と提携してるのか。でも、面白そうではあるかな。
「ルルレアはどうする?」
振り返ると、ルルレアは震えていた。病気?
「私っ、クララちゃんとお揃ろが良い、お揃ろ、お揃ろっ!」
目を輝かせて、私に訴えて来た。
「なら、決まりかい? お嬢さんたち、是非この街を楽しんでくれ」
まあ、良いんだけどさ。凄くこのおじさんに乗せられた気がする。でも、お金は結構あるから、少しぐらい贅沢しても良いよね?
「えっと、じゃあ簪を二つ下さい」
お金を入れた袋は少し軽くなったが、私たちの心はそれよりも舞い上がった。
*****
「そして、こうなるか」
今の私の腕にはリンゴを溶けた砂糖で包んだリンゴ飴、かりんとうという言葉の意味が分からないもの、ふわふわの綿飴などだ。正直、こんなに食えるのか不安だが、一日くらいは大丈夫だろう。赤い袖を汚さないように気を付けて持つ。
「クララちゃん、今度は射的だって、やろう!」
真紅の髪を一つのダンゴ状に束ね、髪と対比の青い衣に身を包んだルルレアが興奮冷めやらぬ雰囲気で私を急かす。
因みに、彼女の周りに無数の泡が浮かび、彼女自身は宙を浮いている。勿論、私の魔法で浮力を『力』で傘増しさせるという荒技だ。まあ、この程度ならあと数時間は持つが。魔法というのは指向性を一度決めるとそのまま進むので、指向性を消して、彼女の泡はそこに存在させ、彼女を少し反発させた。
それを彼女が乗りこなして、無理矢理動いている。
これを荒技と言わずして、何が荒技だろうかと。
今も、完璧なスナイパーの体勢を作って、射的というより狙撃をしている。
もしかしたら、これが射的と呼ばれるものの必勝法かも知れない。
「ふっ、これで貴女のハートもイチコロだぜ」
硝煙の煙が全く出ない銃の先端に息を吹きかけ、こちらにキメ顔を見せて来る。
「そうだね、その衣装と髪の対比があって可愛いと思うよ」
「へっ?! そっちなの? ぅぅ、クララちゃんが酷い」
ふふっ、今までの仕返しだ。いつまでもルルレアの思惑通りの答えを出すと思わないことね。
顔を染めて、少し口元を緩めている彼女に勝利を確信した。何の勝負かは知らないが。
「そろそろ、宿を探そうか」
「うん、暗くなって来たしね」
着いた頃には日が天高く昇っていた光も、今は既に地平の彼方に傾いていた。服は小包に包装して、元の服で宿探しの為に辺りを見回す。ルルレアも既に樽に収まっている。
「…………もしかして、最初に宿を探すのが正解だった?」
遊ぶことに夢中になり過ぎて、辺りは閑散としていた。
「少し歩き回ろう、クララちゃんも私も良い宿を選んだ方が何かと便利だし、良い宿は安心感があるからね」
竜宮城の経営主の娘が言う言葉を信じて、私たちは宵闇の広がる街を駆ける。
原価ってあり得なくない? どうなのかよく分からん。
????「あぁ、今感じます。至高の波動が! そして、あの泥棒猫の気配もっ! 嗚呼っ、そばに居れないのが恨めしい、恨めしい」 侵食率10%
↑誰でしょうねぇ〜




