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第25話:深夜の線路点検ミッション!

秘密の資金調達と、完璧すぎる言い訳デプロイ深夜零時。王立魔法学院の全寮が深い静寂に包まれる頃、私は新制服のグレーのベストを締め直し、地下要塞の隠しハッチの前に立っていた。目的は明白。学外巡検(修学旅行)でルミナリアと同じ特等魔導寝台列車に乗り込むための不足金、一千万ヴァルカの確保だ。 「許容作業時間は四分二十分……時間管理魔法のクロックアップ、出力全開(フル・デプロイ)」私は壁のスコップを一瞥することなく(あんな原始的なツールはとっくにパージ済みだ)、指先に極細の魔導ピンセットと超小型の物理衝撃波発生器をセットした。夜の冷気を裂き、音もなく寮の結界の隙間をすり抜ける。地上を走る魔導列車の操車場までは最短距離を直走して一分十五秒。線路の分岐点、点検用ピットの奥深くに問題のブツはあった。(あれですね。特等列車の先行点検ルートに混入した、高純度古代魔導結晶……!)結晶は不気味な脈動を放ちながら、線路の魔導回路を狂わせようとしていた。放置すれば明日の試運転で大事故、特等列車は運休になるところだ。パチン、と指先を鳴らす。超精密な物理衝撃波をピンポイントで照射し、結晶を固定していた古代の魔導トラップをコンマ三秒で解除。すかさず魔導ピンセットで核を挟み込み、腰のポーチから取り出した鉛張りの遮断ケースへと一瞬でパッキングした。「回収完了。所要時間は二分十秒……完璧なオンタイムです」回収した結晶を裏社会の専用ポストへ空間転送し、端末に「報酬一千五百万ヴァルカ送金完了」の文字が光る。これで共同生活基金は三千五百万ヴァルカに達し、エル・ヴァルカ行きの特等席アップグレード権利も即時決済完了だ。 完璧な達成感に浸りながら地下要塞へ戻ったその瞬間、背後からスッと気配が立ち上がった。「……こんな夜更けに、どこへ行っていたんだい、ホナちゃん?」(げっ……!?)ソファの上、月の光を浴びて佇むルミナリアの姿があった。ルームウェアですら、絵画のように完成された美しさを放っている。「ル、ルミナリア様……! なぜこんな時間に起きていらっしゃるのですか!?」「君が部屋を抜け出す気配がしたからね。……少し、夜風の匂いと機械油の香りがするが」涼やかな瞳が、私の腰ポーチへと注がれる。冷や汗が背筋を伝う。ここで裏の運び屋だとバレれば、ルミナリアとの平穏なモブ生活も、特等席サプライズも全てが水泡に帰す。【緊急事態:コンマ一秒で言い訳をデプロイせよ】「ち、違いますルミナリア様! これは明日の学外巡検に備えて、寝台列車で召し上がるための『ソルティ・カザフ(夜間急速冷却仕立て)』を、外気の一番冷たい場所で馴染ませていただけです!」「私のために……?」「はい! 完璧な温度管理(三点八度)でお届けするためのフィールドテストです!」ルミナリアは目を丸くしたあと、ふっと氷が解けるように優しく微笑んだ。「そうか……私のためにそこまで。ありがとう、ホナちゃん。君は本当に優しいな」神のような包容力とピュアな納得。罪悪感で胸がチクチクするが、これでミッションは完全秘匿された。「ではルミナリア様、明日の出発に備えて私はこれで——」完璧な計画の成功に浮き立ち、くるりとターンを決めて自室へ向かおうとした——その刹那。ばっしゃーん!!「ふぎゃあぁっ!?」何もない平坦な床の上、自分で置いた「ソルティ・カザフ冷却用トレイの角」に見事に足の小指を強打し、そのまま前のめりに大激突。腰のポーチから「特等寝台列車の乗車証明書」「ピンセット」、そして大事な「塩チョコの予備」が派手に床一面へと飛び散った。「うぅぅ……! こ、小指の神経伝達速度が痛覚の許容限界をオーバーしましたぁぁ……!」涙目で床を転がり回りながら、必死に特等席のチケットを隠そうと四つんばいでバタバタと暴れる私。その様子を静かに見守っていたルミナリアは、くすりと小さく吹き出し、どこまでも愛おしそうに呟いた。「……どれだけ完璧に準備しても、やっぱりホナちゃんだな」無事に特等席の確保に成功したモブ令嬢。

明日から始まる秋の修学旅行、果たしてルミナリアに正体を隠し通したまま優雅なリゾートを満喫できるのか。波乱の旅路が幕を開けようとしていた。

(第26話に続く)

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