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第23話:伝統よりコスパ重視!? 新制服デプロイと、隠しきれないプロ仕様ガジェット

新学期が本格化する中、王立魔法学院に激震が走っていた。

学院講堂に集められた全校生徒の前で、生徒会と学院上層部が誇らしげに発表したのだ。


「これまでの重厚で無駄に金糸を使った伝統ローブは廃止とする! 本日より、YARENDEZグループが提唱する最新の『高機能・低コスト魔導アパレル(要するにコスパ重視型新制服)』を一斉配備する!」


周囲の上位貴族令嬢たちからは「そんな安っぽい既製品など着られるか!」「伝統を何だと思っているの!」と非難轟々、大ブーイングの嵐が巻き起こっていた。


だが、私——Fランクモブ令嬢のホナ——の内心は、まったく真逆の歓喜に震えていた。


(……素晴らしい……! 圧倒的な機能美……!)


支給された新制服に袖を通し、鏡の前に立つ。

無駄なフリルや引きずるような長い裾は完全にパージ。シックで落ち着いたグレーを基調とし、肩や腕の可動域を一切妨げないノースリーブ仕様のベストドレス。そして何より素晴らしいのは——。


(腰回りのマルチツールホルスターと、大容量の魔導革ポーチ……! これ、運び屋のプロ仕様にカスタマイズし放題じゃないですか!)


一般生徒にとっては「安っぽくて無骨な作業着」に見えるかもしれないが、裏社会最強の運び屋である私にとっては、完璧なミリタリー・タクティカルギアにしか見えない。

私は人目を盗み、コンマ3秒の神速の手技で、腰のポーチに自作の「超精密ピンセット」「物理衝撃波発生器」「暗号解除キー」「予備のソルティ・カザフ(塩チョコ)」をスマートにパッキングした。


完璧だ。これでいつでも裏のミッションへ即時デプロイできる。


「おい、見ろよあのFランクの地味子……あんな作業着みたいな服、一人だけ妙に着こなして嬉しそうにしてるぞ」

「ふん、貧乏モブにはお似合いのコスパ制服ね」


周囲の冷笑など耳に入らない。むしろ「地味で目立たないモブ」のステルス性能がさらに向上したとさえ言える。


「……ホナ」


その時、凛とした涼やかな声が背後から響いた。

振り返ると、同じ新制服に身を包んだルミナリアが立っていた。

——息を呑むほどの美しさだった。

同じ「コスパ重視の安価な制服」のはずなのに、ルミナリアが着用した瞬間、まるで最高級オートクチュールのように輝いている。圧倒的なモデル体型、完璧なプロポーション、涼しげな美貌が、安物の布地を神話の装束へと昇華させていた。


(ぐっ……! なぜ同じ規格の服を着て、こうも出力結果(見た目)に次元の壁があるのか……!)


「ルミナリア様……とてもお似合いです……」


「ありがとう、ホナちゃん。君の新制服姿も……とても合理的で、機能的で、可愛いよ」


ルミナリアはどこまでも優しく微笑みながら、私の腰回りをじっと見つめた。


「それにしてもホナちゃん。君のその腰ポーチ……やけに膨らんでいて、妙にプロの特殊部隊のようなオーラを放っている気がするのだが、中には何が入っているんだい?」


(しまっ——!? ルミナリアの観察眼を甘く見ていた!?)


背筋に冷や汗がツツーと流れる。

中に入っているのは裏社会の最新鋭ガジェット。もし中身を検問されたら、私の「Fランクモブ」という偽装ステータスと、ルミナリアとの「地下要塞共同生活基金(現在残高:2,000万ヴァルカ)」の計画が全崩壊する!


【緊急事態発生:コンマ1秒で言い訳をデプロイせよ】


「ち、違いますルミナリア様! これは『新学期の筆記用具(予備含む24本)と、授業中の低血糖を防ぐためのソルティ・カザフ超高密度圧縮パック』です! 決して怪しい秘密道具ではありません!」


「そうか。相変わらず準備が良いんだね。ホナちゃんのそういう几帳面なところは好きだよ」


ルミナリアは私の苦しすぎる言い訳を、これ以上ないほどピュアな笑顔で納得してくれた。天使か。この人のためなら100億ヴァルカなど軽いものだ。


「よし……新制服の機能テストも兼ねて、購買の『新制服導入記念・半額ソルティ・カザフ』を確保しに行こう!」


私は新制服の軽快な足さばきに感動しながら、華麗にステップを踏み出し——。


ずしゃぁぁぁん!!


「ふぎゃっ!?」


裾丈が変わったことに脳内演算が追いついておらず、自分のブーツの金具を反対側の足に引っ掛けて、廊下のド真ん中で派手にスライディング転倒。


腰のポーチから「精密ピンセット」と「塩チョコ」が床一面にバラバラバラッ!と盛大に散らばった。


「うぅ……あ、足の重心計算が……っ! 新制服の摩擦係数を甘く見ていましたぁ……!」


涙目で四つんばいになり、慌てて床の塩チョコを拾い集める私。


その姿を腕組みしながら見守っていたルミナリアは、ふっと美しく口元を緩め、静かに呟いた。


「……どれだけ制服が変わっても、ホナちゃんはいつものホナちゃんだな」


機能性抜群の新制服を手に入れたモブ令嬢。

裏社会最強の運び屋としての戦闘力(とドジっ子指数)をさらに高めながら、今日も元気に床を這い回るのだった。

(第24話に続く)

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