第17話:真夏の夜の天体観測と、過熱した天体望遠鏡
昼間の猛暑が落ち着いた夏の夜。地下要塞の最上部に位置する隠し天体観測タワーにて。
「わぁ……星がすごく綺麗に見えるよ、ホナちゃん!」
「はい、ルミナリア様。大気揺らぎ補正レンズと極冷エアレンズを組み合わせ、光害をゼロにカットしております」
心地よい夜風が吹き抜ける観測タワーで、ルミナリアとホナは冷えたソルティ・カザフを手に夜空を見上げていた。
しかし、学園のテラス席では、YARENDEZ製の最新作『神聖・集光倍率1000倍望遠鏡』を持ち出した貴族たちが大騒ぎしていた。
その望遠鏡は、集光魔法レンズの熱放散設計が壊滅的で、星の光を集めすぎて熱線ビームと化し、自分たちのテラスの屋根を焼き払ってしまうポンコツ仕様だったのだ。
「あ、あそこに冷え切った観測タワーがあるぞ! あそこから熱線を逃がさせろ!」
屋根を燃やした貴族たちが、焦げた望遠鏡を担いでタワーへと乱入しようと押し寄せる。
「先輩、少々照明の角度調整をしてまいります」
ホナはタワーの集光レンズの角度をミリ単位で微調整。
貴族たちが熱線望遠鏡をこちらに向けた瞬間、ホナのデフレクター(反射板)が完璧な角度で熱線を跳ね返した。
シュバァァァン!
跳ね返った熱光線は、夜空に打ち上げられた魔法花火の火薬に引火。
ドカン! パラパラパラ……と、夜空に見事な大輪の花火が打ち上がった。
「わぁ……! 花火まで用意してくれてたの? ホナちゃん、すごい!」
「……ええ、完璧な時間計算通りの演出です」
熱線の反動で吹き飛んだ貴族たちの悲鳴は花火の爆音にかき消され、夜空に美しい光だけが残された。
(第18話に続く)




