第15話:真夏の読書会と、静音改修ノイズキャンセリング
夏休みの魔法学園地上階では、新たな惨劇が巻き起こっていた。
「な、なんだこの大音量は!? 耳が破裂しますわぁっ!」
「ひ、ひぃぃっ! YARENDEZ社から買い叩いたVALKANOR製『極冷・神聖広報スピーカー』が、冷却ファンの爆音とノイズで暴走したぞ!」
学園の回廊では、派閥のアピールと冷風を同時に撒き散らすという欲張りな高級魔道具を導入した貴族たちが、鼓膜を押さえてのたうち回っていた。
VALKANOR製の音響冷風機は、冷気を生み出す魔力振動とスピーカーの音音波が干渉し合い、凄まじい低音ノイズと爆音をまき散らすポンコツ仕様だったのである。
——地上階の騒音などどこ吹く風。地下要塞のリビング。
「……うん、この本すごく面白いよ。静かで、とっても集中できるね」
「先輩が喜んでくださり何よりです。冷えた『ソルティ・カザフ(清涼飲料水)』のおかわりもどうぞ」
極冷空間(室温22度固定)で、ホナとルミナリアはソファーに並んでゆったりと読書を楽しんでいた。
ホナは読書会の開催に先立ち、壁面に自作の『指向性位相干渉プレート(ノイズキャンセラー)』をデプロイ済み。外の騒音を完全相殺し、室内は無音の図書館状態に保たれていた。
しかし、地上階で爆音スピーカーを暴走させたイキり貴族たちが、地下からの「異次元の静寂」を目ざとく察知して押し寄せてきた。
『おいFランク! 我が派閥のスピーカーの爆音を消すほどの静音魔法陣を独占するな! その機材を差し出せ!』
重厚な隔壁を揺らすノイズ。ホナの瞳の奥で冷徹なスイッチが入る。
「ルミナリア、少々音響調整を行ってまいります」
ホナは静かに立ち上がると、卓上の小型音波調整リモコンを手に取り隔壁を開けた。
扉の向こうで爆音スピーカーを担いだ貴族たちが不敵に笑う。
「ハッ! このVALKANOR製大音量スピーカーの音波でひれ伏——」
ホナがリモコンのボタンをカチリとクリック。
指向性位相干渉波がスピーカーに直撃し、音波の位相が180度反転。爆音のエネルギーがそのまま貴族たち自身の耳元へと全反射した。
「ぶほぁっ!? じ、自分のスピーカーの音圧で吹っ飛ぶぅぅっ!?」
衝撃の音波ノックバックにより、貴族たちは超高速で地上へと物理デプロイされた。
「ノイズの物理排出、完了です」
扉を閉めた地下要塞には、再び至高の静寂と、冷えたソルティ・カザフの心地よい味わいが戻ってくるのだった。
(第16話に続く)




