42.アイドル、愛の誓い
歌い終わりの余韻が、玉座の間に吸い込まれていく。
魔王はゆっくりと立ち上がり、奏の元へと歩み寄った。いつもの威厳ある魔王の姿ではない。そこには、ただ一人の『恋する男』がいた。
「奏……お前は、俺の孤独を埋めてくれる唯一の光だ。あの日の玉座で刺されたお前の姿を見て、俺は初めて『死』よりも怖いものを知った」
魔王は奏を抱き寄せた。その腕は強く、けれど折れそうなほど優しく震えている。
「奏、私と……契りを結ばないか? 一生をかけて、貴様を守り、貴様を愛し抜く。俺の魂と、魔界のすべてを懸けて誓おう」
奏の心臓が早鐘を打つ。
ずっと見守ってくれていた、理不尽なまでに一途で、誰よりも純粋なこの男に、奏はいつの間にか抗えないほどの恋心を抱いていたことに気づいた。
「……嫌じゃない。こんなに愛されたら、もう他の誰かなんて見られないよ」
奏が微笑むと、魔王の瞳が妖しく光った。
「――っ、貴様、そんな小悪魔なことを言って……。ゆっくり休めるわけないだろ」
魔王は低く、掠れた甘い声でそう囁くと、奏の唇を優しく奪った。
奏は去ろうとする魔王の腕を、シャツの裾を握りしめて引き止める。
「ダメだよ。こんなキスして、責任も取らずにゆっくり休めるわけないじゃん。……最後まで、ちゃんと責任取ってよ」
その瞬間、魔王の理性が完全に吹き飛んだ。
「……ふっ、言ったな。もう二度と逃がさんぞ」
魔王は奏を軽々と抱き上げると、瞬間移動の術式を発動させた。
辿り着いた先は、城の最深部にある、魔王のプライベートな寝室。月光が差し込む大窓の下、柔らかい毛皮のベッドに奏はそっと置かれた。
窓の外では、かつて人間たちが恐れた魔王城が、今や奏と魔王の愛を祝福するかのように静まり返っている。
「愛している、奏。貴様のすべてを、俺の中に刻み込みたい」
魔王の角が、奏の髪を優しくなぞる。
二人の身体が重なり合い、外の冷たい空気とは対照的に、ベッドの上は熱い吐息と深い愛の言葉で満たされていく。それは、過酷な運命を乗り越えて繋がれた、二人だけの永遠の誓い。
ルミナス王国のクズ勇者たちも、国家の腐敗も、もう関係ない。
――ここは二人の楽園。
夜が明け、城の鐘が響くまで、奏と魔王は何度も何度も身体を重ね、互いの存在を確かめ合い、二人の長い、けれどあまりにも甘い夜を深く、深く愛し尽くすのだった。




