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24.アイドル、主になる

『我が名はブラン。数百年を生きた我が命、今、貴殿の慈愛の涙によって繋ぎ止められた。あの卑劣なる人間の勇者どもとは違う、真に気高き魂の輝き……我が全霊を以て、貴殿を「我があるじ」と認めよう』

「えっ、主!? いや、僕はただの酒場の給仕だし、アイドルだから、そんな偉いものじゃ……」


 奏が慌てて両手をブンブンと振ると、古竜ブランは優しく目を細め、ククッと喉を鳴らして笑った。


『謙遜は不要だ。だが、これほどの輝きを持つ我が主を、あの愚者どもの生贄のままにしておくわけにはいかん。……我が命の欠片、守護の証として、これを貴殿に捧ぐ』


 古竜が大きく胸を張ると、その胸元から、目も眩むような純白の光を放つ、親指ほどの美しい宝玉が浮かび上がってきた。

 宝玉は空中でカタカタと形を変え、瞬く間に、最高級のプラチナの鎖で編まれた、繊細で美しい『宝玉のネックレス』へと姿を変えた。

 ネックレスはまるで意思を持っているかのようにふわふわと空中を漂い、奏の細い首元へと、そっと吸い込まれるように収まった。

 カチャリ、と静かな音がして、メイド服の襟元に収まったその瞬間、奏の全身を、温かく強大な絶対的な守護の魔力が包み込むのが分かった。


『それは、我が魂の一部を結晶化したもの。たとえ世界の理が崩れようとも、我が主の命を一度だけ、あらゆる死から完全に身代わりとなって救い出す、絶対蘇生の呪印。そして、我が魔力の加護。これで、何者も貴殿を傷つけることはできん』


 ネックレスの宝玉は、奏の肌に触れると、まるで最初からそこにあったかのように自然に、けれど気高く鈍い輝きを放ち始めた。


「ありがとう、ブラン。……僕、このネックレス、ずっと大切にするね」


 奏が胸の宝玉を愛おしそうに握りしめ、満面のアイドルスマイルを浮かべると、古竜ブランは満足そうに大きく翼を広げた。


『うむ。我はこれより、この地を離れ、静寂のなかで主の歩みを見守ろう。……主よ、もし真なる危難が訪れたときは、いつでも我が名を呼ぶが良い。地の果て、世界の終わりからでも、我が翼は必ずや貴殿の元へと駆けつけん』


 轟音とともに、古竜ブランは洞窟の天井の割れ目から、広大な青空へと向かって力強く飛び立っていった。その去り行く姿は、まるで新しいスターの誕生を祝福する光そのもののようだった。

 一人残された洞窟のなかで、奏は首元のネックレスをそっと撫でる。

 クズ勇者たちに裏切られ、死の淵に置き去りにされたはずのステージ。しかし、プロのアイドルとしての誠実さと、無垢なる涙が引き起こした奇跡は、彼に伝説の古竜の絶対的な絆という、最強の守護をもたらした。


「さてと……。僕を置いて逃げちゃったレオたちは、今頃どうしてるかな?」


 奏は、メイド服の裾についたわずかな埃をパパッと払うと、かつてないほどに不敵で、最高に輝かしい『営業スマイル』をその美貌に浮かべ、裏切り者たちが待つ外の世界へと、ゆっくりと歩みを進めるのだった。

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