5.星作り開始
さあ、いよいよ創造開始だ。
「俺TUEEE」を実現させるなら、目指すは王道RPGの世界。
誰もが迷わない一本道の本筋があって、
その脇にサブイベントが散らばっているような、あの旅路。
一本道か……よし。
僕はノートに、大きなひらがなの「の」を描き、
それをそのまま大陸にした。
「の」の書き始め――そこは巨大な休火山の噴火口。
そこから大陸の中心地点へ向かう場所に、
確定したノートを保管するための塔を建てる。
「……よし。名前は『理力の塔』にしよう」
中二病全開だが、いいんだ。
32歳が神様になったんだぞ。
このくらいのロマンは許される。
塔の最深部を、確定ページの保管場所に決定。
ルートはこうだ。
火口から南南西へ下った平地に「始まりの村」。
もちろん近くに川も通す。
さらに南南西へ進むと「の」の急カーブ。
海に近いここには大きな港町を配置。
カーブに沿って海沿いを西、西北へとぐるり。
その途中にも、町ができそうな平地と川を二箇所ほど置く。
北側、火口の裏手は険しい断崖絶壁。
そして北東、東、東南へと進み、
「の」の終着点には――
ヒントとなる壁画が隠された洞窟を用意した。
「完璧だ。全体の旅路が見えてきたぞ」
始まりの村に降り立った日本人は、まず「理力の塔」を目指すだろう。
だが、塔の入り口は地上にはない。
入り口は――塔のてっぺんだけ。
しかも塔の周辺は、一切の魔法が使えないエリアにする。
つまり、塔を攻略するための長い旅がここから始まるわけだ。
村で力を蓄え、港町から海沿いを進み、
断崖絶壁を越えて最東端の洞窟へ。
そこでようやく「塔の頂上へ行くには気球が必要だ」と知る。
気球を完成させるには、
崖下の海蝕洞から噴き出す天然ガスを回収しなければならない。
苦労して気球で塔の頂上に辿り着き、
中を攻略した暁には――
僕が直々に姿を現して、願いを一つ叶えてあげよう。
「うん、これぞRPG! 楽しくなってきたな」
勢いに乗った僕は、他の大陸も作ることにした。
「……『工』の大陸と、『星』の大陸も作っちゃえ」
自分の名前をもじって、三つの大陸で「工 の 星」……。
冷静になると自分でも引くが、もう決めた。
メインとなる「の」の大陸には、森や草原、滝などの地形を描き込み、
徐々に大陸らしい豊かな姿にしていく。
一方、「工」の大陸は鉱石が豊富だが過酷な環境に。
「星」の大陸は、当面は未開の地として保留。
「あとは、動物と虫の生息地を書いて……と」
最後に魔物の配置だ。
一本道に沿って奥へ行くほど強くなる――これはRPGの定石。
そして「理力の塔」の中だけは、
文字通り桁違いの化け物を配置する。
「よし、こんな感じかな!」
僕はノートを閉じ、眼下の星を見下ろした。
まだ荒削りだが、確かに“世界”が形になりつつある。




